鶴岡信用金庫——庄内の城下町で、信金はなぜ自己資本を厚く積むのか
預貸率39.1%、自己資本比率22.12%、店舗13。鶴岡市に本店を置く鶴岡信用金庫。庄内平野の米どころ・城下町に根ざし、厚い自己資本と低い預貸率で守る信用金庫。その数字と歴史を読む。
山形県の日本海側、庄内平野に開けた鶴岡市に本店を置く鶴岡信用金庫は、地元で「つるしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2,057億円、店舗13。鶴岡市を中心に、庄内地方の南部を地盤とする、地域に密着した信金である。
本拠の鶴岡は、二つの顔を持つ町だ。一つは、庄内藩・酒井家の城下町としての顔。江戸時代から続く町並みの風情を残し、文人を多く輩出した文化の薫る土地でもある。もう一つは、米どころとしての顔。鶴岡を含む庄内平野は、最上川がもたらす肥沃な土壌と豊かな水に恵まれ、日本有数の穀倉地帯として知られる。「庄内米」のブランドで全国に知られる良質な米が、この平野で実る。城下町の文化と、米どころの農業——この二つが、鶴岡の経済の底にある。
この信金の数字には、際立った特徴がある。自己資本比率22.12%という厚さと、預貸率39.1%という低さだ。預金の4割ほどしか貸さず、資本を厚く積む。なぜ、庄内の城下町の信金はこの選択をするのか。同じ山形県北部の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。鶴岡信用金庫の預金は2,057億円、貸出金は805億円。預貸率は39.1%で、預金の4割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は22.12%と厚く、不良債権比率は6.01%とやや高めだ。店舗数は13、中小企業等への貸出残高は649億円。
目を引くのは、自己資本比率22.12%という厚さだ。信用金庫の自己資本比率は1割前後が標準的ななかで、2割を超えるこの数字は手厚い。同じ山形県の最上地方を地盤とする新庄信用金庫(預貸率56.2%・自己資本比率14.7%)と比べると、鶴岡信用金庫は預貸率がより低く、自己資本はより厚い。米どころと城下町という、安定はしているが大きな成長は見込みにくい土地で、貸出を抑え、資本を厚く積んで備える——その姿勢が数字に表れていると読める。不良債権比率6.01%というやや高めの数字も、厚い資本がその備えとして効いてくる。
| 鶴岡信用金庫 | 新庄信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 鶴岡市(庄内) | 新庄市(最上) |
| 預金 | 2,057億円 | 769億円 |
| 預貸率 | 39.1% | 56.2% |
| 自己資本比率 | 22.12% | 14.7% |
| 不良債権比率 | 6.01% | 6.63% |
同じ山形県の、庄内と最上を地盤とする二つの信金。鶴岡信用金庫は預金規模で上回り、預貸率はより低く、自己資本はより厚い。米どころの城下町で、守りを固める姿が数字に出ている。
城下町と米どころで——鶴岡信用金庫の歩み
鶴岡信用金庫は、城下町・鶴岡の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。城下町には、古くからの商家や、米の集散にかかわる事業者、そして地域の暮らしを支える商店があった。庄内平野の農業と、それを支える商業——こうした地域の経済とともに、鶴岡信用金庫は歩んできた。
庄内平野の農業は、安定している。日本有数の米どころとして、毎年良質な米が実る。だが、農業を中心とする経済は、製造業や都市のサービス業のような大きな成長や、旺盛な設備投資を生むわけではない。米作りに必要な資金は限られ、地域の人口も減少が続く。豊かで安定しているが、大きく伸びる種類の経済ではない——この土地柄が、鶴岡信用金庫の経営の背景にあると読める。預金は堅実に集まるが、それを貸す先は限られる。
22.12%の資本を、城下町から読む
鶴岡信用金庫の自己資本比率22.12%という厚さは、安定はしているが大きな成長は見込みにくい土地で、長く地域とともに在り続けるための備えとして読める。米どころの農業は安定しているが、貸出を大きく伸ばす機会は乏しい。人口減少も進む。そうしたなかで、厚い自己資本は、地域経済が落ち込んでも貸し続けられる体力になり、不良債権比率6.01%というやや高めの焦げ付きにも耐える守りになる。
預貸率39.1%という低さも、同じ事情の裏返しだ。預金は城下町と米どころから堅実に集まるが、それを貸す先が地域に多くない。無理に貸し込めば焦げ付きのリスクが増す。その結果、集めた預金の多くは貸出でなく有価証券の運用などに回り、預貸率は4割ほどにとどまる。派手に貸して規模を追うのでなく、厚い資本で守りを固め、城下町と米どころに静かに寄り添う——それが、鶴岡信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
庄内の経済とともに
鶴岡信用金庫の数字は、城下町と米どころという二つの顔を持つ庄内・鶴岡という土地と、その安定した経済のなかで守りを固める信金の歩みの、両方を映している。日本有数の穀倉地帯と、文化の薫る城下町に根ざし、大きな成長は追わず、厚い自己資本と低い預貸率で地域に寄り添ってきた。安定はするが伸びにくい土地での備えが、22.12%という厚い自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。鶴岡信用金庫を見れば、城下町と米どころの庄内・鶴岡の経済と、そこで守りを選んだ信金の姿が浮かぶ。同じ山形県の、最上地方の信金は、新庄信用金庫の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。山形県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、山形県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。新庄信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(鶴岡市に本店を置き、庄内地方南部を地盤とする信用金庫であること、鶴岡が庄内藩・酒井家の城下町であること、庄内平野が最上川に育まれた日本有数の米どころで「庄内米」で知られること)に関する記述=鶴岡信用金庫および各種公開情報にもとづく。
庄内・鶴岡の地理・産業(庄内平野、最上川、稲作、城下町の文化、人口減少)に関する記述=各種公開情報。