帯広信用金庫——農業王国・十勝で、おびしんは何に貸すか
預貸率41.8%、預金8,635億円、自己資本比率15.40%、不良債権比率3.37%。北海道帯広市に本店を置く帯広信用金庫。日本最大の畑作・酪農地帯・十勝に根ざす「おびしん」が、何に貸すのか。同じ北海道の金融機関と比べながら、その数字と歴史を読む。
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北海道の帯広市に本店を置く帯広信用金庫は、預金8,635億円を持つ信用金庫だ。店舗32。地元では「おびしん」と呼ばれる。営業のほとんどを、北海道東部の十勝に集中させている。十勝以外への店舗進出にはきわめて慎重で、十勝という一つの圏域に根を張ることを選んできた信用金庫だ。
本拠の十勝は、北海道のなかでも特別な土地だ。広大な十勝平野に、日本最大級の畑作・酪農地帯が広がる。小麦、ビート(てんさい)、豆類、じゃがいも、そして牛乳・乳製品——「農業王国」と呼ばれる、日本有数の食料生産地である。帯広はその中心都市として、農産物の集積・加工・流通の拠点をなす。帯広信用金庫は、こうした十勝の農業と、それを支える地域の商工業に根ざし、地域の事業者と住民を支えてきた。とりわけ、農業協同組合(農協)との連携が深いことで知られ、ビジネスマッチング商談会に農協が参加することは、道外の関係者を驚かせるという。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率41.8%という水準と、自己資本比率15.40%という厚さだ。預金の4割強を貸出に回し、厚い自己資本を積んでいる。なぜ、農業王国の信金は、こうした数字になるのか。同じ北海道を地盤とする金融機関とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。帯広信用金庫の預金は8,635億円、貸出金は3,606億円。預貸率は41.8%で、預金の4割強を貸出に回している。自己資本比率は15.40%、不良債権比率は3.37%。店舗数は32、中小企業等への貸出先は2万先を超える。
同じ北海道を地盤とする金融機関と比べてみる。道北の旭川信用金庫(預貸率34.8%・自己資本比率17.82%)と並べると、北海道の大型信金は、預金は集まるが貸出を抑えめにして厚い自己資本を積む傾向がある。帯広信用金庫の預貸率41.8%もその一つだ。一方、道内全域に広く貸す北海道銀行(預貸率75.1%)のような地銀と比べると、信金の預貸率の低さが際立つ。広大な農業地帯では、農業金融の多くを農協が担い、また預金は集まるが企業向けの貸出先は限られる。帯広信用金庫は、そのなかで地域の商工業に貸し、残りを運用に向けながら厚い資本を保っていると読める。
| 帯広信用金庫 | 旭川信用金庫 | 北海道銀行 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 帯広市 | 旭川市 | 札幌市 |
| 業態 | 信用金庫 | 信用金庫 | 地方銀行 |
| 預金 | 8,635億円 | 1兆124億円 | — |
| 預貸率 | 41.8% | 34.8% | 75.1% |
| 自己資本比率 | 15.40% | 17.82% | — |
| 不良債権比率 | 3.37% | 3.09% | — |
北海道の大型信金は、預金は集まるが貸出を抑えめにして厚い自己資本を積む。帯広信用金庫もその一つだ。
農業王国とともに——帯広信用金庫の歩み
帯広信用金庫は、1916年(大正5年)、地元経済人によって無限責任帯広信用組合として設立された。「地域の産業と社会発展のために地元金融機関が不可欠」という考えのもと、十勝の開拓と発展とともに歩んできた信用金庫だ。創業から100年を超え、「地域の皆さまとともに、地域社会の発展に貢献する」を理念に、地域の資金を地域で循環させることを本業としてきた。
この信金にとって、大きな転機は1997年の北海道拓殖銀行の破綻だった。北海道のメインバンクであり、十勝でも大きな存在感を持っていた拓銀の破綻によって、地域金融機関としての帯広信用金庫の役割は一段と重くなった。1998年には、それまで拓銀を指定金融機関としていた帯広市から、指定金融機関として指名された。地域の資金循環の責任を一身に負う立場となったのである。近年は、農協との連携に加え、人材マッチングや事業承継、創業支援といった「取引先本業支援」にも力を入れ、人手不足に悩む地域事業者を支えている。
41.8%を、十勝から読む
帯広信用金庫の預貸率41.8%という水準は、農業王国・十勝という地盤の特性の表れだと読める。広大な畑作・酪農地帯では、農業金融の多くを農協が担い、また十勝という一つの圏域は、預金は集まるが企業向けの貸出先には限りがある。帯広信用金庫は、十勝に根を張って地域の商工業に貸しつつ、集めた預金の残りは有価証券などの運用に向けている。それが自己資本比率15.40%という厚みも支えている。
不良債権比率3.37%という水準は、地域の事業者の浮き沈みを引き受けながらも、焦げ付きを一定に抑えてきたことを映す。農業は天候や市況に左右されるが、農協との連携と、十勝という土地への深い理解が、その振れを和らげていると読める。農業王国・十勝に根を張り、地域の商工業に貸し、残りを運用に向けながら厚い資本を保つ——それが、帯広信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
北海道の経済とともに
帯広信用金庫の数字は、農業王国・十勝という土地と、そこに根を張る信金の歩みの、両方を映している。預金の4割強を地域に貸し、残りを運用に向けながら、十勝の農業とそれを支える商工業を支えてきた。日本有数の食料生産地・十勝の経済が、41.8%という預貸率と、15.40%という厚い自己資本に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。帯広信用金庫を見れば、農業王国・十勝の経済と、そこに根を張る信金の姿が浮かぶ。北海道の他の金融機関は、道北の旭川信用金庫、流氷の街の網走信用金庫、道都の北海道銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。
預貸率41.8%の帯広信用金庫は、預金を運用にもあてる信用金庫です。こうした金融機関とまず築きたいのは、預金や取引の実績。口座と信用を育てていくための基礎を、用語とあわせてまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。旭川信用金庫の数値も同出典。北海道銀行の預貸率は各種公開情報にもとづく。
沿革・地域(帯広市に本店を置き、十勝に営業を集中させる信用金庫であること、1916年に無限責任帯広信用組合として設立され創業100年を超えること、1997年の北海道拓殖銀行の破綻を受けて1998年に帯広市の指定金融機関として指名されたこと、農業協同組合との連携が深く、人材マッチング・事業承継・創業支援などの取引先本業支援に取り組んでいること、十勝が小麦・ビート・豆類・じゃがいも・酪農などの日本最大級の畑作・酪農地帯で「農業王国」と呼ばれること)に関する記述=帯広信用金庫および各種公開情報にもとづく。
十勝・北海道の地理・経済(十勝、帯広、十勝平野、畑作、酪農、ビート、農業)に関する記述=各種公開情報。
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