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山梨信用金庫——甲府の二つの信金は、盆地でどう貸し分けるか

預貸率39.1%、預金4,806億円、自己資本比率13.91%。甲府市に本店を置く山梨信用金庫。甲斐の盆地に根ざす「やましん」が、なぜ預金の4割しか貸さないのか。同じ甲府の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 山梨県

山梨県の甲府市に本店を置く山梨信用金庫は、地元で「やましん」と呼ばれる信用金庫だ。預金4,806億円、店舗33。甲府市を中心に、甲斐の国・山梨県の各地を地盤としている。県名を冠する、山梨県内有数の規模の信金だ。

本拠の甲府は、四方を山に囲まれた甲府盆地の中心都市だ。武田信玄の城下町を起こりとし、いまも山梨県の県都として、行政と商業の中心を担う。盆地の周辺は、ぶどう・桃などの果樹栽培が盛んで、ワインの産地としても知られる。一方、四方を山に囲まれた地形ゆえ、大きな工業地帯の集積は限られ、首都圏からはやや離れている。山梨信用金庫は、こうした山に囲まれた甲斐の盆地に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率39.1%という低さだ。4,806億円という大きな預金を集めながら、貸出はその4割に届かない。なぜ、甲斐の大型信金は、これほど貸さないのか。じつは、同じ甲府市には、すでに紀行で取り上げた甲府信用金庫がある。二つの信金を比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。山梨信用金庫の預金は4,806億円、貸出金は1,877億円。預貸率は39.1%で、預金の4割弱を貸出に回している。自己資本比率は13.91%、不良債権比率は5.29%。店舗数は33、中小企業等への貸出残高は1,490億円。

同じ甲府市に本店を置く甲府信用金庫(預貸率42.6%・自己資本比率19.05%)と比べると、両者はよく似ている。ともに預貸率は4割前後と低く、甲斐の盆地という同じ地盤の性格を映している。規模では山梨信用金庫が預金で上回るが、自己資本比率では甲府信用金庫(19.05%)が山梨信用金庫(13.91%)を上回る。同じ甲府の二つの信金は、ともに貸出を抑えめにする一方、甲府信用金庫はより厚く資本を積んでいる。これは、四方を山に囲まれた甲府盆地が、信用金庫にとって貸出先の限られた地盤であることを、二つの信金がともに映していると読める。

甲府市の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 山梨信用金庫甲府信用金庫
本店甲府市甲府市
預金4,806億円5,389億円
預貸率39.1%42.6%
自己資本比率13.91%19.05%
不良債権比率5.29%4.82%

同じ甲府市に本店を置く二つの信金。預貸率はともに4割前後と低く、甲府盆地という地盤の性格を共通して映す。甲府信用金庫はより厚い自己資本を持つ。

甲斐の盆地とともに——山梨信用金庫の歩み

山梨信用金庫は、甲斐の盆地の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。城下町以来の甲府の商店、果樹を営む農家、地域の中小事業者、そして住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。山梨信用金庫は、合併を経て、山梨県内有数の規模へと成長してきた。

甲府盆地という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先には限りのある地盤だ。県都・甲府の商業や、果樹・ワインの産業はあるが、四方を山に囲まれた地形ゆえ、大企業や大きな工業地帯の集積は限られる。首都圏からもやや離れ、人口の伸びも限られる。預金は集まるが、それを貸し切るだけの貸出先は乏しい——この構図が、39.1%という低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、運用などに向かう。

39.1%を、甲斐の盆地から読む

山梨信用金庫の預貸率39.1%という低さは、四方を山に囲まれた甲府盆地という、貸出先の限られた地盤を映していると読める。同じ甲府市の甲府信用金庫も預貸率は4割前後で、二つの信金がともに低い預貸率を示すことは、地盤の性格が個別の信金の経営方針を超えて数字に表れていることを示す。自己資本比率13.91%という水準は、信用金庫として手堅く、貸出に回りきらない預金を運用しながら、堅実に資本を積んでいることをうかがわせる。

不良債権比率5.29%というやや高めの数字は、果樹農業や地場の中小事業の事情を映すが、自己資本がこれを吸収できる水準にある。山に囲まれた盆地で預金を集め、限られた貸出先に堅実に貸し、残りを運用に向ける——それが、山梨信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。同じ甲府の甲府信用金庫とよく似たこの姿は、甲斐の盆地という土地が二つの信金に共通して刻んだ特徴だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

山梨の経済とともに

山梨信用金庫の数字は、四方を山に囲まれた甲斐の盆地という土地と、そこで預金を集めながら貸出を抑えめにする大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割弱を地元に貸しながら、運用で利益を積み、堅実に営んできた。貸出先の限られた甲府盆地の経済が、39.1%という低い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。山梨信用金庫を見れば、甲斐の盆地の経済と、そこで貸出を抑えめにする信金の姿が浮かぶ。山梨県の他の金融機関は、同じ甲府市の甲府信用金庫、県唯一の地銀山梨中央銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。山梨県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、山梨県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、貸出先の乏しい土地で、集めた預金を運用に回していることが多い。同じ地盤の複数の金融機関がそろって低い預貸率を示すとき、それは個別の経営方針というより、その土地の貸出先の少なさを映していると読める。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。甲府信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(甲府市に本店を置き、甲斐の国・山梨県を地盤とする信用金庫であること、合併を経て山梨県内有数の規模になったこと、甲府が武田信玄の城下町を起こりとする甲府盆地の中心都市であること、周辺が果樹・ワインの産地であること)に関する記述=山梨信用金庫および各種公開情報にもとづく。
甲府・甲斐の地理・産業(甲府盆地、武田信玄、城下町、ぶどう、桃、ワイン、果樹栽培)に関する記述=各種公開情報。

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