¥Today ニホン銀行紀行

平塚信用金庫——七夕と湘南のまち・平塚で、ひらしんは何に貸すか

預貸率43.1%、自己資本比率10.58%、不良債権比率6.02%。平塚市に本店を置く平塚信用金庫「ひらしん」。七夕まつりで知られる湘南の工業・商業のまちに根ざす信金の数字を読みます。

銀行・金融ニュース
ニホン銀行紀行 ・ 神奈川県

神奈川県平塚市に本店を置く平塚信用金庫は、預金6,060億円、貸出金2,615億円、店舗24。「ひらしん」の愛称で、平塚市を中心に、湘南から県央の地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある平塚市は、神奈川県の中南部、相模川の河口に開けた湘南地域の中核都市です。日本三大七夕のひとつに数えられる「湘南ひらつか七夕まつり」で全国に知られる一方、相模川の水運と平野を背景に、輸送用機械をはじめとする製造業が集積する工業都市でもあります。海と川、そして首都圏という立地を生かし、工業・商業・住宅が混じり合う土地——この、湘南の工業と商いのまちという土地柄が、平塚信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の成り立ちは、1932年に設立された「有限責任平塚商工信用組合」にさかのぼります。改組・改称を重ね、1951年に信用金庫法に基づき「平塚信用金庫」となりました。「商工信用組合」を源流とする歩みは、まちの商工業者とともに育ってきたことを映しています。数字の面で目を引くのは、預貸率43.1%という水準と、12,724件という中小企業等向け貸出先の多さです。

まず、数字を並べる

平塚信用金庫の預金は6,060億円、貸出金は2,615億円、預貸率43.1%。自己資本比率は10.58%、不良債権比率は6.02%。中小企業等向けの貸出先は12,724件です。

平塚信用金庫(令和7年3月末)
預金6,060億円
貸出金2,615億円
預貸率43.1%
自己資本比率10.58%
不良債権比率6.02%
中小企業等向け貸出先12,724件
店舗24店

預貸率43.1%・中小貸出先1.3万件。湘南の工業・商いのまちに根ざす信金の数字を読む。

43.1%と1.3万件を、湘南のまちから読む

預貸率43.1%は、信用金庫として中庸の水準です。あわせて目を引くのが、12,724件という中小企業等向け貸出先の多さです。預金規模に見合った、無数の小さな事業者へ資金を届けてきたことを示す数字です。首都圏の住宅都市として潤沢な預金を集める一方、その全てを地元で貸し切るには至らず、預貸率は4割台にとどまる——この構図は、首都圏縁辺の信金に共通して見られる姿です。

平塚信用金庫が貸す相手は、平塚を中心とする湘南・県央の中小事業者です。輸送用機械をはじめとする製造業の関連事業者、まちの商業や建設業、サービス業が、その融資先に含まれると考えられます。1.3万件という貸出先の数は、工業と商業が混じり合う湘南の地で、小さな事業者一軒一軒に資金を行き渡らせてきた営みの厚みです。預貸率43.1%という中庸の水準は、潤沢な預金と、地元で貸し切れる量との差を映していると読めます。

不良債権比率6.02%は、地方の信金としてやや高めの水準にあります。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、製造業の景気変動を抱える湘南の工業都市という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

平塚信用金庫が示すのは、湘南の工業と商いのまちで、無数の小さな事業者に資金を届ける信金の姿です。首都圏の住宅都市として預金を集めつつ、1.3万件の貸出先へ資金を回す。中庸の預貸率と多い貸出先は、工業都市に根ざす信金の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

平塚信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。平塚信用金庫にとって、その「地元」とは、製造業と商業が混じり合う湘南・県央の地域経済です。大手の製造業そのものには規模の面で貸せなくても、その産業の裾野に連なる無数の中小事業者を支えることこそが、信金の役割です。1.3万件を超える貸出先は、その役割を工業都市の土地で果たしてきた証しと読めます。会員資格が地区内の中小に絞られるという制度の枠が、結果として「湘南の中小に薄く広く貸す信金」という姿を形づくっています。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ神奈川県を代表する地銀として、横浜銀行(預貸率79.6%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・横浜銀行(預貸率79.6%)と、湘南・平塚に根ざすこの平塚信用金庫(預貸率43.1%)とを並べると、同じ神奈川でも、県全域を相手にする地銀と、特定地域に密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、横浜銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ県西部・湘南には、小田原に根ざすさがみ信用金庫や、三浦半島の湘南信用金庫もあります。預貸率41.6%のさがみ信用金庫、預貸率58.3%の湘南信用金庫と並べると、同じ県西・湘南の信金でも、土地ごとに数字の形が異なることが見えてきます。近隣の信金の姿は、さがみ信用金庫湘南信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、製造業や商業を担う平塚の事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。中庸の預貸率と多い貸出先は、地域にしっかり向き合う姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率43.1%という中庸の水準と、12,724件という貸出先の多さは、相模川の河口、七夕と湘南のまち平塚に根を張り、工業と商いの裾野に資金を届けてきた信金の姿を映しています。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。平塚信用金庫の数字は、湘南の工業都市に根ざす「ひらしん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。神奈川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページもどうぞ。

平塚信用金庫と融資・保証のはなし

平塚信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
平塚信用金庫の沿革(1932年に有限責任平塚商工信用組合として設立、改組・改称を経て1951年に信用金庫法に基づき平塚信用金庫へ改組)、「ひらしん」の愛称に関する記述=平塚信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
平塚市の湘南ひらつか七夕まつり、相模川、輸送用機械などの製造業に関する記述=各種公開情報。
横浜銀行・さがみ信用金庫・湘南信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

本サイトは、資金繰り支援サービス「¥Today」が運営しています。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ