福邦銀行——預金をほぼ貸し切る小さな第二地銀は、何を担うか
預貸率96.8%、自己資本比率5.58%。福井銀行の傘下に入った小さな第二地方銀行が、預かった預金のほとんどを貸し切っている。その積極姿勢を、グループのなかの役割から読み解く。
福井県には、トップバンクの福井銀行と並んで、もう一つ普通銀行がある。福邦銀行——通称「ふくほう」だ。同じ福井市に本店を置く第二地方銀行で、規模は福井銀行よりずっと小さい。そしていまは、その福井銀行の傘下に入り、グループの一員となっている。
この銀行の数字には、はっとさせられる。預貸率96.8%。預かった預金の、ほぼすべてを貸出に回している。集めたお金をほとんど貸し切る、という極めて積極的な姿だ。なぜ、これほど貸すのか。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。福邦銀行の預金は4,187億円、貸出金は4,052億円。預金と貸出がほぼ同じ額で、預貸率96.8%という数字になる。店舗数は38、中小企業等への貸出先は約1万8千件。地方銀行のなかでも、かなり小規模な部類に入る。
一方で、自己資本比率は5.58%とやや薄い。不良債権比率は2.9%。預金をほぼ貸し切り、資本の備えは厚くない——この組み合わせは、攻めの姿勢が数字に出た形と読める。同じ福井県内の他行と並べると、その性格がくっきりする。
| 福邦銀行 | 福井銀行 | |
|---|---|---|
| 種別 | 第二地方銀行 | 地方銀行 |
| 預金 | 4,187億円 | 29,012億円 |
| 貸出金 | 4,052億円 | 20,430億円 |
| 預貸率 | 96.8% | 70.4% |
| 自己資本比率 | 5.58% | 8.10% |
規模では福井銀行が圧倒的に大きい。だが預貸率では福邦銀行が上回る。同じグループのなかで、貸出への振り切り方が違う。
小さな銀行が、貸し切る理由
規模の小さい第二地方銀行が、預金をほぼ貸し切るのには理由がある。大きな銀行のように、有価証券運用で大きく稼ぐ余力は乏しい。となれば、本業である貸出で収益を上げるしかない。集めた預金を遊ばせず、地元の中小事業者にできるだけ貸す——それが、小さな銀行の生き方になる。
福井は繊維やものづくりの中小事業者が数多く根を張る土地だ。トップバンクの福井銀行が県全体を見渡すのに対し、福邦銀行のような小回りのきく銀行は、より小さな事業者や、地域の細やかな資金需要に応えてきた。大きな銀行が拾いきれない部分を、小さな銀行が密着して支える。預貸率96.8%という数字は、その密着の度合いを物語っている。
ただし、預金をほぼ貸し切り、自己資本も薄いという姿は、裏を返せば余裕の少なさでもある。景気が崩れて焦げ付きが増えれば、薄い資本では支えきれない場面も出てくる。そこに、福井銀行グループに入った意味がある。
グループのなかの役割
福邦銀行は、福井銀行の子会社となり、グループの一員として歩んでいる。これは、小さな第二地銀が単独で経営を続けるより、規模の大きな銀行の傘下で安定を得ながら、地域に貸し続けるほうが理にかなう、という判断の表れだ。
人口減少が進む地方では、同じ県内の銀行が消耗戦を繰り広げるより、力を合わせて地域を支えるほうが現実的になっている。福邦銀行が福井銀行グループのなかで担うのは、小さな事業者への密着した貸出という役割だろう。県全体を見るトップバンクと、小回りのきく第二地銀。役割を分けて、一つの県の金融を支える。預貸率96.8%は、そのなかで福邦銀行が受け持つ「貸す」役割の濃さを示している。
預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。高い預貸率は積極性の表れだが、「だから借りやすい」と単純には言えない点も、そちらで整理している。福井県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福井県の地域金融機関のページへ。グループの中核である福井銀行とあわせて読むと、二行の関係がよく見えてくる。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
福井銀行グループ入り(子会社化)に関する記述=福井銀行・福邦銀行公開情報。
福井県の産業(繊維・ものづくり)に関する記述=各種公開情報。