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中栄信用金庫——丹沢の麓・秦野で、なかしんは何に貸すか

預貸率38.5%、自己資本比率17.76%、不良債権比率3.77%。秦野市に本店を置く中栄信用金庫「なかしん」。丹沢の麓・名水のまちに根ざし、厚い守りを固める信金の数字を読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 神奈川県

神奈川県秦野市に本店を置く中栄信用金庫は、預金4,594億円、貸出金1,769億円、店舗16。「なかしん」の愛称で、秦野市を中心に、県西部から県央の地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある秦野市は、神奈川県の西部、丹沢山地の南麓に開けた盆地のまちです。丹沢のふところから湧き出す豊かな地下水で知られ、その湧水群は全国の名水百選にも選ばれています。かつては良質の葉たばこの産地として全国に名を馳せ、いまは精密機械や電子部品などの工業団地を抱えるものづくりのまちでもあります。都心への通勤圏でありながら、丹沢の自然と名水に恵まれた住宅都市という顔も持つ——この、自然と産業が同居する土地柄が、中栄信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫は、1932年に設立されました。秦野の地に根を張って90年余り、「なかしん」の愛称で地域に親しまれてきた信金です。数字の面で目を引くのは、自己資本比率17.76%という、信用金庫としては厚い守りと、預貸率38.5%という控えめな水準の組み合わせです。

まず、数字を並べる

中栄信用金庫の預金は4,594億円、貸出金は1,769億円、預貸率38.5%。自己資本比率は17.76%、不良債権比率は3.77%。中小企業等向けの貸出先は8,564件です。

中栄信用金庫(令和7年3月末)
預金4,594億円
貸出金1,769億円
預貸率38.5%
自己資本比率17.76%
不良債権比率3.77%
中小企業等向け貸出先8,564件
店舗16店

預貸率38.5%・自己資本17.76%。名水のまちに根ざす信金の、厚い守りを読む。

38.5%と17.76%を、名水のまちから読む

預貸率38.5%という控えめな水準と、自己資本比率17.76%という厚み。信用金庫の自己資本比率はおおむね10〜20%台で、17.76%は厚い方に入ります。不良債権比率3.77%という中庸の水準とあわせて読むと、ひとつの輪郭が浮かびます。急いで貸し増すよりも、まず足元を固め、確実な先に貸す——そうした守りを固める信金の姿です。

中栄信用金庫が貸す相手は、秦野を中心とする県西部・県央の中小事業者です。工業団地に集積する精密機械や電子部品の関連事業者、まちの建設業や商業、サービス業が、その融資先に含まれると考えられます。首都圏の住宅都市として一定の預金を集める一方、地元の事業者向けの資金需要がそれに見合って伸びるとは限りません。預貸率38.5%という水準は、潤沢な預金と、地元で貸し切れる量との差を映していると読めます。8,564件という中小企業等向けの貸出先は、住宅都市でありながら地元の事業者にも資金を届けてきたこの信金の地盤を示しています。

厚い自己資本は、見方を変えれば、伸びを急がず堅実に積み上げてきたことの表れです。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、丹沢の名水と工業が同居する秦野という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

中栄信用金庫が示すのは、名水のまちの足元を支える信金の、厚い守りと堅実さです。首都圏の住宅都市として預金を集めつつ、急いで貸し増すより確実な先に貸す。控えめな預貸率と厚い自己資本は、伸びを急がず土地に根を張る信金の姿の表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

中栄信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。中栄信用金庫にとって、その「地元」とは、住宅都市の顔と工業団地を併せ持つ秦野を中心とした県西部・県央の地域経済です。首都圏で集めた潤沢な預金を、限られた地元の中小に貸し切るのは容易ではありません。控えめな預貸率と厚い自己資本は、会員資格が地区内の中小に絞られるという制度の枠のなかで、堅実さを優先した一つの帰結とも読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ神奈川県を代表する地銀として、横浜銀行(預貸率79.6%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・横浜銀行(預貸率79.6%)と、丹沢の麓・秦野に根ざすこの中栄信用金庫(預貸率38.5%)とを並べると、同じ神奈川でも、県全域を相手にする地銀と、特定地域に密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、横浜銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ県西部には、小田原に根ざすさがみ信用金庫があります。預貸率41.6%のさがみ信用金庫と、預貸率38.5%の中栄信用金庫は、ともに県西部で控えめな預貸率にとどまる信金どうしです。首都圏の縁辺で堅実に地域を支える信金の姿は、さがみ信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、工業団地や商業を担う秦野の事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。ただし、預貸率が控えめで自己資本が厚いことは、必ずしも「借りやすい」ことを意味しません。守りを固める姿勢は、確実な先を選ぶ姿勢の裏返しでもあるからです。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率38.5%という控えめな水準と、自己資本比率17.76%という厚みは、丹沢の麓、名水のまち秦野に根を張り、地元の足元を堅実に支えてきた信金の姿を映しています。急いで貸し増す信金もあれば、伸びを急がず守りを固める信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。中栄信用金庫の数字は、丹沢の名水のまちに根ざす「なかしん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。神奈川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページもどうぞ。

中栄信用金庫と融資・保証のはなし

中栄信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
中栄信用金庫の沿革(1932年設立)、「なかしん」の愛称、秦野市を中心に県西部・県央を事業区域とすること、本店所在地に関する記述=中栄信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
秦野市の丹沢山地の湧水(名水百選)、かつての葉たばこ産地、工業団地に関する記述=各種公開情報。
横浜銀行・さがみ信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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