はくさん信用金庫——二つの信金が一つになった、白山のふもとの信金
預貸率56.8%、自己資本比率8.79%。金沢市に本店を置くはくさん信用金庫。2020年に北陸信金と鶴来信金が対等合併して生まれた、金沢以南の石川県南部を地盤とする信金の数字を、合併と土地から読みます。
石川県金沢市に本店を置くはくさん信用金庫は、預金3,225億円、貸出金1,830億円、店舗21。比較的新しい名前の信金ですが、その歴史は古くにさかのぼります。2020年9月、金沢市に本店を置いていた北陸信用金庫(旧愛称ほくしん)と、白山市に本店を置いていた鶴来信用金庫が、対等合併して生まれたのが、いまのはくさん信用金庫です。金庫名は、両信金が地盤とする金沢以南の地域にそびえる名峰・白山にちなんでいます。
合併前の北陸信用金庫は、1971年に石川県南部の3信用金庫(石川・美川・小松)が合併して発足した信金で、白山市・小松市周辺に多くの支店を持っていました。鶴来信用金庫は、白山市鶴来を地盤とする信金でした。営業地域が重なる二つの信金が、人口減少と金融再編の波のなかで一つになった——この合併の経緯が、はくさん信用金庫の数字を読む鍵になります。地盤は、金沢市以南の石川県南部。金沢の都市部から、白山市・小松市といった県南の産業のまちまでを抱えています。
この信用金庫の数字で目を引くのは、預貸率56.8%という、信金としてはやや高めの水準と、自己資本比率8.79%という、薄めの数字の組み合わせです。比較的よく貸す一方で、自己資本は厚くない。この二つを、合併と土地から読みます。
まず、数字を並べる
はくさん信用金庫の預金は3,225億円、貸出金は1,830億円、預貸率56.8%。自己資本比率は8.79%、不良債権比率は2.8%。中小企業等向けの貸出先は9,385件にのぼります。
| 預金 | 3,225億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,830億円 |
| 預貸率 | 56.8% |
| 自己資本比率 | 8.79% |
| 不良債権比率 | 2.8% |
| 中小企業等向け貸出先 | 9,385件 |
| 店舗 | 21店 |
やや高めの預貸率と、薄めの自己資本。合併で生まれた信金の数字を読む。
56.8%と8.79%を、合併と土地から読む
預貸率56.8%という、信金としてはやや高めの水準は、はくさん信用金庫が地盤とする石川県南部に、比較的しっかりした資金需要があることの表れと読めます。
はくさん信用金庫が貸す相手は、金沢市以南の中小事業者です。そのなかには、県都・金沢の都市部の商業・サービス業、白山市や小松市周辺の製造業が含まれると考えられます。とりわけ県南の小松市周辺は、建設機械をはじめとする機械工業が集積する産業のまちで、関連する中小の事業者も多い。金沢の都市需要と、県南の製造業の集積——この二つを地盤とすることが、信金としてはやや高めの預貸率56.8%を支えていると読めます。本紀行で見てきた、預貸率が4割前後にとどまる地方の信金と比べれば、よく貸している方です。
一方で、自己資本比率8.79%は、信用金庫としては薄めの水準です。よく貸すことは、それだけリスクを取っているということでもあり、自己資本の厚みとは裏腹の関係に立ちやすい。合併によって規模を得たとはいえ、二つの信金の経営基盤を統合し、自己資本を積み増していくことは、これからの課題と読めます。不良債権比率2.8%は地方の信金として極端に高くはありませんが、薄めの自己資本のもとでは、焦げ付きへの備えをより意識せざるをえません。合併で規模を得て、やや積極的に貸す。だが自己資本には課題が残る——はくさん信用金庫の数字は、再編を経た地方信金の、一つの現在地を示しています。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため、断定はできません。
同じ石川の、金融機関と並べてみる
同じ石川県には、金沢市を地盤とする金沢信用金庫や、県を代表する地方銀行の北國銀行があります。とりわけ北國銀行は、自己資本比率の厚さで知られ、守りを固めた経営を続けてきました。それと比べると、はくさん信用金庫の自己資本比率8.79%は薄く、よく貸す分だけリスクも取っている、という対照が見えてきます。同じ石川県のなかにも、厚い自己資本で守る金融機関と、合併を経てやや積極的に貸す信金とがある。金沢を地盤とする金融機関の多様さは、金沢信用金庫や北國銀行の記事とあわせて読むと、より立体的に見えてきます。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
はくさん信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。はくさん信用金庫にとって、その「地元」とは、金沢市以南の石川県南部の地域経済です。営業地域が重なる二つの信金が合併したことは、人口減少と金融再編の時代に、地域に根ざす信金が規模を保ち、地元を支え続けるための選択でした。白山にちなんだ新しい名は、その再出発の象徴でもあります。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、金沢の都市部や県南の製造業を営む中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。やや高めの預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、再編の歩みを映す
預貸率56.8%というやや高めの水準と、自己資本比率8.79%という薄めの数字は、二つの信金が合併して規模を得ながら、なお足元を固める途上にある信金の姿を映しています。厚い自己資本で守る金融機関もあれば、再編を経てやや積極的に貸す信金もある。数字は、その金融機関がどんな歩みを重ねてきたかを語ります。はくさん信用金庫の数字は、白山のふもとで再出発した信金の、いまの記録です。
同じく合併を経て生まれた信金としては、島根の島根中央信用金庫があります。二つの信金が合併して再出発したはくさん信用金庫(預貸率56.8%)と、度重なる合併を経て出雲に本店を置く唯一の地域金融機関となった島根中央信用金庫とを並べると、人口減の進む地方で信金が合併によって地域金融を守ろうとしてきた、よく似た歩みが見えてきます。もう一つの合併信金の姿は、島根中央信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。石川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、石川県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
はくさん信用金庫の沿革(2020年9月に北陸信用金庫〔旧愛称ほくしん、1971年に石川・美川・小松の3信金が合併して発足〕と鶴来信用金庫が対等合併、金庫名は白山に由来)、金沢市以南の石川県南部を営業区域とすることに関する記述=はくさん信用金庫および各種報道・公開情報にもとづく。
金沢の都市経済、小松市周辺の機械工業の集積に関する記述=各種公開情報。
金沢信用金庫・北國銀行の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。