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君津信用組合——鉄の街の内房で、きみしんは何に貸すか

預貸率64.2%、預金1,487億円、自己資本比率8.83%、不良債権比率1.84%。千葉県木更津市に本店を置く君津信用組合。製鉄の企業城下町を抱える内房で、本業の事業融資に踏み込む「きみしん」が、何に貸すのか。同じ千葉の信用組合と比べながら、その数字と歴史を読む。

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千葉県の木更津市に本店を置く君津信用組合は、預金1,487億円を持つ信用組合だ。店舗15。地元では「きみしん」と呼ばれる。木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市、市原市、館山市、南房総市、鋸南町——東京湾に面した内房沿線の7市1町を営業エリアとし、この一帯の中小・零細事業者と住民を組合員として支えてきた。

本拠を置く木更津市と、その南の君津市・富津市・袖ケ浦市・市原市は、京葉工業地域の一角をなす臨海工業地帯だ。なかでも君津市は、大規模な製鉄所を抱える「鉄の街」として知られ、製鉄とその関連産業が地域経済を支えてきた。袖ケ浦・市原には石油化学のコンビナートが並ぶ。一方、南へ下れば館山・南房総の観光と農業・漁業が広がる。東京湾アクアラインが木更津と川崎を結び、首都圏との距離も近い。君津信用組合は、こうした製鉄と化学の臨海工業から観光・農漁業までを含む内房に根ざし、地域に貸してきた信用組合だ。

この信組の数字で目を引くのは、預貸率64.2%という高さと、不良債権比率1.84%という低さだ。預金の6割超を貸出に回しながら、焦げ付きはきわめて低く抑えられている。なぜ、内房の信組は、こうした数字になるのか。同じ千葉を地盤とする信用組合とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。君津信用組合の預金は1,487億円、貸出金は954億円。預貸率は64.2%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は8.83%、不良債権比率は1.84%。店舗数は15、中小企業等への貸出残高は836億円、貸出先は6千件を超える。

同じ千葉県を地盤とする信用組合と比べてみる。銚子商工信用組合(預貸率46.4%・不良債権比率5.53%)、房総信用組合(預貸率48.0%・不良債権比率10.92%)と並べると、君津信用組合の預貸率64.2%は際立って高く、不良債権比率1.84%は際立って低い。よく貸しながら、焦げ付きを抑える——この両立は、容易なことではない。製鉄を中心とする企業城下町を抱え、関連する中小事業者の資金需要が厚く、かつ取引先の経営が比較的安定していることが、この数字の背景にあると読める。同じ千葉の信用組合でも、地盤の産業構造によって、貸す量も焦げ付きも大きく変わる

千葉県の信用組合(令和7年3月末)
 君津信用組合銚子商工信用組合房総信用組合
本店木更津市銚子市茂原市
預金1,487億円2,830億円1,285億円
預貸率64.2%46.4%48.0%
自己資本比率8.83%9.45%9.60%
不良債権比率1.84%5.53%10.92%

よく貸しながら焦げ付きが低いのが君津信用組合の際立った特徴。製鉄を中心とする企業城下町の、厚く安定した資金需要が背景にあると読める。

鉄の街の内房とともに——君津信用組合の歩み

君津信用組合は、1962年(昭和37年)5月に設立された信用組合だ。「金融を通じて地域社会に奉仕する」を基本理念に掲げ、内房沿線の中小・零細事業者と生活者の相互扶助のための金融機関として歩んできた。設立は、君津の地に大規模な製鉄所が立地していく時期と重なる。製鉄所の進出によって、内房は農漁村から一大工業地帯へと姿を変え、関連企業や下請け、商店、そこで働く人々の暮らしが集まった。君津信用組合は、その変化のなかで地域の資金需要を引き受け、育ってきた。

内房という土地は、信用組合にとって、組合員の資金需要の厚い地盤だ。製鉄とその関連産業、石油化学のコンビナート、そこに連なる中小・零細事業者——設備投資や運転資金の必要が絶えない。加えて、近年は営業地域が重なっていた地元の信用金庫が他金庫と合併して店舗網が変わり、JAの統廃合も進むなか、身近な金融機関を必要とする顧客の受け皿としての役割も担ってきた。本業である事業資金融資への取り組みを重点施策に掲げ、中小企業の資金繰り支援に注力する——その姿勢が、預貸率64.2%という高い水準を支えている。電子地域通貨「アクアコイン」の取り組みなど、地域経済との接点を広げる動きでも知られる。

64.2%と1.84%を、内房から読む

君津信用組合の預貸率64.2%という高さは、製鉄を中心とする企業城下町を抱える内房で、本業の事業融資に踏み込んでいることの表れだと読める。製鉄と化学の臨海工業、それに連なる中小事業者がひしめく内房は、信用組合が貸す相手の厚い土地だ。君津信用組合は、本業の事業資金融資を重点に据え、組合員の中小に深く貸し、預金の6割超を貸出に回している。

そして、不良債権比率1.84%という低さが、この貸し方を支える。よく貸しながら焦げ付きを抑えられているのは、地盤の産業が比較的安定し、取引先を見極めて貸してきたからだと読める。大規模な製鉄所を核とする企業城下町は、関連する事業者の経営も相対的に安定しやすい。自己資本比率8.83%は、信用組合として基準を満たす水準だ。鉄の街の内房で、本業の事業融資に踏み込み、それでいて焦げ付きを低く保つ——それが、君津信用組合の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

千葉の経済とともに

君津信用組合の数字は、製鉄を核とする内房という土地と、そこで本業の事業融資に踏み込む信組の歩みの、両方を映している。預金の6割超を地元の組合員に貸し、製鉄と化学の臨海工業に連なる中小・零細事業者を支えてきた。鉄の街を抱える内房の、厚く安定した経済が、64.2%という高い預貸率と、1.84%という低い焦げ付きに表れている。

銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。君津信用組合を見れば、鉄の街の内房の経済と、そこで本業の融資に踏み込む信組の姿が浮かぶ。千葉県の他の金融機関は、醤油のまちの銚子商工信用組合、外房の房総信用組合、県を代表する千葉銀行、もうひとつの地銀京葉銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。千葉県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、千葉県の地域金融機関のページへ。

君津信用組合と融資・保証のはなし

預貸率64.2%の君津信用組合は、本業の事業融資に踏み込む貸出型の信用組合です。実際に借りることを考えるなら、申込の前に手順と制度を押さえておきたいもの。融資の進め方と保証のしくみを、用語とあわせてまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。企業城下町のように資金需要が厚く、取引先の経営が比較的安定した土地を地盤とする信用組合は、本業の事業融資に踏み込んで預貸率が高くなり、かつ焦げ付きを低く抑えられることがある。不良債権比率や自己資本比率とあわせて見ることで、その貸し方の質が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。銚子商工信用組合・房総信用組合の数値も同出典。
沿革・地域(木更津市に本店を置き、木更津・君津・富津・袖ケ浦・市原・館山・南房総・鋸南町の内房沿線7市1町を営業エリアとする信用組合であること、1962年5月に設立され「金融を通じて地域社会に奉仕する」を基本理念とすること、本業の事業資金融資を重点施策に掲げ中小企業の資金繰り支援に注力していること、電子地域通貨「アクアコイン」の取り組みを行っていること、君津市が大規模な製鉄所を抱える企業城下町であること)に関する記述=君津信用組合および各種公開情報にもとづく。
内房の地理・経済(木更津、君津、富津、袖ケ浦、市原、内房、京葉工業地域、製鉄、石油化学、東京湾アクアライン)に関する記述=各種公開情報。

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