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旭川信用金庫——道北最大の都市の信金は、なぜ預金の3割しか貸さないのか

預貸率34.8%、預金1兆124億円、自己資本比率17.82%。旭川市に本店を置く旭川信用金庫。道北最大の都市に根ざす大型信金「あさひしん」が、なぜ預金の3割ほどしか貸さないのか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 北海道

北海道のほぼ中央、旭川市に本店を置く旭川信用金庫は、地元で「あさひしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金1兆124億円、店舗40。1兆円を超える預金を持つ大型信金である。旭川市を中心に、上川地方を地盤としている。

本拠の旭川は、人口約32万を抱える道北最大の都市だ。札幌に次ぐ北海道第二の都市圏として、上川地方の行政・商業・医療の中心を担う。旭山動物園で全国に知られ、家具づくり(旭川家具)や食品加工などの産業も持つ。周囲には、米どころとして知られる上川盆地の広大な農地が広がり、農業も地域経済の柱だ。都市の商業・サービス業と、周辺の農業——この二つが、旭川の経済を支えている。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率34.8%という低さだ。1兆円を超える預金を集めながら、貸出はその3割ほど。道北最大の都市を地盤としながら、なぜこれほど貸さないのか。同じ北海道の大型信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。旭川信用金庫の預金は1兆124億円、貸出金は3,523億円。預貸率は34.8%で、預金の3割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は17.82%と厚く、不良債権比率は3.09%。店舗数は40、中小企業等への貸出残高は2,963億円。

1兆円を超える預金は、信用金庫として全国でも有数の規模だ。同じ北海道で、札幌に本店を置く道内最大級の北海道信用金庫(預金1兆1,705億円・預貸率55.4%)と比べると、規模は近いが、旭川信用金庫の預貸率34.8%は、北海道信用金庫(55.4%)を大きく下回る。同じ北海道の大型信金でも、札幌という大都市を地盤とする北海道信用金庫は5割超を貸すのに対し、旭川信用金庫は3割ほどにとどまる。この差は、地盤とする地域の経済規模と資金需要の違いを映していると読める。旭川は道北最大の都市だが、札幌ほどの旺盛な貸出需要はなく、人口減少も進む。集めた預金を貸し切れず、低い預貸率にとどまる構図だ。

北海道の大型信用金庫(令和7年3月末)
 旭川信用金庫北海道信用金庫
本店旭川市(道北)札幌市
預金10,124億円11,705億円
預貸率34.8%55.4%
自己資本比率17.82%18.3%
不良債権比率3.09%1.47%

ともに1兆円超の預金を持つ北海道の大型信金。規模は近いが、札幌の北海道信用金庫が5割超を貸すのに対し、旭川信用金庫は3割ほど。地盤とする都市の経済規模と資金需要の違いが、預貸率の差に表れている。

道北の中心都市とともに——旭川信用金庫の歩み

旭川信用金庫は、道北最大の都市・旭川の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。商業・サービス業の集まる都市の中心と、周辺の農業地帯——こうした地域の事業者や個人が預金を預け、必要なときに資金を借りる。旭川信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、1兆円を超える規模へと成長してきた。

旭川という土地は、道北の中心として、人口と資産が集まる。だが、札幌のような大都市圏ほどの旺盛な事業投資や資金需要があるわけではない。人口減少も進み、貸出を大きく伸ばす機会は限られる。豊かに預金は集まるが、それを貸し切るだけの需要が地域にない——この構図が、旭川信用金庫の経営の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、有価証券の運用などに向かう。

34.8%を、道北の信金から読む

旭川信用金庫の預貸率34.8%という低さは、道北の中心都市で預金を集める力は強いが、それを貸す先が地域に限られていることの表れだと読める。商業・サービス業や農業を営む事業者の資金需要には、おのずと規模がある。人口減少で、住宅ローンや個人向けの貸出も伸びにくい。その結果、1兆円を超える預金の多くは貸出に回りきらず、預貸率は3割台にとどまる。

自己資本比率17.82%という厚さは、人口減少が進む地域で、長く地域とともに在り続けるための備えだと読める。不良債権比率3.09%という水準も、大型信金として標準的だ。豊富な預金を背景に、堅実に地元へ貸しながら、厚い資本で守りを固める——それが、旭川信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。これは、貸出先が地域に乏しく預貸率が低くとどまる、地方都市の大型信金に共通して見られる姿だ。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

旭川の経済とともに

旭川信用金庫の数字は、道北最大の都市・旭川という土地と、そこで豊富な預金を集めながら堅実に貸す大型信金の歩みの、両方を映している。1兆円を超える預金を持ちながら、預金の3割ほどを地元に貸し、厚い自己資本で守りを固めてきた。道北の中心都市で預金を集める力と、限られた貸出先という地方の現実が、34.8%という低い預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。旭川信用金庫を見れば、道北の中心都市・旭川の経済と、そこで堅実に貸す大型信金の姿が浮かぶ。北海道の他の信用金庫は、オホーツクの遠軽信用金庫、ニシンの港町の留萌信用金庫、最北の稚内信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、地域に貸出先が限られている土地では、預金が集まっても預貸率が低くとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。北海道信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(旭川市に本店を置き、上川地方を地盤とする信用金庫であること、旭川が人口約32万の道北最大の都市であること、旭山動物園・旭川家具で知られ、上川盆地が米どころであること)に関する記述=旭川信用金庫および各種公開情報にもとづく。
旭川・道北の地理・経済(道北、上川地方、旭川市、上川盆地、農業、家具・食品産業)に関する記述=各種公開情報。

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