苫小牧信用金庫——製紙と港のまちで、信金はなぜ厚い自己資本を持つのか
預貸率50.1%、預金5,179億円、自己資本比率20.49%、不良債権比率3.24%。苫小牧市に本店を置く苫小牧信用金庫。製紙と港湾工業のまち・苫小牧に根ざし、厚い自己資本を積む信金が、何に貸すのか。同じ北海道の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
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北海道の苫小牧市に本店を置く苫小牧信用金庫は、預金5,179億円を持つ信用金庫だ。店舗29。「とましん」の愛称で知られ、苫小牧市を中心に、胆振(いぶり)地方を地盤としている。
本拠の苫小牧市は、製紙と港湾工業のまちだ。古くから製紙業の企業城下町として知られ、紙のまちとして発展した。掘り込み式の人工港・苫小牧港は、国内有数の貨物取扱量を誇り、北海道の海の玄関口の一つとなっている。自動車関連や石油備蓄基地も立地し、近年は周辺で大規模なデータセンターや半導体関連の構想も持ち上がる。太平洋に面した工業と物流のまち——苫小牧信用金庫は、こうした製紙と港のまち・苫小牧に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率20.49%という厚さだ。信用金庫の国内基準は4%。それを大きく超える20%台は、際立って手厚い。預貸率は50.1%で、預金の半分を貸出に回している。なぜ、製紙と港のまちの信金は、これほど厚い自己資本を積むのか。同じ北海道を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。苫小牧信用金庫の預金は5,179億円、貸出金は2,596億円。預貸率は50.1%で、預金のちょうど半分を貸出に回している。自己資本比率は20.49%、不良債権比率は3.24%。店舗数は29、中小企業等への貸出残高は1,918億円。
同じ北海道で、鉄のまち・室蘭の室蘭信用金庫(預貸率30.9%・自己資本比率27.68%)や、十勝の帯広信用金庫(預貸率41.8%・自己資本比率15.40%)と比べると、苫小牧信用金庫も同じく、厚い自己資本を併せ持つ。北海道の信金は、いずれも預金を集める力に対して貸出先が限られ、厚い資本を積む傾向がある。ただし、苫小牧信用金庫の預貸率50.1%は、室蘭(30.9%)や帯広(41.8%)より高く、製紙・港湾・自動車関連という工業の集積を映して、相対的によく貸している。工業のまちで、貸しつつ、厚い資本も積む——それが、この信金の数字の姿だ。
| 苫小牧信金 | 室蘭信用金庫 | 帯広信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 苫小牧市 | 室蘭市 | 帯広市 |
| 預金 | 5,179億円 | 3,533億円 | 8,635億円 |
| 預貸率 | 50.1% | 30.9% | 41.8% |
| 自己資本比率 | 20.49% | 27.68% | 15.40% |
| 不良債権比率 | 3.24% | 1.66% | 3.37% |
北海道の信金は、いずれも厚い自己資本を持つ。苫小牧信用金庫もその傾向にあるが、預貸率は工業都市の中で高めで、相対的によく貸している。
製紙と港のまちとともに——苫小牧信用金庫の歩み
苫小牧信用金庫は、胆振地方の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。製紙関連の下請け、港湾・物流の事業者、自動車関連の中小、地元の商店、そして工業のまちに住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、胆振地方に広く根ざす信金へと歩んできた。
苫小牧という土地は、信用金庫にとって、工業と物流の資金需要のある地盤だ。製紙の企業城下町として大企業の拠点があり、その周りに無数の中小・零細事業者が連なる。港湾・物流、自動車関連も広がる。地元の中小に密着し、会員との関係のもとで貸す——この信用金庫ならではの貸し方が、預貸率50.1%という水準を支えている。一方で、大企業そのものは大手銀行が主に資金を供給するため、信用金庫の貸出は中小に向かい、預金の半分は有価証券などの運用にも回る。その運用と利益の蓄積が、自己資本比率20.49%という厚みになって表れる。不良債権比率3.24%は、落ち着いた水準だ。
20.49%を、苫小牧から読む
苫小牧信用金庫の自己資本比率20.49%という厚さは、製紙と港のまちで、中小に貸しつつ、運用と利益の蓄積で資本を厚く積んできたことの表れだと読める。工業の集積する苫小牧は、信用金庫が貸す中小の層がある一方、大企業の大口需要は大手銀行が担う。苫小牧信用金庫は、その間にある中小に着実に貸し、残りを運用に向け、厚い自己資本を築いてきた。
預貸率50.1%という、工業都市の中では高めの貸出と、不良債権比率3.24%という落ち着いた焦げ付き、そして20.49%という厚い資本——この組み合わせは、工業のまちで、貸しながらも守りを固めてきた信金の姿を映している。攻めと守りのバランスを取る。それが、苫小牧信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
北海道の経済とともに
苫小牧信用金庫の数字は、製紙と港のまち・苫小牧という土地と、そこで中小に貸しつつ厚い資本を積む信金の歩みの、両方を映している。預金の半分を地元の会員に貸し、運用と利益の蓄積で資本を厚くしながら、苫小牧を中心とする胆振地方の中小・零細事業者を支えてきた。製紙・港湾・自動車関連の工業経済が、20.49%という厚い自己資本と50.1%という預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。苫小牧信用金庫を見れば、製紙と港のまちの経済と、そこで攻めと守りのバランスを取る信金の姿が浮かぶ。北海道の他の金融機関は、鉄のまちの室蘭信用金庫、十勝の帯広信用金庫、道都の北海道信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。北海道の他の金融機関と並べて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページへ。
苫小牧信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。預金を運用にもあてる堅実な経営でも、いざ借りるとなれば日頃の取引と信用が土台になります。口座と信用を育てる、融資・銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。室蘭信用金庫・帯広信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(苫小牧市に本店を置き、「とましん」の愛称で知られ、胆振地方を地盤とする信用金庫であること、合併を経て胆振地方に広く根ざす信金になったこと、苫小牧市が製紙業の企業城下町として発展した紙のまちであること、掘り込み式の人工港・苫小牧港が国内有数の貨物取扱量を誇る北海道の海の玄関口の一つであること、自動車関連や石油備蓄基地が立地し近年データセンターや半導体関連の構想が持ち上がること)に関する記述=苫小牧信用金庫および各種公開情報にもとづく。
苫小牧の地理・経済(苫小牧、製紙、紙のまち、苫小牧港、港湾、物流、自動車、太平洋、胆振)に関する記述=各種公開情報。
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