結城信用金庫——結城紬の城下町で、ユーシンはなぜ預金の3割しか貸さないか
預貸率33.5%、預金4,090億円、自己資本比率14.14%、不良債権比率3.32%。茨城県結城市に本店を置く結城信用金庫。結城紬の城下町に根ざし、預金の3割しか貸さない信金が、なぜそうなるのか。同じ茨城の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
茨城県の結城市に本店を置く結城信用金庫は、預金4,090億円を持つ信用金庫だ。店舗24。略称は「ユーシン」。結城市を中心に、茨城県西地域や南西部、そして県境を越えて栃木県小山市にも店舗を展開する。結城紬の城下町に根ざす信金だ。
本拠の結城市は、茨城県の西端、栃木県との県境に接する絹織物のまちだ。ユネスコ無形文化遺産にも登録された結城紬(ゆうきつむぎ)の産地として知られ、その歴史は奈良時代にさかのぼるとも言われる。手つむぎの糸を用い、地機(じばた)で織り上げる結城紬は、日本最高級の絹織物のひとつだ。見世蔵(みせぐら)の残る城下町の町並みが、いまも往時の面影を伝える。結城信用金庫は、こうした絹と歴史の結城に根ざし、地域の中小事業者と住民に貸してきた。2020年(令和2年)には、同じ紬の産地という縁から、奄美大島の奄美大島信用金庫と業務提携を結んでいる。
この信金の数字で最も目を引くのは、預貸率33.5%という低さだ。預金4,090億円に対し、貸出金は1,368億円。預かったお金の3割ほどしか貸していない。一方で自己資本比率は14.14%と厚い。なぜ、紬のまちの信金が、これほど貸さないのか。同じ茨城の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。結城信用金庫の預金は4,090億円、貸出金は1,368億円。預貸率は33.5%で、預金の3割ほどしか貸出に回していない。自己資本比率は14.14%、不良債権比率は3.32%。店舗数は24。
同じ茨城県の信金と比べてみる。県都・水戸を地盤とする水戸信用金庫(預貸率42.4%・預金1兆1,461億円)と並べると、結城信用金庫の預貸率33.5%は、水戸信用金庫(42.4%)より低い。水戸信金が県央の幅広い業種に貸して4割台なのに対し、結城信金は3割台にとどまる。一方で自己資本比率14.14%は、水戸信金(9.45%)より厚い。貸出を抑えめにして、資本を厚く保つ守りの経営がうかがえる。これは、結城という地方都市で大型の資金需要が乏しいことと、堅実な経営姿勢の、両方を映していると読める。
| 結城信用金庫 | 水戸信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 結城市 | 水戸市 |
| 預金 | 4,090億円 | 1兆1,461億円 |
| 預貸率 | 33.5% | 42.4% |
| 自己資本比率 | 14.14% | 9.45% |
| 不良債権比率 | 3.32% | 5.05% |
ともに茨城県の信金。結城は預貸率が低めだが、自己資本比率は厚く、焦げ付きも低い。守りの経営を映す。
結城融通信用組合から——結城信用金庫の歩み
結城信用金庫は、1902年(明治35年)5月、「結城融通信用組合」として設立された。1943年(昭和18年)に市街地信用組合法に基づき結城信用組合に改組し、1951年(昭和26年)10月、信用金庫法に基づき結城信用金庫となった。1956年(昭和31年)には下館信用金庫と合併し、県西地域に基盤を広げた。2002年(平成14年)には創立100周年を迎えている。本店は結城市結城に置かれ、略称「ユーシン」として親しまれている。新しい店舗は、結城の歴史ある街並みに合わせた見世蔵風の趣ある建物とするなど、地域の景観にも配慮している。
絹と歴史の結城という土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。結城紬という伝統産業を抱えるとはいえ、その担い手は手仕事の職人であり、大型の設備投資を必要とする産業ではない。県西の田園地帯や地方都市に大きな工業集積があるわけでもない。預金は地域から集まっても、それを吸収するだけの大型の貸出先は限られる。だから貸出は預金ほどには伸びず、預貸率は3割台にとどまる。これは、貸す力がないというより、地域の身の丈に合った貸出に徹し、無理に貸さずに資本を厚く保つ守りの経営の表れだと読める。自己資本比率14.14%という厚さは、その堅実な姿勢を裏づけている。同じ紬の産地・奄美大島の信金と提携するなど、伝統産業の縁を活かした地域づくりにも取り組んできた。
33.5%を、結城から読む
結城信用金庫の預貸率33.5%という低さは、大型の資金需要が乏しい絹と歴史の結城で、地域の身の丈に合った貸出に徹してきたことの表れだと読める。結城紬の城下町で、信金として貸せる相手に貸してきた。預金は集まっても、貸出は預金ほどには伸びない。
そのうえで、自己資本比率14.14%という厚さを保っていることが、この信金の性格を物語る。貸出を絞り、資本を厚く保ち、慎重に運用する。無理に貸さず、地域とともに健全であろうとする守りの経営——その姿勢が、33.5%という低い預貸率に表れていると読める。預貸率が低いこと自体は、その信金が悪いことを意味しない。土地の経済が大型の資金需要を生まないとき、貸出を絞って資本を守ることは、ひとつの堅実な選択だ。不良債権比率3.32%という低さも、堅実に貸してきたことを示している。創立120年を超えて、ユーシンは紬のまちとともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
茨城の経済とともに
結城信用金庫の数字は、結城紬の城下町という土地と、創立120年を超えて堅実に歩んできた歴史の、両方を映している。地域の身の丈に合った貸出に徹し、資本を厚く保ちながら、結城の暮らしと商いを支えてきた。大型の資金需要が乏しい紬のまちの土地柄が、33.5%という低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。結城信用金庫を見れば、結城紬の城下町の経済と、そこで守りの経営に徹する信金の姿が浮かぶ。茨城県の他の金融機関は、県都の水戸信用金庫、県全域を束ねる茨城県信用組合、県内最大の地銀常陽銀行、つくばの筑波銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。茨城県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、茨城県の地域金融機関のページへ。
結城信用金庫は、結城紬の城下町に根ざし、地域の身の丈に合った貸出に徹する信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。水戸信用金庫の数値も同出典。
沿革(1902年5月に「結城融通信用組合」として設立されたこと、1951年10月に信用金庫法に基づき結城信用金庫となったこと、1956年に下館信用金庫と合併したこと、2002年に創立100周年を迎えたこと、本店が結城市結城にあること、略称が「ユーシン」であること、茨城県西・南西部と栃木県小山市に店舗を持つこと、2020年に奄美大島信用金庫と業務提携したこと)=結城信用金庫および各種公開情報にもとづく。
結城の地理・産業(結城市、結城紬、ユネスコ無形文化遺産、見世蔵、城下町、栃木県小山市との近接)に関する記述=各種公開情報。
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