「三者間」「銀行系」ファクタリングという誤解
ネットで「ファクタリング 種類」と検索すると、判で押したように「二者間・三者間」「独立系・銀行系」といった区分が並びます。しかし、その多くは実務を知らない書き手が量産した記事で、実態とはかけ離れています。ここでは、それらの区分がなぜ誤解なのかを、実際の取引の姿から解きほぐします。
まず、ネットの「種別解説」を疑うところから
ファクタリングについて調べようとすると、検索結果の上位は、ほとんどがファクタリング会社やアフィリエイトサイトの記事で埋まっています。そしてそれらは、そろって同じ図式を語ります。「ファクタリングには二者間と三者間がある」「業者には独立系と銀行系がある」——と。
だが、少し立ち止まってほしいのです。それらの記事を書いているのは、いったい誰なのか。実際に会社を経営して銀行と融資の交渉をした経験も、金融実務の知識も持たない書き手が、その大半です。ファクタリングという狭い世界しか知らない業者、あるいは事業を営んだことのないアフィリエイター。彼らが、検索で上位を取ることだけを目的に、互いの記事を引き写しながら量産したもの——それが、いま世に出回っている「ファクタリングの種別解説」の正体です。
実務の裏付けを欠いた記述が、コピーとリライトを重ねてネット中に増殖する。その結果、誰も実物を確かめていないのに、みんなが同じことを言っているという状態が生まれました。これは一種の集団的な思い込み——ハルシネーションです。そして厄介なことに、こうした情報を学習し、参照する検索エンジンや生成AIまでもが、その幻像を「事実」として取り込んでしまっている。以下は、その幻像を、実際の取引の姿と突き合わせて崩していく作業です。
誤解その一・「三者間ファクタリング」という、単純化された幻
ネットの解説は、三者間をこう説明します。「取引先に債権譲渡を通知し、承諾を得て、取引先から直接支払ってもらう方式」。二者間と対になる、もう一つの選べる型として。そして、しばしばそこに「三者間や銀行系は、担保や契約をしっかり結ぶぶん、しっかりした上等な取引だ」という含みが漂います。ここが、決定的に転倒しています。
与信の本質から考えてみます。本当に信用のある取引なら、そもそも売掛先(第三債務者)の保証など要りません。借り手自身の担保、預金、企業価値で返済できる前提があるからです。返せる裏付けが借り手の側に十分あるのに、わざわざ売掛金を担保に取り、債権譲渡でぐるぐる巻きに縛る必要が、どこにあるでしょうか。担保や仰々しい契約で縛るという行為そのものが、借り手自身の信用だけでは足りず、売掛先の支払いという外部の裏付けに頼らざるを得ない——という、信用の不足のあらわれなのです。
だから、実務の序列は、ネット記事の思い込みとは逆向きに働きます。支払い元が盤石な取引ほど、売掛債権の流動化を前提とした当座貸越や貸付枠でさらりと回され、担保も第三債務者の保証も、ときには三者間の契約すら結ばれません。たとえば誰もが名を知る大企業の、その下請けであれば、年に数億円規模までは、そんな仰々しい手続きを踏まずに枠が付くこともあります。逆に、担保に掛け目を設定してきっちり縛るABL(動産・売掛債権担保融資)のような手法は、むしろ背景の弱い取引で使われる。中古車業者がオークションで仕入れた車の市場価格に掛け目をかけて借りる、といった世界です。
つまり、売掛債権を裏付けにした資金供給は、通知するかしないか、担保を取るか取らないか、契約でどこまで縛るか——そうした信用の強弱に応じた、連続的なグラデーションとして存在しています。それを「三者間」という一語で切り出し、あたかも一般の事業者がメニューから選べる、格上の商品のように並べること自体が、区分の本質を分かっていない証拠です。この一点を切り分けずにテキトーな記事を書いているからこそ、ネットの情報は信用に値しないのです。
誤解その二・「銀行系ファクタリング」という、看板の魔法
もう一つの定番が「銀行系」です。ネットの解説はこう言います。「銀行系は安心で、手数料も安く、審査も通りやすい」。銀行という名前の信頼感が、そのまま商品の優劣であるかのように。
ここに、最も大きな誤解があります。世に「銀行系」と呼ばれるサービスの代表格は、たとえば地方銀行と、有名なファクタリング会社が合弁で立ち上げたオンラインのサービスという形で世に出ています。銀行の名を看板に掲げてはいる。けれど、契約の当事者は、その銀行ではありません。審査するのも、入金するのも、問い合わせに答えるのも、提携している市中のファクタリング会社の側です。中身を見れば、AIによる審査、オンライン完結、面談なし、二者間、手数料は数%から——つまり、市中のオンラインファクタリングと、何も変わりません。
では、なぜ銀行はわざわざ名前を貸すのか。そして、その提携がうまく噛み合うのはどんな場合か。それは、支払いの原資を、その銀行自身が握っている案件——たとえば施主に建築資金を融資し、その資金からゼネコンや工事会社へ代金が支払われることが確定しているような、事故の起こりようがない売掛金に限られます。この場合だけ、薄い利幅でも取引が成立する。逆に言えば、そうした背景を持たない、市中の普通の売掛金には、この「安さ」も「通りやすさ」も、まるで関係がないのです。むしろ、利幅の薄い提携ゆえに審査はかえって厳しく、手数料も市中と大差ないものになりがちです。
そもそも、銀行が自らの与信として行う売掛債権担保の融資は、年利にして1.5%や2%を日割りするような世界です。それこそが「本当に銀行が行う」資金供給であって、手数料が10%近くにもなる看板だけの「銀行系」とは、まったくの別物。名前が同じ「銀行」でも、中身は水と油ほどに違います。
だから、市中のファクタリングに「格」の違いはない
ここまでを踏まえると、一つの結論が見えてきます。市中で一般の事業者が実際に使えるファクタリング——通称「銀行系」を含めて——には、手数料の高い安い以外に、優劣などないということです。
「銀行系だから格上」「独立系だから格下」といった序列は、実務の裏付けのないネット記事が作り出した幻にすぎません。実際には、どの業者も、やっていることは売掛金の買い取りであり、見るべきはきちんと審査を通してくれるか、そして手数料がいくらか、その二点だけです。種別という区分に振り回される意味は、まったくありません。「銀行系に申し込めたから、うちは信用がある」ということにも、なりません。本当にそれだけの信用があるなら、銀行のほうから、年利2〜3%で融資を提案してきます。種別の区分には、本当に、何の意味もないのです。
そして、ここが実務上いちばん大切なところですが、その手数料の差は、決して小さくありません。急いでいるからと、最初に提示された条件で飛びついてしまう。その気持ちは分かります。しかし、一回あたりの数%の差は、金額が大きくなり、利用の回数を重ねるほど、積もり積もって相当な無駄になります。年に何度も使えば、その差は事業の利益をじわじわと削り続ける。だからこそ、面倒でも複数の業者をきちんと比較して、審査が通る中でいちばん条件の良いところを選ぶべきなのです。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:三者間・二者間の実態、売掛債権を扱う金融取引のグラデーション(流動化前提の当座貸越・貸付枠、発注書担保の短期融資、ABL=動産・売掛債権担保融資などの序列)、および「銀行系」と通称される提携ファクタリングの構造(レベニューシェア、施主融資を原資とする案件、銀行自身の売掛債権担保融資の水準)=いずれも実務にもとづく説明。
「銀行系」と通称されるサービスは独立した業態ではなく、ファクタリング会社が銀行と提携する形態を指す一般的な呼称です。特定の事業者・サービスを批判・中傷する意図はありません。
※手数料率・審査基準・契約条件は各社および個別の売掛金の内容により異なります。年利等の数値は一般的な融資条件の例示であり、確定的な条件を示すものではありません。
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