北日本銀行——北東北で唯一の第二地銀「きたぎん」は、何に貸すか
預貸率78.0%、預金1.4兆円。盛岡市に本店を置く北日本銀行「きたぎん」。無尽から育ち、北東北で唯一現存する第二地銀が、岩手を中心に隣県へも広げて何に貸すかを読みます。
岩手県盛岡市に本店を置く北日本銀行は、地元で「きたぎん」と呼ばれる第二地方銀行です。読みは「きたにほん」ではなく「きたにっぽん」。預金1兆4,220億円、貸出金1兆1,094億円、店舗77。岩手県には岩手銀行というトップバンクがありますが、北日本銀行は県内2番手として独自の地盤を持ち、北東北(青森・岩手・秋田)で唯一現存する第二地方銀行です。
本拠地の岩手県は、本州でもっとも広い県土を持ち、農林業・水産業に加え、近年は内陸部で半導体・自動車関連の製造業が伸びる土地です。広い県土に人口が散らばり、盛岡を中心に、北上・一関などの内陸工業都市、三陸の水産業が点在します。北日本銀行は岩手を中心に、仙台・青森・秋田など隣県や東京にも店舗を広げてきました。この広い北東北という土地柄が、北日本銀行の数字を読む鍵になります。
北日本銀行の歩みは、無尽から始まります。1942年2月、岩手無尽と盛岡無尽が合併して岩手県興産無尽として設立されました。その後、1951年に興産相互銀行へ転換し、1966年に北日本相互銀行と改称、1989年に普通銀行へ転換して現在の北日本銀行となりました。無尽から相互銀行を経て普通銀行になるという、第二地方銀行に典型的な成り立ちです。「地域密着」「健全経営」「人間尊重」を経営理念に掲げ、2023年には盛岡市の野球場の命名権を取得して「きたぎんボールパーク」とするなど、地域の賑わいづくりにも取り組んでいます。数字の面で目を引くのは、預貸率78.0%という、しっかり貸す水準です。
まず、数字を並べる
北日本銀行の預金は1兆4,220億円、貸出金は1兆1,094億円、預貸率78.0%。自己資本比率は9.75%、不良債権比率は1.46%。中小企業等向けの貸出残高は8,874億円にのぼります。
| 預金 | 1兆4,220億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1兆1,094億円 |
| 預貸率 | 78.0% |
| 自己資本比率 | 9.75% |
| 不良債権比率 | 1.46% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 8,874億円 |
| 店舗 | 77店 |
預金1.4兆円・預貸78.0%。北東北唯一の第二地銀が、広い県土と隣県で貸す数字。
78.0%を、第二地銀の立場と隣県展開から読む
預貸率78.0%は、地方銀行のなかでしっかりと貸している水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。これは、北日本銀行が県内のトップバンクではなく、第二地方銀行という立場にあることと無縁ではありません。
岩手県には、県のトップバンクである岩手銀行があります。そのなかで第二地銀の北日本銀行は、岩手銀行が取りきらない中小・零細の事業者に深く食い込み、さらに仙台・青森・秋田といった隣県にも店舗を広げることで存在感を保ってきた。第二地銀は一般に、トップバンクよりも中小企業とのリテール取引が厚く、預金を地元の貸出に回す比率が高くなる傾向があります。県内2番手として中小に深く貸し、北東北一円に展開するという姿勢が、預貸率78.0%という水準を支えていると読めます。盛岡や内陸工業都市の製造業とその下請け、三陸の水産業、地場の商工業、住宅ローンが、その貸出の中心です。中小企業等向けの貸出残高8,874億円という規模は、岩手と北東北の小さな事業者の資金需要を広く引き受けてきた証です。
不良債権比率1.46%は、地銀として低めの良好な水準です。中小・零細により深く貸す第二地銀でありながら焦げ付きを抑えているのは、長年の取引で北東北の事業者を知り抜いた目利きの表れと読めます。自己資本比率9.75%という相応の厚みとあわせて、「健全経営」を理念に掲げる第二地銀の堅実さがうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、トップバンクの隣で中小に深く貸し、北東北唯一の第二地銀として広域に展開する立場を抜きに、この数字は読めません。
同じ県のトップバンクと並べてみる
本紀行には、岩手県のトップバンクも登場しています。岩手銀行です。岩手銀行は本州一広い県土を持つ岩手の県都銀行「いわぎん」で、預貸率は68.9%でした。トップバンクの岩手銀行(68.9%)よりも、第二地銀の北日本銀行(78.0%)のほうが預貸率が高い——これは、規模で勝るトップバンクが幅広い資金運用も手がけるのに対し、第二地銀がより地元の貸出に集中していることの表れと読めます。同じ盛岡に本店を置く一番手と二番手を並べると、地銀の立場の違いが数字に出ることが見えてきます。県内最大の地銀の姿は、岩手銀行の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
第二地銀は、トップバンクとは異なる距離感で地域の事業者に向き合う選択肢です。中小・零細により深く食い込み、北東北一円に広がる店舗網を持つことは、岩手を越えて事業を営む企業にとって心強いものです。預貸率は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、北東北唯一という立ち位置を映す
預貸率78.0%という水準は、無尽から育ち、トップバンクを擁する岩手で第二地銀として中小に深く貸し、北東北唯一の第二地銀として広域に展開してきた北日本銀行の姿を映しています。県を代表するトップバンクもあれば、その隣で中小に食い込む第二地銀もある。数字は、その金融機関がどんな立場で、どんな相手に向き合ってきたかを語ります。北日本銀行の数字は、北東北でただ一つの第二地銀の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と歴史の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岩手県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岩手県の地域金融機関のページもどうぞ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
北日本銀行の沿革(1942年2月に岩手無尽と盛岡無尽が合併して岩手県興産無尽として設立、1951年に興産相互銀行へ転換、1966年に北日本相互銀行と改称、1989年に普通銀行へ転換して北日本銀行となる、読みは「きたにっぽん」・愛称「きたぎん」、北東北で唯一現存する第二地方銀行、2023年に盛岡市の野球場の命名権を取得し「きたぎんボールパーク」とした)、本店所在地(盛岡市)、岩手を中心に仙台・青森・秋田・東京にも展開すること、経営理念に関する記述=北日本銀行および各種公開情報にもとづく。
岩手県の経済(広い県土、農林水産業、内陸部の半導体・自動車関連の製造業)に関する記述=各種公開情報。
岩手銀行の位置づけ=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末および本紀行既出記事。