¥Today ニホン銀行紀行

山形第一信用組合——上杉の城下と果樹の郷で、地縁人縁に貸す信組

預貸率58.5%、店舗7。山形県高畠町に本店を置く山形第一信用組合。上杉藩の城下町・米沢を含む置賜地区を地盤に、地縁・人縁を活用し事業性評価で貸す小さな地域信組の数字を読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 山形県

山形県東置賜郡高畠町に本店を置く山形第一信用組合は、預金526億円、貸出金308億円、店舗はわずかに7。山形県南部の置賜(おきたま)地区を地盤とする、小さな地域信用組合です。営業地域は、本店のある高畠町を中心に、川西町・南陽市・米沢市・上山市。県南の盆地に広がる、限られた範囲を商圏としています。

この信組の地盤・置賜地区は、歴史と実りの土地です。中心都市の米沢は、上杉氏の城下町として栄えたまち。名君・上杉鷹山の藩政改革で知られ、米沢織や米沢牛といった特産も生まれました。本店のある高畠町は、ワイン用ぶどう(シャルドネ・デラウェア)の出荷量が日本一という、知る人ぞ知る果樹の郷。盆地特有の寒暖差が、ぶどうをはじめとする果樹を育ててきました。上杉の歴史と、果樹を中心とする農業——この土地柄が、山形第一信用組合の数字を読む鍵になります。

この信用組合の数字で目を引くのは、店舗7という小ささと、預貸率58.5%という、信組としては比較的しっかりした水準の組み合わせです。小さな組織でありながら、集めた預金の6割近くを地元に貸している。この姿を、置賜という土地から読みます。

まず、数字を並べる

山形第一信用組合の預金は526億円、貸出金は308億円、預貸率58.5%。自己資本比率は12.95%、不良債権比率は4.16%。中小企業等向けの貸出先は2,058件です。

山形第一信用組合(令和7年3月末)
預金526億円
貸出金308億円
預貸率58.5%
自己資本比率12.95%
不良債権比率4.16%
中小企業等向け貸出先2,058件
店舗7店

店舗7の小さな信組が、預金の6割近くを地元に貸す。その姿を置賜から読む。

58.5%を、地縁・人縁から読む

預貸率58.5%という、信用組合としては比較的しっかりした水準は、山形第一信用組合が置賜という狭い商圏のなかで、地元の事業者にしっかり貸してきたことの表れと読めます。

この信組の貸し方には、特徴があります。地元出身者を優先して採用し、地縁・人縁を最大限に活用する。顔の見える営業で、地域の事業者の事情をよく理解し、ニーズに応える。さらに、担保や保証会社に依存しすぎず、事業の中身を見て貸す「事業性評価融資」にも取り組んでいるとされます。大きな組織が効率を重視して引きにくい、小さな事業者の現場に、人の縁で踏み込む——これが、店舗7という小ささでありながら、預貸率58.5%を保つ背景にあると読めます。置賜地区の農業者や、米沢・南陽の中小事業者、商店といった、地域の細かな資金需要を、地縁でつかんでいるのです。

不良債権比率4.16%は、やや高めの水準です。果樹を中心とする農業や、人口減少が進む地方の中小事業者に、人の縁で踏み込んで貸せば、そのぶん債権の質には負荷がかかりやすい。これは、地縁・人縁を活用して小さな借り手に寄り添う信組の宿命ともいえます。自己資本比率12.95%を保ちながら、こうしたリスクを引き受けているのが、この信組の姿です。もちろん、これらの比率には個別の事情も絡むため断定はできませんが、上杉の城下と果樹の郷という土地に、人の縁で根ざしてきた信組であることを抜きに、この数字は読めません。

山形第一信用組合が示すのは、地縁・人縁で貸す小さな信組の姿です。店舗7という小ささでも、地元出身者を採用し、顔の見える営業で事業の中身を見て貸す。預貸率58.5%は、置賜という狭い土地に人の縁で深く根ざしてきたことの表れと読めます。

同じ山形の、第二地銀と並べてみる

同じ山形県には、第二地方銀行のきらやか銀行があります。きらやか銀行は、預金1兆円規模で県内に広く店舗網を持つ銀行でした。預金526億円・店舗7の山形第一信用組合とは、規模がまるで違います。だが、規模の大小は役割の優劣ではありません。広い店舗網で県全体を覆う第二地銀と、狭い商圏に人の縁で深く根ざす信組とでは、向き合う相手も貸し方も違う。大きな銀行が効率の面で引きにくい、置賜の小さな事業者の現場に、山形第一信用組合は地縁で踏み込んでいる。山形の金融の重層性は、きらやか銀行の記事とあわせて読むと、より立体的に見えてきます。

なぜ、こうなったのか——制度のかたち

山形第一信用組合のような信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織です。信用組合は、組合員による相互扶助を目的とし、その営業地域(地区)も限られています。山形第一信用組合の地区は、高畠町・川西町・南陽市・米沢市・上山市という、置賜の限られた範囲。狭い地区のなかで、組合員である地元の中小事業者や住民の相互扶助を担う——この制度のかたちが、地縁・人縁を活用し、小さな借り手に寄り添うという、この信組のあり方を支えています。地域金融機関を読むとき、その組織が信用金庫なのか信用組合なのか、どれだけの地区を地盤とするのかを知ることは、数字の意味を正しく受け取るために欠かせません。

借り手にとっての意味

地元に深く根ざす信用組合は、地域の事業者にとって、もっとも身近な相談相手のひとつです。とりわけ、大きな金融機関が引きにくい小さな事業者や農業者にとって、地縁・人縁で事情を理解してくれる信組の存在は心強いものです。やや高めの不良債権比率は、そうした借り手に寄り添うことの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、人の縁を映す

店舗7という小ささと、預貸率58.5%という水準は、上杉の城下町・米沢と、ワイン用ぶどう日本一の高畠を含む置賜の地に、地縁・人縁で深く根ざしてきた信組の姿を映しています。広い店舗網で県全体を覆う銀行もあれば、狭い商圏に人の縁で踏み込む信組もある。数字は、その金融機関が誰に、どんな距離で向き合ってきたかを語ります。山形第一信用組合の数字は、置賜の土地に人の縁で生きる信組の、いまの記録です。

本紀行には、同じ山形県の新庄信用金庫も登場しています。新庄信金は、県北部・最上の雪国に根ざす信金でした。県南部・置賜の地に人の縁で根ざすこの山形第一信用組合(預貸率58.5%・店舗7)と、県北部の最上に根ざす信金・新庄信用金庫(預貸率56.2%・自己資本14.7%)とを並べると、同じ山形県でも、県南の置賜と県北の最上とで、それぞれの地を協同組織金融機関が支えていることが見えてきます。雪国の信金の姿は、新庄信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。山形県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、山形県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
山形第一信用組合の営業地域(高畠町・川西町・南陽市・米沢市・上山市)、地元出身者の優先採用・地縁人縁の活用・事業性評価融資への取組みに関する記述=山形第一信用組合および各種公開情報にもとづく。
米沢の上杉氏城下町としての歴史、高畠町のワイン用ぶどう(シャルドネ・デラウェア)の出荷量が日本一であること、置賜地区の果樹農業に関する記述=山形県・各種公開情報。
きらやか銀行の規模に関する記述=各種公開情報。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であり、組合員資格と地区が定められること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ