¥Today ニホン銀行紀行

館山信用金庫——房総半島の南端で、安房唯一の信金は何に貸すか

預貸率58.9%、預金1,549億円、自己資本比率16.59%、不良債権比率4.6%。千葉県館山市に本店を置く館山信用金庫。房総半島南端の安房地域に根ざす唯一の信金が、何に貸すのか。同じ千葉の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 千葉県

千葉県の館山市に本店を置く館山信用金庫は、預金1,549億円を持つ信用金庫だ。店舗13。「たてしん」の呼び名で知られ、安房地域(館山・鴨川・南房総・鋸南)を中心に、君津・木更津・袖ケ浦・市原にも店舗を構える。房総半島の南端に根ざす信金だ。

本拠の館山市は、房総半島の南の端、東京湾の入り口に面した土地だ。温暖な気候に恵まれ、花卉栽培や酪農、沿岸漁業がさかんで、夏には海水浴やダイビングの観光客でにぎわう。背後には安房の山々が広がり、鴨川・南房総へと続く。東京湾アクアラインと館山自動車道で首都圏とつながる一方、人口減少と高齢化が早くから進んできた地域でもある。館山信用金庫は、こうした房総半島南端の安房と、その周辺の土地に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率58.9%という、信用金庫としてはやや高めの水準と、自己資本比率16.59%という厚い資本だ。預金の6割近くを貸出に回しつつ、厚い自己資本を保っている。不良債権比率は4.6%。なぜ、房総南端の信金は、こうした数字になるのか。同じ千葉の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。館山信用金庫の預金は1,549億円、貸出金は913億円。預貸率は58.9%で、預金の6割近くを貸出に回している。自己資本比率は16.59%、不良債権比率は4.6%。店舗数は13、中小企業等への貸出残高は658億円。

同じ千葉県で、水郷の商都・佐原を地盤とする佐原信用金庫(預貸率43.0%・預金2,360億円)と比べると、房総南端の館山のほうが高い比率で貸している。館山信用金庫の預貸率58.9%は佐原信用金庫(43.0%)を大きく上回り、預金の6割近くを貸出に回す。一方、規模では佐原信用金庫が上回る。水郷の商都に根ざし貸出を抑えめにする佐原と、房総南端で安房に深く貸す館山——同じ千葉の信金でも、地盤とする土地が貸し方を分けていると読める。館山信用金庫は、厚い自己資本(16.59%)を保ちながらよく貸している点に特徴がある。

千葉県の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 館山信用金庫佐原信用金庫
本店館山市(安房)香取市(佐原)
預金1,549億円2,360億円
預貸率58.9%43.0%
自己資本比率16.59%
不良債権比率4.6%

ともに千葉県の地域に根ざす信金。房総南端の館山はよく貸し厚い資本を持ち、水郷の佐原は貸出を抑えめにする。地盤とする土地の違いが背景にある。

北条館山から——館山信用金庫の歩み

館山信用金庫は、1928年(昭和3年)10月、有限責任北条館山信用組合として設立された。その後、保証責任館山信用組合、館山市信用組合と名を変え、1951年(昭和26年)、信用金庫法の制定により館山信用金庫となった。創立以来、地域中小企業の発展、地域住民の生活の向上、地域社会への奉仕を経営ビジョンに掲げ、安房郡市を中心に房総南部の地域金融機関として歩んできた。少子高齢化に伴う人材不足や後継者不足といった地域課題に応えるため、2015年からは若手経営者・後継経営者を育てる「たてしん経営塾」を開き、財務分析やマーケティングを学ぶ場を提供している。地域の景況をまとめた「たてしん中小企業景況レポート」の発行など、地域に密着した取り組みでも知られる。

安房という土地は、信用金庫にとって、貸す相手のある地盤だ。花卉・酪農・沿岸漁業といった一次産業、夏の観光、城下町の商業——多様な事業者が広がる。一方で、人口減少と高齢化が早くから進み、地方銀行も限られる。房総南端でただ一つの信金として、この地の中小・零細事業者に密着して貸す——その姿が、預貸率58.9%という、信用金庫としては高めの水準を支えている。自己資本比率16.59%という厚い資本は、地域の浮き沈みに備えながら堅実に経営してきたことを映し、不良債権比率4.6%は、限られた商圏のなかで地域とともに歩んできたことを示していると読める。

58.9%を、房総南端から読む

館山信用金庫の預貸率58.9%という水準は、房総南端で安房地域に根ざす信金として、地元の中小に着実に貸していることの表れだと読める。花卉・酪農・漁業・観光の安房は、信用金庫が貸す相手のある土地だ。地方銀行の限られたこの地で、館山信用金庫はその中小・零細事業者に密着して貸し、預金の6割近くを貸出に回している。

厚い自己資本(16.59%)は、人口減少の進む地域で先々に備えつつ堅実に経営してきたことの表れだと読める。房総南端に根ざし、安房唯一の信金として地域を支える——それが、館山信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

千葉の経済とともに

館山信用金庫の数字は、房総半島南端の安房という土地と、その地に根ざす唯一の信金として歩んできた歴史の、両方を映している。預金の6割近くを地元の会員に貸し、厚い自己資本を保ちながら、安房の中小・零細事業者を支えてきた。花卉・酪農・漁業・観光の房総南端の経済が、58.9%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。館山信用金庫を見れば、房総南端の経済と、そこでただ一つ地域に貸す信金の姿が浮かぶ。千葉県の他の金融機関は、水郷の佐原信用金庫、湾岸の東京ベイ信用金庫、県のトップバンク千葉銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。千葉県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、千葉県の地域金融機関のページへ。

館山信用金庫と融資・保証のはなし

館山信用金庫は、安房に深く根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。地方銀行の限られた地域で、その土地に根ざす唯一の信用金庫が中小・零細事業者に密着して貸す場合、預貸率が6割近くとやや高めになることがある。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の堅実さが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。佐原信用金庫の数値も同出典。
沿革(1928年(昭和3年)10月に有限責任北条館山信用組合として設立され、保証責任館山信用組合・館山市信用組合と名を変え、1951年(昭和26年)に信用金庫法の制定により館山信用金庫となったこと、安房郡市を中心に君津・木更津・袖ケ浦・市原にも店舗をもつこと、2015年から「たてしん経営塾」を開き若手・後継経営者の育成に取り組むこと、「たてしん中小企業景況レポート」を発行していること、「たてしん」と呼ばれること)=館山信用金庫および各種公開情報にもとづく。
館山・安房の地理・経済(館山、安房、房総半島、東京湾、鴨川、南房総、鋸南、花卉、酪農、沿岸漁業、観光、館山自動車道)に関する記述=各種公開情報。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ