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大東銀行——震災と原発事故を黒字で越えた郡山の銀行は、何に貸すか

預貸率91.1%、預金7,327億円、店舗56。福島県郡山市に本店を置く大東銀行。1942年の大東無尽を源流とし、リーマン・ショックや東日本大震災・原発事故を経ても黒字経営を続けてきた第二地方銀行。筆頭株主が移り変わる歴史と、その数字を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 福島県

福島県郡山市。東北の交通の要衝として栄えた商都に、大東銀行の本店はある。福島県を地盤とする第二地方銀行だ。預金は7,327億円、貸出金は6,674億円、店舗は56。預貸率は91.1%にのぼり、集めた預金の9割を貸出に回している。よく貸す銀行だ。福島県には県のトップバンクである東邦銀行があり、大東銀行はそれに次ぐ規模で県内に根を張っている。

福島県は、2011年の東日本大震災と原発事故という、未曽有の災害を経た土地だ。地震、津波、そして原発事故による避難——県の経済と人々の暮らしは、大きく揺さぶられた。地元の銀行は、その渦中で取引先とともに立たされた。大東銀行は、その困難を黒字経営で乗り越えてきたとされる。そして近年、この銀行は、筆頭株主が次々と入れ替わるという、別の波にも揉まれている。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。大東銀行の預金は7,327億円、貸出金は6,674億円。預貸率は91.1%で、預金の9割を貸出に回している。自己資本比率は10.83%。不良債権比率は4.03%と、やや高い。店舗数は56、中小企業等への貸出残高は4,932億円にのぼる。

大東銀行(令和7年3月末)
預金7,327億円
貸出金6,674億円
預貸率91.1%
自己資本比率10.83%
不良債権比率4.03%
中小企業等向け貸出残高4,932億円
店舗56店

預貸率91.1%とよく貸す。不良債権比率4.03%は震災を経た土地の事情も映す。

無尽から始まり、災害を黒字で越えた

大東銀行の源流は、1942年(昭和17年)に設立された大東無尽株式会社にさかのぼる。庶民が小銭を出し合う相互金融・無尽から出発し、相互銀行を経て、第二地方銀行となった。全国の多くの第二地銀と同じ道筋だ。本店を置く郡山は、福島県のなかでも商工業の集まる経済の中心で、大東銀行はこの地で地元の事業者に貸してきた。

この銀行を語るうえで欠かせないのが、度重なる危機を黒字で乗り切ってきたという歩みだ。バブルの崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災と原発事故、マイナス金利政策、新型コロナ——平成から令和にかけて、地方銀行を襲った難題は数多い。とりわけ2011年の震災と原発事故は、福島の銀行にとって計り知れない打撃だった。リーマン・ショックの年度と震災の年度には赤字を計上したものの、2012年3月期以降は十数期にわたって連続で黒字を達成してきたとされる。「規模にとらわれない安定経営」を掲げ、身の丈に合った堅実な商売を続けてきた結果だ。震災という最大の試練を、地元の銀行として取引先とともに越えてきた歩みが、この銀行の芯にある。

筆頭株主が、次々と入れ替わる

堅実な本業の一方で、大東銀行は近年、筆頭株主が目まぐるしく移り変わるという波に揉まれてきた。地方銀行の株式が投資の対象となり、再編の思惑が交錯する時代を、象徴するような動きだ。

かつての筆頭株主だった企業が、2020年、保有する全株式をSBIホールディングスへ売却した。SBIは地方銀行との連携を進めており、その文脈での取得とされた。そして2025年末、今度は福島県のトップバンクである東邦銀行が、大東銀行の株式を取得して筆頭株主となった。東日本大震災以降、大きな動きのなかった福島の地銀再編が、ついに動いたと注目された。報道では、県内トップ行が県外勢の動きをけん制する「守り」の意味合いが強いとされ、ただちに合併へ向かう可能性は低いとも伝えられる。本業は堅実に黒字を続けながら、資本の世界では大きな力に揺さぶられる——それが、いまの大東銀行が置かれた状況だ。それでも、規模に頼らず地域に根ざすという経営の芯は、揺らいでいないとされる。

91.1%を、商都と震災から読む

預貸率91.1%は、地方銀行のなかでもよく貸す部類に入る。集めた預金の9割を貸出に回している。本店を置く郡山という商工業の集積地が、貸し先を支えている。中小企業等向け貸出残高は4,932億円で、貸出の大半を地元の中小に向けている。

一方で、不良債権比率4.03%という数字は、やや高い。これは、震災と原発事故を経た福島という土地の事情を映していると読める。災害で打撃を受けた取引先を、地元の銀行として支え続ければ、その分、回収の難しい債権を抱えることにもなる。安易に切り捨てず、地域とともに立つ——その姿勢が、よく貸す高い預貸率と、やや高い不良債権比率の、両方に表れているとも読める。商都でよく貸し、困難な土地で取引先を見捨てない。その経営が、91.1%という数字の背後にある。

災害を越えた銀行の、いまの立ち位置

大東銀行の預貸率91.1%は、商工業の集まる郡山という土地と、震災と原発事故を黒字で越えてきた堅実経営の、両方を映している。無尽から始まり、度重なる危機を身の丈の経営で乗り切り、いまは筆頭株主の交代という新たな波のなかにある。それでも、規模に頼らず地域に根ざすという芯は変わらない。数字は、その金融機関がどんな困難を越え、いまどこに立っているかを語る。大東銀行の数字は、災害の時代を生き抜いた、福島の第二地銀の記録である。

各地の金融機関には、それぞれの成り立ちと土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。福島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、福島県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沿革(1942年の大東無尽設立を源流とすること、リーマン・ショックや東日本大震災・原発事故等を経て2012年3月期以降に連続黒字を続けてきたとされること、「規模にとらわれない安定経営」を掲げていること)に関する記述=大東銀行公開情報、各種公開情報。
筆頭株主の変遷(かつての筆頭株主が2020年に全株式をSBIホールディングスへ売却したこと、2025年末に東邦銀行が株式を取得して筆頭株主となったこと、福島の地銀再編をめぐる報道)に関する記述=各種公開情報および報道。
福島県・郡山の状況(東日本大震災・原発事故、郡山の商工業の集積、東邦銀行が県内トップ行であること)に関する記述=各種公開情報。

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