青い森信用金庫——救済合併で生まれた信金は、なぜ預貸37%なのか
預貸率37.0%、預金6,307億円、不良債権比率6.67%。八戸市に本店を置く青い森信用金庫。経営危機の信金を救済合併して生まれた青森の信金が、低い預貸率と高い焦げ付きの背景を、北の港町から読みます。
青森県八戸市に本店を置く青い森信用金庫は、「青い森しんきん」と呼ばれる信用金庫です。預金6,307億円、貸出金2,332億円、店舗37。青森県全域を営業区域とし、県内では大きな規模を持つ信金です。本店が県庁所在地の青森市ではなく八戸市にあるのには、この信金の成り立ちが関わっています。
本店のある八戸市は、青森県南東部、太平洋に面した水産業と工業の街です。全国有数の水揚げを誇る漁港を抱え、水産加工業や臨海部の製造業が地域経済を支えてきました。県の文化圏としては、津軽地方と対をなす「南部」に属します。一方、営業区域は青森県全域に及びます。この北の港町という地盤と、救済合併で生まれたという成り立ちが、青い森信用金庫の数字を読む鍵になります。
青い森信用金庫の誕生は、危機への対応でした。2009年11月、取引先の破綻によって経営危機に陥っていたあおもり信用金庫を、八戸信用金庫が救済する形で合併し、さらに下北信用金庫も合流して発足しました。旧八戸信金が主体となったため、本店は青森市ではなく八戸市に置かれています。源流をたどれば、旧八戸信金は1922年の八戸鍛冶町信用組合にさかのぼり、水産の街・八戸とともに歩んできた信金でした。数字の面で目を引くのは、預貸率37.0%という低さと、不良債権比率6.67%という高さの組み合わせです。これを、救済合併という成り立ちから読みます。
まず、数字を並べる
青い森信用金庫の預金は6,307億円、貸出金は2,332億円、預貸率37.0%。自己資本比率は11.22%、不良債権比率は6.67%。中小企業等向けの貸出先は2万9,669件にのぼります。
| 預金 | 6,307億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 2,332億円 |
| 預貸率 | 37.0% |
| 自己資本比率 | 11.22% |
| 不良債権比率 | 6.67% |
| 中小企業等向け貸出先 | 29,669件 |
| 店舗 | 37店 |
預貸率37.0%・不良債権6.67%。救済合併で生まれた信金の数字。
37.0%と6.67%を、救済合併から読む
預貸率37.0%という、預金の4割に満たない貸出と、不良債権比率6.67%という高さ。この組み合わせは、経営危機の信金を引き受けて生まれた信金の歩みを映していると読めます。
青い森信用金庫の貸す相手は、八戸を中心とする青森県内の中小事業者です。水産・水産加工、臨海部の製造業、地域の商業・サービス業が、その融資先に含まれます。しかし預貸率は37.0%にとどまり、集めた預金の6割超は貸出に回らず、有価証券などの運用に向かっています。これは、人口減少と高齢化の進む青森で、安全に貸せる先が限られていることに加え、救済合併で引き受けた不良資産の重みも背景にあると読めます。
それを裏づけるのが、不良債権比率6.67%という高さです。青い森信用金庫は、取引先の破綻で経営が傾いたあおもり信金を救済する形で生まれました。危機に陥った信金を引き受けるということは、その焦げ付きごと抱え込むということでもあります。発足から十数年を経てなお高めの不良債権比率が残るのは、その出自と、その後も続く地域経済の厳しさの両方を映していると読めます。一方で、自己資本比率は11.22%と相応に厚く、貸出を絞り運用を厚くする慎重な姿勢で、合併後の足元を固めてきたことがうかがえます。もちろん、これらの比率には個別の事情も絡むため断定はできませんが、救済合併という成り立ちと、北の港町の地域経済を抜きに、この数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
青い森信用金庫が地元の中小に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。青い森信用金庫にとって、その「地区」は、人口減少の進む青森県です。地区内に安全に貸せる先が限られ、しかも救済合併で不良資産を抱えた信金にとって、貸出を絞って運用を厚くするのは、ひとまず堅実な道でもあります。危機に陥った同業を引き受けて地域から金融機関を消さなかったこと自体が、地区に根ざして会員を支えるという信金の役割の現れでした。低い預貸率は、その役割を果たし続けるために足元を固めてきた、いまの途上の姿と読めます。
同じ青森で、津軽の信金と並べてみる
本紀行には、同じ青森県の東奥信用金庫も登場しています。八戸(南部)に本店を置く青い森信用金庫に対し、東奥信金は弘前(津軽)に本店を置き、しかも2009年の県内信金再編の際、青い森信金との合併から離脱して単独での生き残りを選びました。救済合併で大きくなった青い森信金(預貸率37.0%)と、合併に加わらず単独を選んだ東奥信金とは、同じ青森でありながら対照的な道を歩んだことになります。南部と津軽、合併と単独——二つの信金を並べると、人口減の北の県で信金が選んだ別々の生き方が見えてきます。津軽の信金の姿は、東奥信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。預貸率が低めであることは、貸出に慎重な局面があることを示すとも読めますが、それが個別の融資の可否を一律に決めるわけではありません。事業の中身を備えた借り手に、地元の信金が向き合う姿勢は変わりません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、引き受けた歩みを映す
預貸率37.0%という低さと、不良債権比率6.67%という高さは、危機に陥った同業を引き受け、人口減の青森でなお足元を固め続ける信金の姿を映しています。攻めて高く貸す信金もあれば、青い森信用金庫のように引き受けた重みを抱えて慎重に守る信金もある。数字は、その金融機関がどんな成り立ちを背負ってきたかを語ります。青い森信用金庫の数字は、救済合併から生まれた「青い森しんきん」の、いまの記録です。
本紀行には、同じ青森県の青森県信用組合も登場しています。青森県信組は、県全域を地盤とする信用組合でした。県全域を営業区域とするこの青い森信用金庫と、同じく県全域の小さな借り手に向き合う青森県信用組合(預貸率50.7%・中小先約1.1万)とを並べると、同じ青森県でも、地区の中小に貸す信金と、より小さな借り手に密着する信組とで、その立ち位置が異なることが見えてきます。県域の信組の姿は、青森県信用組合の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。青森県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、青森県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
青い森信用金庫の沿革(2009年11月、経営危機に陥ったあおもり信用金庫を八戸信用金庫が救済合併し、下北信用金庫も合流して発足、本店は旧八戸信金の八戸市、青森県全域が営業区域、旧八戸信金は1922年の八戸鍛冶町信用組合が源流)に関する記述=青い森信用金庫および各種公開情報にもとづく。
八戸市・青森県の経済(水産業・水産加工・臨海工業、南部地方、人口減少)に関する記述=各種公開情報。
東奥信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。