大垣共立銀行——「脱・銀行」を掲げる地銀は何に貸すか
預貸率78.5%、預金5.7兆円、中小残高3.4兆円。大垣市に本店を置く大垣共立銀行。「脱・銀行」を掲げ全国初のサービスを次々と打ち出すOKBが、岐阜の地で貸す姿を読みます。
岐阜県大垣市に本店を置く大垣共立銀行は、「OKB」の愛称で知られる地方銀行です。預金5兆7,232億円、貸出金4兆4,947億円、店舗155。2015年から岐阜県の指定金融機関——公金を扱う銀行——を受託しています。岐阜県の地銀としては、本紀行で取り上げた十六銀行と並ぶ二大地銀の一角です。
本拠地の大垣は、岐阜県西部・西濃地方の中心都市です。「水の都」と呼ばれる豊かな地下水に恵まれ、繊維・化学・食品などの製造業が根を張る土地。岐阜県全体としても、自動車・航空機部品から美濃焼・刃物といった地場産業まで、ものづくりの集積地です。ただ、大垣共立銀行を語るうえで欠かせないのは、土地柄以上に、その独特な経営姿勢です。これが、数字を読む鍵になります。
大垣共立銀行は、1896年(明治29年)に設立されました。初代頭取は旧大垣藩家老の家系の戸田鋭之助。120年を超える歴史を持つ地銀です。しかしこの銀行が全国に知られるのは、その歴史よりも「脱・銀行」を掲げる革新的な経営によってです。ドライブスルー専用店舗、年中無休で窓口営業する「エブリデープラザ」、キャッシュカードや通帳がなくても手のひらだけで取引できる手のひら認証ATM、飛騨地区を巡回する移動店舗、女性行員ユニット「OKB45」——銀行の常識にとらわれず、全国初・独自のサービスを次々と打ち出してきました。数字の面で目を引くのは、預貸率78.5%という高さです。
まず、数字を並べる
大垣共立銀行の預金は5兆7,232億円、貸出金は4兆4,947億円、預貸率78.5%。自己資本比率は9.31%、不良債権比率は1.28%。中小企業等向けの貸出残高は3兆3,603億円にのぼります。
| 預金 | 5兆7,232億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 4兆4,947億円 |
| 預貸率 | 78.5% |
| 自己資本比率 | 9.31% |
| 不良債権比率 | 1.28% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 33,603億円 |
| 店舗 | 155店 |
預貸率78.5%・不良債権1.28%。「脱・銀行」を掲げる地銀が貸す数字。
78.5%を、「脱・銀行」の姿勢から読む
預貸率78.5%は、地方銀行のなかでも高い水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。ものづくりの集積地・岐阜で、しっかり資金を流していることの表れと読めます。
大垣共立銀行が貸す相手は、岐阜県内を中心とする事業者と個人です。西濃の繊維・化学・食品の製造業、県内の中小企業、隣接する愛知県への進出企業、そして手厚い個人向けサービスを背景にした住宅ローンなどが、その融資先に含まれます。中小企業等向けの貸出残高3兆3,603億円が、貸出金の大半を占めることが、地域の中小に深く貸し込んでいることを示しています。注目すべきは、「脱・銀行」を掲げる顧客本位のサービスが、単なる話題づくりではなく、顧客との接点を増やし、取引基盤を広げる戦略として機能している点です。年中無休店舗や移動店舗、手のひら認証といった利便性は、顧客を引き寄せ、預金と貸出の両面で取引を厚くする。預貸率78.5%という高さは、その独自戦略が地域でしっかり貸す力につながっていることの表れと読めます。
不良債権比率1.28%は、地銀として低めに抑えられた水準です。岐阜・愛知の多様な業種に貸し先が分散していること、そして長年の地域密着にもとづく目利きの表れと読めます。自己資本比率9.31%は地銀として標準的な水準で、よく貸しながらもバランスを保つ経営がうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、「脱・銀行」という独自の経営姿勢と、ものづくりの岐阜という土地を抜きに、この数字は読めません。
同じ岐阜の地銀と並べてみる
本紀行には、同じ岐阜県の十六銀行も登場しています。十六銀行は明治のナンバー銀行を源流とし、ナンバー銀行で日本最古という由緒を持つ、岐阜を代表する地銀です。歴史と伝統を重んじる十六銀行(預貸率79.0%)と、「脱・銀行」で革新を追う大垣共立銀行(預貸率78.5%)とは、同じ岐阜のものづくり地帯を地盤に、ほぼ同じ預貸率で貸しながら、対照的な個性で県内の二大地銀を分け合っていることになります。伝統と革新——両者を並べると、同じ土地で競い合う二つの地銀の違いが見えてきます。岐阜のもう一方の雄の姿は、十六銀行の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
岐阜の地銀は、県内の中小事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。とりわけ大垣共立銀行は、顧客本位のサービスで知られ、利便性の高さに定評があります。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、選んだ姿勢を映す
預貸率78.5%という高さは、ものづくりの岐阜に根ざし、「脱・銀行」という独自の姿勢で顧客との接点を広げてきた地銀の姿を映しています。伝統を守る地銀もあれば、大垣共立銀行のように革新で活路を開く地銀もある。数字は、その金融機関がどんな姿勢で地域と向き合ってきたかを語ります。大垣共立銀行の数字は、常識にとらわれず走り続ける「OKB」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と姿勢の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岐阜県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岐阜県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
大垣共立銀行の沿革(1896年設立、初代頭取は戸田鋭之助、本店は大垣市、通称OKB、2015年から岐阜県の指定金融機関)、「脱・銀行」を掲げるマス・リテール戦略と全国初・独自のサービス(ドライブスルー専用店舗、年中無休のエブリデープラザ、手のひら認証ATM、移動店舗、OKB45等)に関する記述=大垣共立銀行および各種報道・公開情報にもとづく。
大垣市・岐阜県の地理と産業(水の都・西濃地方、繊維・化学・食品、ものづくりの集積)に関する記述=各種公開情報。
十六銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。