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但陽信用金庫——加古川の信金は、なぜ厚い資本で4割も貸さないのか

預貸率36.3%、預金1兆108億円、自己資本比率15.12%、不良債権比率1.74%。加古川市に本店を置く但陽信用金庫。播磨に根ざす信金が、なぜ厚い自己資本を持ち、預金の4割も貸さないのか。同じ兵庫県の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 兵庫県

兵庫県の加古川市に本店を置く但陽信用金庫は、預金1兆108億円を持つ信用金庫だ。店舗34。加古川市を中心に、播磨地域から神戸・阪神間までを地盤としている。預金1兆円を超える、兵庫県内でも大型の信金だ。

本拠の加古川市は、播磨平野の東部、加古川の下流域に開けた街だ。瀬戸内海に面し、製鉄をはじめとする臨海工業地帯を抱え、内陸には住宅地と農業地帯が広がる。神戸・阪神間にも近く、通勤圏としての性格も持つ。播磨の工業と、神戸圏のベッドタウン——こうした多様な顔を持つ加古川に、但陽信用金庫は根ざしてきた。

この信金の数字で目を引くのは、預貸率36.3%という低さと、自己資本比率15.12%という厚さ、そして不良債権比率1.74%という低さだ。1兆円を超える預金を集めながら、貸出はその4割にも満たない。なのに自己資本は厚く、焦げ付きは低い。なぜ、播磨の大型信金は、これほど貸さず、これほど堅実なのか。同じ兵庫県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。但陽信用金庫の預金は1兆108億円、貸出金は3,665億円。預貸率は36.3%で、預金の4割にも満たない貸出にとどまる。自己資本比率は15.12%と厚く、不良債権比率は1.74%と低い。店舗数は34、中小企業等への貸出残高は3,122億円。

同じ兵庫県で、姫路市を地盤とする兵庫信用金庫(預貸率43.9%・自己資本比率11.9%)と比べると、但陽信用金庫はより貸出を抑え、より厚い自己資本を持つ。但陽信用金庫の預貸率36.3%は兵庫信用金庫(43.9%)を下回り、自己資本比率15.12%は兵庫信用金庫(11.9%)を上回る。また、不良債権比率は但陽信用金庫(1.74%)が兵庫信用金庫(5.26%)を大きく下回り、焦げ付きが際立って低い。同じ播磨を地盤とする信金でも、但陽信用金庫は、貸出を堅実に絞り、厚い資本を積み、焦げ付きを低く抑える。これは、堅実経営を徹底し、貸出先を厳しく見極めてきたことの表れだと読める。

兵庫県の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 但陽信用金庫兵庫信用金庫
本店加古川市姫路市
預金1兆108億円7,159億円
預貸率36.3%43.9%
自己資本比率15.12%11.9%
不良債権比率1.74%5.26%

ともに播磨を地盤とする二つの信金。但陽信用金庫は貸出を抑え、厚い資本を積み、焦げ付きを低く抑える。堅実経営を徹底してきた歩みが数字に表れている。

播磨の加古川とともに——但陽信用金庫の歩み

但陽信用金庫は、播磨・加古川の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。臨海工業の事業者、地域の商店、住宅地の中小企業、そして住民——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。但陽信用金庫は、堅実な経営で信頼を積み、預金1兆円を超える大型信金へと成長してきた。

加古川という土地は、信用金庫にとって、預金は集まる地盤だ。播磨の臨海工業、神戸圏のベッドタウン、農業地帯——多様な経済から、地域に預金は蓄えられてきた。但陽信用金庫は、その預金を無理に貸し切るのでなく、貸出先を厳しく見極め、堅実に貸せる相手にだけ貸すという方針を貫いてきたと読める。そのぶん、預貸率は36.3%と低くなる一方、焦げ付きは1.74%と際立って低く抑えられている。貸出に回りきらない預金は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、15.12%という厚い自己資本となってきたと読める。

36.3%を、堅実経営から読む

但陽信用金庫の預貸率36.3%という低さは、貸出先を厳しく見極め、堅実に貸せる相手にだけ貸すという方針の表れだと読める。預金は集まるが、それを無理に貸し切るのでなく、確かな相手に絞って貸す。その結果、不良債権比率1.74%という、信用金庫として際立って低い焦げ付きを保っている。これは、預貸率の低さが、必ずしも消極性でなく、堅実さの裏返しでもあることを示している。

自己資本比率15.12%という厚さは、堅実に運用して利益を蓄え、それを資本として厚く積んできたことの表れだと読める。1兆円を超える規模の信用金庫が、これほど厚い自己資本と、これほど低い焦げ付きを両立するのは、堅実経営を長く貫いてきたからだと読める。播磨の加古川で、貸出を厳しく絞り、焦げ付きを低く抑え、厚い資本を積む——それが、但陽信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。よく貸す信金とは対照的なこの姿は、堅実を旨とする信用金庫の一つのかたちだと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

兵庫の経済とともに

但陽信用金庫の数字は、播磨・加古川という土地と、そこで貸出を厳しく絞りながら厚い自己資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の4割にも満たない貸出にとどめながら、焦げ付きを低く抑え、厚い資本で守りを固めてきた。播磨の加古川の経済と、堅実経営の方針が、36.3%という低い預貸率と、15.12%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。但陽信用金庫を見れば、播磨・加古川の経済と、そこで堅実に貸す大型信金の姿が浮かぶ。兵庫県の他の金融機関は、姫路の兵庫信用金庫、但馬の但馬信用金庫、丹波の中兵庫信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。兵庫県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、兵庫県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率の低さは、必ずしも消極性を意味しない。貸出先を厳しく見極め、堅実に貸せる相手にだけ貸す方針をとれば、預貸率は低くなる一方、焦げ付きを低く抑えられる。不良債権比率や自己資本比率とあわせて見ることで、その堅実さが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。兵庫信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(加古川市に本店を置き、播磨地域から神戸・阪神間を地盤とする信用金庫であること、堅実な経営で預金1兆円を超える大型信金になったこと、加古川が播磨平野東部・加古川下流域に開けた街で臨海工業地帯を抱え神戸圏の通勤圏でもあること)に関する記述=但陽信用金庫および各種公開情報にもとづく。
加古川・播磨の地理・産業(播磨平野、加古川、瀬戸内海、臨海工業、製鉄、神戸圏、ベッドタウン)に関する記述=各種公開情報。

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