¥Today ニホン銀行紀行

東邦銀行——三行合併で生まれた福島の盟主は、何に貸すか

預貸率70.2%、自己資本比率10.27%、連結純利益74億円。1941年に三行が合併して生まれた福島県のトップバンク「とうほう」。広い県土を支える地銀の数字を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 福島県

福島県は、東北で最も南に位置する広い県だ。太平洋に面した浜通り、阿武隈の山を越えた中通り、そして会津盆地と猪苗代湖を抱える会津。県内は大きく三つの地域に分かれ、それぞれに異なる風土と経済がある。この広い県のトップバンクが、東邦銀行——通称「とうほう」である。福島市に本店を置く。

三つの地域に分かれた県を、一つの銀行がまとめて支える。それは、この銀行の生い立ちと深く関わっている。東邦銀行は、福島県内の三つの銀行が合併して生まれた。その歴史と数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。東邦銀行の預金は5兆7,709億円、貸出金は4兆540億円。預貸率は70.2%で、預金の7割を貸出に回している。自己資本比率は10.27%、不良債権比率は1.33%に抑えられている。店舗数は123、中小企業等への貸出先は約11万5千件にのぼる。福島県のトップバンクとして、確かな規模を持つ。

2025年3月期の連結当期純利益は74億4千万円で、前年から41.8%増え、2年連続の増益となった。金利が上昇するなか、貸出や有価証券の利回りが向上したことが寄与している。東北の有力地銀の一つとして、安定した経営を続けている。

三行が一つになった歴史

東邦銀行の歴史は、昭和の金融恐慌と戦時統制にさかのぼる。かつて福島県には、生糸・米・電力・紡績・石炭といった産業を背景に、明治期には38もの銀行が存在していた。だが昭和初期の金融恐慌で有力銀行が相次いで破綻し、生き残ったのはわずか11行のみだった。

日中戦争が始まり、国全体が戦時体制に移るなか、政府は一県一行主義を強力に進めた。福島県では、堅実な経営で生き残っていた郡山商業銀行・会津銀行・白河瀬谷銀行の三行を中核とする方針が打ち出された。会津銀行では株主による合併反対運動もあったが、最終的に三行は対等合併し、1941年(昭和16年)、福島県郡山市に東邦銀行が誕生した。その後も県内の銀行を次々と合併・譲受し、1946年に本店を福島市に移した。中通り・会津・浜通りという三つの地域の銀行が一つになったことが、いまの東邦銀行の広い地盤の土台になっている。

広い県土に、堅実に貸す

東邦銀行の預貸率70.2%は、地方銀行として標準的な水準だ。よく貸す地銀ほど高くはないが、運用に偏るわけでもない。この数字の背景には、福島県という土地の事情がある。

福島県は、浜通り・中通り・会津という三つの地域がそれぞれ異なる経済を持ち、人口は減少傾向にある。県全体の資金需要が爆発的に伸びる土地ではない。三つの地域に広く店舗を構え、それぞれの土地の事業者に堅実に貸す——預貸率70.2%という数字は、そうした地に足のついた経営の表れと読める。製造業、農業、観光と、地域ごとに異なる産業を、一つの銀行が広くカバーしている。

低すぎず、高すぎない預貸率。広い県土を一つの銀行で支えるという役割を思えば、この堅実さは理にかなっている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

福島の経済とともに

東邦銀行の数字は、三つの地域に分かれた広い福島県を、堅実に支える姿を映している。三行合併で生まれ、県内全域に店舗を広げ、製造業から農業、観光まで幅広く貸す。一県の盟主として、福島の経済とともに歩んできた銀行である。

銀行の数字は、その土地の経済を映す鏡だ。東邦銀行を見れば、浜通り・中通り・会津という三つの顔を持つ福島県の姿が浮かぶ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。福島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、福島県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
当期純利益=東邦銀行2025年3月期決算短信(連結)、福島民友新聞報道、各種公開情報。
沿革(1941年郡山商業・会津・白河瀬谷の三行合併・一県一行主義・1946年福島市移転)=東邦銀行公開情報、各種公開情報。
福島県の地域(浜通り・中通り・会津)・産業に関する記述=各種公開情報。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ