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もみじ銀行——山口資本の傘下に入った広島の第二地銀は、何に貸すか

預貸率78.8%、店舗103。広島市に本店を置くもみじ銀行。無尽を源流とする二つの第二地銀が合併して生まれ、いまは山口フィナンシャルグループの一員となった広島の第二地方銀行。県境を越えた再編の物語と数字を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 広島県

広島市中区、広島の中心部に、もみじ銀行の本店はある。広島県を主たる地盤とする第二地方銀行で、県内には中国地方の雄と呼ばれる広島銀行があり、もみじ銀行はそれに次ぐ立場で、広島の中小事業者に寄り添ってきた。

広島県は、自動車・造船・鉄鋼といった重厚なものづくりが集まる、中国地方最大の経済圏だ。マツダの企業城下町としても知られ、瀬戸内の沿岸には工場が連なる。その活気ある産業の土地で、もみじ銀行は、大手の手の届きにくい中小の事業者に貸す役割を担ってきた。

この銀行を読むうえで興味深いのが、その独特の行名と、いまの所属だ。「もみじ」という愛らしい名は、広島・宮島の紅葉や名産のもみじ饅頭を連想させるが、実はそれだけではない。そして広島の銀行でありながら、いまこの銀行は、山口県を本拠とする金融グループの一員になっている。県境を越えた再編のなかにあるその姿を、数字とともに読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。もみじ銀行の預金は3兆2,383億円、貸出金は2兆5,516億円。預貸率は78.8%で、預金の8割近くを貸出に回している。自己資本比率は10.49%、不良債権比率は2.39%。店舗数は103、中小企業等への貸出残高は1兆6,676億円にのぼる。

第二地方銀行としては、屈指の規模を誇る。預貸率78.8%は、県トップの広島銀行(85.8%)には及ばないものの、よく貸す部類に入る。中国地方最大の経済圏という土地で、中小に深く貸してきた姿勢が、この数字に表れている。一方、不良債権比率2.39%は、県トップの広島銀行(1.02%)より高め。中小に深く関わる第二地銀ならではの数字だと読める。

広島県内の二つの普通銀行(令和7年3月末)
 もみじ銀行広島銀行
種別第二地方銀行地方銀行
預金32,383億円93,059億円
貸出金25,516億円79,842億円
預貸率78.8%85.8%
不良債権比率2.39%1.02%

県を代表するのは中国地方の雄広島銀行。預金量で3倍近い差がある。もみじ銀行は第二地銀として屈指の規模を持ちながら、いまは山口県の金融グループの一員となっている。県境を越えた再編が、この銀行の立ち位置を形づくっている。

無尽から始まり、二つの第二地銀が一つに

もみじ銀行の源流は、戦前の無尽にさかのぼる。無尽とは、人々が金を出し合い、くじや入札で順番に融通し合う、庶民の相互金融のしくみだ。1941年(昭和16年)、戦時下で広島の複数の無尽会社が統合して広島無尽が生まれ、これがやがて広島相互銀行を経て、1989年に広島総合銀行となった。

一方、呉の相互銀行を源流とするせとうち銀行という、もう一つの第二地銀があった。2001年、この広島総合銀行とせとうち銀行が、株式移転によって共同の持株会社「もみじホールディングス」を作り、経営を一つにした。そして2004年、二つの銀行が合併し、「もみじ銀行」が誕生した。第二地方銀行どうしが、持株会社を作ってから合併に進んだのは、これが初めてのことだった。

その「もみじ」という名には、洒落た意味が込められている。広島・宮島の紅葉やもみじ饅頭を思わせる名であると同時に、「もっと みじかに!! じもと(地元)の銀行」というスローガンの頭文字でもある。地元にもっと近い銀行でありたい——そんな願いが、親しみやすい名に重ねられている。岡山のトマト銀行と並んで、中国・山陽地方には、こうした遊び心のある行名の銀行がある。

山口の傘の下へ——県境を越えた再編

もみじ銀行のいまを語るうえで欠かせないのが、山口フィナンシャルグループ(YMFG)への加入だ。バブル崩壊のあと、前身の広島総合銀行が受けた公的資金が経営の重荷となっていた。その状況のなかで、2006年、もみじ銀行は、山口県下関市に本拠を置く山口フィナンシャルグループの傘下に入った。

山口フィナンシャルグループは、山口銀行を中核とする金融グループだ。もみじ銀行がその一員となったことで、広島の第二地銀が、県境を越えて山口の資本のもとで経営されるという形が生まれた。広島で集めた預金を、広島の中小に貸す——その地元の役割を保ちながら、経営基盤はより大きなグループに支えられる。一つの県だけでは抱えきれない課題を、県境を越えたグループの力で乗り越える。もみじ銀行の歩みは、地方銀行の再編が県の枠を超えて進んできたことを、一つの形で示している。

78.8%を、グループに支えられる第二地銀から読む

もみじ銀行の預貸率78.8%は、第二地方銀行としてよく貸す部類に入る。中国地方最大の経済圏・広島で、集めた預金の8割近くを貸出に回している。この数字の背景には、自動車や造船といったものづくりの集まる、広島という豊かな産業の土地がある。大手の広島銀行が大口を握るなかで、もみじ銀行は中小の事業者に深く関わり、貸すことで存在感を保ってきた。不良債権比率2.39%というやや高めの数字も、中小に深く貸してきたことの裏返しだと読める。

そして、その経営は、いま山口フィナンシャルグループという、より大きな器に支えられている。地元・広島に貸すという役割を保ちながら、経営の基盤は県境を越えたグループに委ねる——この形は、規模を求めて再編が進む地方銀行の、一つの生き方を示している。北の秋田で名を消す統合があり、岩手で統合を拒んだ銀行があるように、広島には、県境を越えたグループの一員として地元に貸し続ける銀行がある。それぞれの土地に、それぞれの再編の形がある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

広島の経済とともに

もみじ銀行の数字は、ものづくりの集まる広島という土地と、県境を越えたグループに支えられる第二地銀の歩みの、両方を映している。庶民の無尽から始まり、二つの第二地銀が一つになり、「地元にもっと近く」という願いを名に込め、いまは山口の資本のもとで広島の中小に貸し続けている。規模を求める再編の波のなかで、地元への密着と、グループの支えとを両立させる——その姿が、78.8%という数字に表れている。

銀行の数字は、その土地の経済と、その銀行が選んだ道を映す鏡だ。もみじ銀行を見れば、ものづくりの広島と、県境を越えたグループの一員として地元に貸す第二地銀の姿が浮かぶ。同じ広島県の県トップの姿は、広島銀行の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。広島県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、広島県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。広島銀行の数値も同出典。
沿革(前身が戦前の無尽〔1941年の戦時統合による広島無尽〕を源流とし広島相互銀行を経て1989年に広島総合銀行となったこと、呉の相互銀行を源流とするせとうち銀行とともに2001年に持株会社もみじホールディングスを設立し2004年に合併してもみじ銀行が誕生したこと〔第二地銀どうしの持株会社設立後の合併は初〕、行名「もみじ」が宮島の紅葉やもみじ饅頭に加え「もっと みじかに!! じもとの銀行」のスローガンに由来すること、2006年に山口フィナンシャルグループの傘下に入ったこと、バブル崩壊時に旧広島総合銀行が受けた公的資金が経営の重荷となっていたこと)に関する記述=もみじ銀行および各種公開情報にもとづく。
広島県の経済(自動車・造船・鉄鋼などのものづくり、中国地方最大の経済圏)に関する記述=各種公開情報。

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