¥Today ニホン銀行紀行

札幌中央信用組合——札幌の都市で、ちゅうしんは何に貸すか

預貸率71.5%、自己資本比率9.82%、不良債権比率1.59%。札幌市に本店を置く札幌中央信用組合。札幌繊維信用組合を源流とし、道都の中小事業者にしっかり貸す信組の数字を読みます。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 北海道

北海道札幌市に本店を置く札幌中央信用組合は、預金1,090億円、貸出金779億円、店舗14。「ちゅうしん」の愛称で、札幌市を中心に、小樽市や石狩管内を地盤とする信用組合です。

地盤とする札幌は、人口約200万を抱える北海道最大の都市であり、北日本でも有数の経済圏です。道庁所在地として行政・商業・サービス業が集積し、無数の中小事業者がひしめく大都市です。一次産業が基幹の北海道にあって、札幌は商いとサービスのまちという性格が際立ちます。この、中小事業者が密集する大都市という土地柄が、札幌中央信用組合の数字を読む鍵になります。

この信用組合は、1953年に「札幌繊維信用組合」として設立されました。繊維・衣料の業界の相互扶助組織として出発し、のちに地域に開かれた信用組合へと歩みを広げてきました。数字の面で目を引くのは、預貸率71.5%という高さと、不良債権比率1.59%という低さの組み合わせです。

まず、数字を並べる

札幌中央信用組合の預金は1,090億円、貸出金は779億円、預貸率71.5%。自己資本比率は9.82%、不良債権比率は1.59%。中小企業等向けの貸出先は3,802件です。

札幌中央信用組合(令和7年3月末)
預金1,090億円
貸出金779億円
預貸率71.5%
自己資本比率9.82%
不良債権比率1.59%
中小企業等向け貸出先3,802件
店舗14店

預貸率71.5%・不良債権1.59%。道都の中小に貸す信組の数字を読む。

71.5%と1.59%を、道都から読む

預貸率71.5%は、本紀行で見てきた信用組合・信用金庫のなかでも高い部類です。預金として集めた資金の七割超を貸出に回しており、地元の中小事業者にしっかり資金を供給していることがうかがえます。同時に、不良債権比率1.59%という低さは、その貸出が焦げ付きの少ない堅実なものであることを示します。よく貸し、かつ傷が少ない——この組み合わせは、地方の信金・信組によく見られる「預金は集まるが貸し先が限られる」という構図とは対照的です。

この違いの背景にあるのが、札幌という大都市の地盤です。人口200万の経済圏には、商業・サービス業を中心に、資金を必要とする中小事業者が数多く集まっています。商店、飲食、サービス、建設、卸・小売といった都市型の事業者が、その融資先に含まれると考えられます。貸し先に事欠かない大都市だからこそ、集めた預金を高い割合で貸出に回せている、と読めます。預貸率71.5%は、その都市の厚みの表れです。

もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、中小事業者がひしめく札幌という大都市を抜きに、この信組の数字は読めません。自己資本比率9.82%は信用組合として手堅い水準で、低い不良債権とあわせれば、よく貸しながらも質を保ってきた歩みがうかがえます。

札幌中央信用組合が示すのは、大都市の中小事業者にしっかり貸す、都市型信組の姿です。貸し先に事欠かない道都・札幌で、集めた預金の七割超を地元に回し、かつ焦げ付きを抑える。高い預貸率と低い不良債権は、商いのまちに根ざす信組の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

札幌中央信用組合が地元に貸す信組であることの背景には、信用組合という制度があります。信用組合が融資できる相手は原則として「組合員」に限られます。組合員になれるのは、中小企業等協同組合法などにより、その信用組合の地区内に住所や事業所がある中小事業者・勤労者などで、員外への貸出には制限があります。事業者には規模の制限もあり、大企業は組合員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。札幌中央信用組合にとって、その「地元」とは、中小事業者が密集する道都・札幌の経済です。組合員になれる中小事業者の数が多い大都市だからこそ、貸し先に事欠かず、預貸率は高く保たれます。繊維業界の組合を源流としながら、地域に開かれた信組へと歩みを広げてきたことも、都市の多様な事業者に資金を届ける素地になっていると読めます。

同じ道の、金融機関と並べてみる

同じ北海道を代表する地銀として、北海道銀行(預貸率75.1%)も本紀行に登場しています。道全体を相手にする道銀(預貸率75.1%)と、札幌の中小に密着するこの札幌中央信用組合(預貸率71.5%)とは、規模も性格も異なりますが、ともに高い預貸率という点では近い数字を示します。大都市・札幌という地盤の厚みが、信組にも地銀に近い貸出の度合いをもたらしていると読めます。道全体を支える地銀の姿は、北海道銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ札幌圏には、北海道信用金庫もあります。預貸率55.4%の北海道信用金庫と、預貸率71.5%の札幌中央信用組合は、同じ大都市を地盤としながらも貸出の度合いが異なります。都市の信金と都市の信組、それぞれの姿は、北海道信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用組合は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、商いやサービスを営む札幌の小さな事業者にとって、組合員として付き合える信組の存在は心強いものです。高い預貸率は、しっかり貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率71.5%という高さと、不良債権比率1.59%という低さは、中小事業者がひしめく道都・札幌に根を張り、地元にしっかり貸してきた信組の姿を映しています。貸し先を探す地方の信組もあれば、大都市でよく貸す信組もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。札幌中央信用組合の数字は、商いのまち・札幌に根ざす「ちゅうしん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。北海道の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページもどうぞ。

札幌中央信用組合と融資・保証のはなし

札幌中央信用組合は、地元にしっかり貸す信用組合です。実際に借入れを考えるなら、土台になるのは事業の中身を伝える準備と、保証制度の理解。借りる側が知っておきたい融資・保証の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
札幌中央信用組合の沿革(1953年に札幌繊維信用組合として設立)、「ちゅうしん」の愛称、札幌市を中心に小樽市・石狩管内を地区とすることに関する記述=札幌中央信用組合公開情報・各種公開情報にもとづく。
札幌市の人口・商業・サービス業の集積に関する記述=各種公開情報。
北海道銀行・北海道信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用組合の組合員・員外貸出に関する記述=中小企業等協同組合法ほか関係法令にもとづく一般的な整理。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ