¥Today ニホン銀行紀行

高崎信用金庫——だるまとからっ風のまちで、信金は何に貸すか

預貸率40.6%、不良債権比率4.35%。高崎市に本店を置く高崎信用金庫。張り子だるま全国シェア8割の産地であり、交通の要衝でもある上州・高崎に根ざす信金の数字を、土地の産業から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 群馬県

群馬県高崎市に本店を置く高崎信用金庫は、地元で「たかしん」と呼ばれる信用金庫です。預金5,261億円、貸出金2,138億円、店舗29。1914年に有限責任高崎信用組合として設立され、100年を超える歴史を持つ、高崎を代表する信用金庫です。

本店のある高崎市は、二つの顔を持つまちです。ひとつは、伝統工芸のまち。高崎の豊岡・八幡地区は、張り子だるまの一大産地で、全国の張り子だるまの生産量の約8割を占めます。「高崎だるま」は縁起物として全国に知られ、群馬の冬に吹く乾いた「からっ風」が、紙を貼り色を塗るだるま作りに適していたことから発展しました。もうひとつは、交通の要衝という顔。新幹線と在来線、高速道路が交わる高崎は、古くから人とモノが行き交う上州の商都でもあります。この、伝統工芸と交通の要衝という土地柄が、高崎信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の数字で目を引くのは、預貸率40.6%という控えめさと、不良債権比率4.35%というやや高めの数字の組み合わせです。集めた預金の4割ほどを貸しながら、焦げ付きはやや高い。この二つを、上州・高崎という土地から読みます。

まず、数字を並べる

高崎信用金庫の預金は5,261億円、貸出金は2,138億円、預貸率40.6%。自己資本比率は11.42%、不良債権比率は4.35%。中小企業等向けの貸出先は1万3,756件にのぼります。

高崎信用金庫(令和7年3月末)
預金5,261億円
貸出金2,138億円
預貸率40.6%
自己資本比率11.42%
不良債権比率4.35%
中小企業等向け貸出先13,756件
店舗29店

100年を超える歴史を持つ、だるまのまちの信金。その数字を土地から読む。

40.6%と4.35%を、上州・高崎から読む

預貸率40.6%という控えめさと、不良債権比率4.35%というやや高めの数字。この組み合わせを、高崎という土地の産業から読みます。

高崎信用金庫が貸す相手の多くは、高崎を中心とする地元の中小事業者です。そのなかには、だるまをはじめとする伝統工芸や地場の製造業、交通の要衝を生かした卸売・物流、そして商都・高崎の小売・サービス業が含まれると考えられます。伝統工芸や地方の小売業は、需要構造の変化や担い手の高齢化といった課題を抱えやすい業種です。そうした事業者に長く貸し続けてきたことが、不良債権比率4.35%というやや高めの水準の背景にあると読めます。一方、預貸率が40.6%と控えめなのは、地方都市の信金に共通する事情です。人口減少が進むなかで、貸出を大きく伸ばせる優良な借り手は限られ、地方銀行やメガバンクとの競争もある。集めた預金のうち貸出に回しきれない分は、有価証券などの運用に向かいます。

もっとも、高崎は新幹線と高速道路が交わる交通の要衝として、物流や商業の集積が続く、群馬県内でも比較的活気のあるまちです。だるまに象徴される伝統と、交通の利便性に支えられた商業——その両方が、この信金の地盤を形づくっています。これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、だるまとからっ風の上州という土地を抜きに、高崎信用金庫の数字は読めません。

高崎信用金庫が示すのは、伝統と交通が交わるまちの信金の姿です。だるまの産地という伝統と、新幹線が交わる交通の要衝という活気。その両方を地盤に、地元の中小事業者に貸してきた。控えめな預貸率とやや高めの焦げ付きは、上州・高崎の今を映していると読めます。

同じ群馬の、山あいの信金と並べてみる

同じ群馬県には、県北の山あいを地盤とする利根郡信用金庫があります。利根郡信用金庫は、果樹と観光の郡で、店舗16・不良債権比率6.23%という、最小規模で守りに徹する数字を持っていました。商都・高崎に立つ高崎信用金庫(預貸率40.6%・店舗29)とは、同じ群馬でも規模も地盤も異なります。交通の要衝の商都に立つ信金と、山あいの観光地に立つ信金。同じ県のなかにも、土地ごとに違う信金の姿がある。両者を並べると、群馬という県の地形と経済の幅が見えてきます。山あいの信金の姿は、利根郡信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

高崎信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。高崎信用金庫にとって、その「地元」とは、だるまの伝統と交通の要衝という二つの顔を持つ、高崎を中心とした上州の地域経済です。100年を超えて地元に根ざしてきた歩みが、この土地の中小事業者を支える信金の姿を形づくっています。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、伝統工芸の担い手や、商都・高崎で商いを営む中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。一方で、やや高めの不良債権比率は、地域の一部の事業者が課題を抱えていることの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、土地の二つの顔を映す

預貸率40.6%という控えめさと、不良債権比率4.35%というやや高めの数字は、だるまの伝統と交通の要衝という二つの顔を持つ高崎に根ざし、地元の中小事業者を支えてきた信金の姿を映しています。山あいで守りに徹する信金もあれば、商都で地域経済の体温を引き受ける信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。高崎信用金庫の数字は、上州の商都の、いまの記録です。

同じ群馬県を代表する地銀として、群馬銀行(預貸率80.9%・預金8.5兆円)も本紀行に登場しています。県全域を相手にし輸送用機器の製造業によく貸す群馬銀行(預貸率80.9%)と、商都・高崎の中小事業者に控えめに貸すこの高崎信用金庫(預貸率40.6%)とを並べると、同じ群馬の事業者を相手にしながら、県を相手にする地銀と地区に根ざす信金とで、貸す規模も姿勢も異なることが見えてきます。北関東の雄たる地銀の姿は、群馬銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ群馬県には、赤城山を望む地に根ざすあかぎ信用組合があります。商都・高崎で控えめに貸す高崎信用金庫(預貸率40.6%)と、県内に広く積極的に貸すあかぎ信用組合(70.8%)とを並べると、同じ群馬県でも、信金と信組という種別や地盤によって貸す姿がこれだけ異なることが見えてきます。二つの信組が一つになった信組の姿は、あかぎ信用組合の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地の産業と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。群馬県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、群馬県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
高崎信用金庫の沿革(1914年に有限責任高崎信用組合として設立)に関する記述=高崎信用金庫および各種公開情報にもとづく。
高崎だるま(豊岡・八幡地区が張り子だるまの全国シェア約8割、からっ風との関係)、高崎の交通の要衝・商都としての性格に関する記述=各種公開情報。
利根郡信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ