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田川信用金庫——炭坑節のまち・田川で、信金は何に貸すか

預貸率38.8%、自己資本比率10.33%、不良債権比率4.98%。田川市に本店を置く田川信用金庫。かつて筑豊炭田で栄えたまちに残り、地元の小さな事業者に貸す小さな信金の数字を読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 福岡県

福岡県田川市に本店を置く田川信用金庫は、預金696億円、貸出金270億円、店舗9。田川市を中心に、田川郡の町村を地盤とする、福岡県内では小規模な信用金庫です。

本店のある田川市は、福岡県の中央部、筑豊地方の東部に位置するまちです。かつては筑豊炭田の一角として、石炭産業で大いに栄えた炭鉱のまちでした。三井田川鉱業所の二本煙突とボタ山は、いまも炭鉱の記憶を伝える田川のシンボルです。坑夫たちの労働歌から生まれた「炭坑節」発祥の地としても知られます。だが、エネルギー革命による炭鉱の閉山とともに、まちは長い人口減少の時代を歩んできました。この、かつての繁栄とその後の縮小という歴史を抱える土地柄が、田川信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫は、1948年に設立されました。炭鉱で栄えた時代から、閉山を経た縮小の時代まで、田川のまちとともに歩んできた信金です。福岡県には大きな信用金庫もあるなかで、預金696億円・店舗9という規模は小さく、その地盤は田川という限られた地域に深く根ざしています。数字の面で目を引くのは、預貸率38.8%という低さです。

まず、数字を並べる

田川信用金庫の預金は696億円、貸出金は270億円、預貸率38.8%。自己資本比率は10.33%、不良債権比率は4.98%。中小企業等向けの貸出先は3,519件です。

田川信用金庫(令和7年3月末)
預金696億円
貸出金270億円
預貸率38.8%
自己資本比率10.33%
不良債権比率4.98%
中小企業等向け貸出先3,519件
店舗9店

預貸率38.8%・預金696億円。炭鉱のまちに残る小さな信金の数字を読む。

38.8%という数字を、炭鉱のまちから読む

預貸率38.8%という低めの水準は、預金として集めた資金のうち、貸出に回しているのが四割に満たないことを示します。本紀行で見てきた地方の信金のなかでも、控えめな部類です。この数字を読むには、田川という土地が歩んできた歴史を抜きにできません。

かつて炭鉱で栄えた田川は、閉山とともに人口を大きく減らし、まちの経済は長く縮小の時代を歩んできました。田川信用金庫が貸す相手は、その田川に残って事業を続ける地元の中小事業者です。まちの商業や建設業、サービス業、周辺の農業が、その融資先に含まれると考えられます。だが、人口減少が進み、かつての炭鉱のような大きな産業を失った土地では、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率38.8%という水準は、そうした土地の事情を率直に映していると読めます。

不良債権比率4.98%は、地方の信金としてやや高めの水準にあり、縮小してきた地域経済と向き合ってきた歩みの表れとも読めます。それでも、この信金は田川というまちに残り、地元の小さな事業者に資金を供給し続けてきました。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、繁栄と縮小の歴史を抱える田川という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

田川信用金庫が示すのは、かつて炭鉱で栄えたまちに残り、地元を支え続ける小さな信金の姿です。閉山を経て縮小した土地で、預金696億円という小さな規模ながら、地元の事業者に向き合い続ける。控えめな預貸率は、繁栄と縮小の歴史を歩んだ田川という土地の現実を率直に映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

田川信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。田川信用金庫にとって、その「地元」とは、炭鉱の閉山を経て縮小してきた田川を中心とした地域経済です。地区の外へ自由に逃れられない信金は、地域が縮めばその影響を共に負いながら、それでもなおその地に残って資金を供給し続ける立場にあります。控えめな預貸率は、その地区のなかで貸し先が限られる土地の現実を映した、一つの帰結とも読めます。小さな信金が地元に在り続けること自体に、地域金融機関としての意味があります。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ福岡県を代表する地銀として、福岡銀行(預貸率90.9%)も本紀行に登場しています。九州随一の都市圏を抱え県土全体を相手にする福岡銀行(預貸率90.9%)と、筑豊・田川に根ざすこの田川信用金庫(預貸率38.8%)とを並べると、同じ福岡でも、大都市圏を相手にする地銀と、縮小した地方のまちに密着する小さな信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、福岡銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ筑豊には、飯塚に根ざす飯塚信用金庫があります。預貸率58.7%の飯塚信用金庫と、預貸率38.8%の田川信用金庫は、ともに筑豊炭田の記憶を持つ土地の信金でありながら、数字の形は異なります。同じ筑豊でも、まちの規模や産業の残り方が、信金の数字を分けています。筑豊のもう一つの信金の姿は、飯塚信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、縮小してきた地方のまちで事業を続ける田川の事業者にとって、土地の事情を知る小さな信金の存在は心強いものです。預貸率が低いことは、相対的に貸し先を求めている可能性をうかがう一つの目安にはなりますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率38.8%という控えめな水準は、かつて筑豊炭田で栄え、閉山を経て縮小してきた田川に残り、地元の小さな事業者を支え続けてきた信金の姿を映しています。大都市圏でしっかり貸す金融機関もあれば、縮小した土地に残って地元と向き合う信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。田川信用金庫の数字は、炭坑節のまちに残る小さな信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。福岡県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、福岡県の地域金融機関のページもどうぞ。

田川信用金庫と融資・保証のはなし

田川信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
田川信用金庫の沿革(1948年設立)、田川市・田川郡を事業区域とすること、本店所在地に関する記述=田川信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
田川市の筑豊炭田・三井田川鉱業所・二本煙突・ボタ山・炭坑節、炭鉱閉山後の人口減少に関する記述=各種公開情報。
福岡銀行・飯塚信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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