横浜信用金庫——港町の大型信金は、県都・横浜で何に貸すか
預貸率57.6%、預金2兆704億円、不良債権比率6.03%。横浜市に本店を置く横浜信用金庫。港町・横浜に根ざす大型信金「はましん」が、都市経済のなかで何に貸すか。その数字と歴史を読む。
神奈川県の県都・横浜市に本店を置く横浜信用金庫は、地元で「はましん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2兆704億円、店舗61。全国の信用金庫でも屈指の規模を持つ大型信金である。本拠の横浜市を中心に、川崎市や横須賀など神奈川県東部に店舗を広げている。
本拠の横浜は、日本を代表する港町であり、人口約370万を抱える政令指定都市だ。幕末の開港以来、貿易と商業で栄え、いまも商業・サービス業に厚みがある。みなとみらいに代表される都市再開発が進む一方、中心部を離れれば、古くからの商店街や中小の事業者が集まる下町的な一帯も広がる。横浜信用金庫は、こうした大都市の多様な顔を持つ経済に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、不良債権比率6.03%というやや高めの水準だ。預貸率57.6%は信用金庫として標準的だが、焦げ付きはやや高い。2兆円もの預金を集める大型信金が、なぜこの数字を抱えるのか。同じ神奈川県の大型信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。横浜信用金庫の預金は2兆704億円、貸出金は1兆1,930億円。預貸率は57.6%で、預金の6割近くを貸出に回している。自己資本比率は11.09%、不良債権比率は6.03%とやや高めだ。店舗数は61、中小企業等への貸出残高は1兆1,678億円にのぼる。
2兆円もの預金と、1兆円を超える貸出は、信用金庫として全国でも屈指の規模だ。同じ神奈川県で、京浜工業地帯の川崎を地盤とする川崎信用金庫(預貸率61.2%・不良債権比率4.73%)と並ぶ、県内有数の大型信金である。両者を比べると、規模は近いが、横浜信用金庫の不良債権比率6.03%は、川崎信用金庫(4.73%)より高い。預貸率は川崎信用金庫がやや高く、横浜信用金庫がやや低い。横浜という巨大都市の、商業・サービス業を含む多様な事業者に幅広く貸すなかで、焦げ付きもそれなりに抱えている——その姿が数字に表れていると読める。
| 横浜信用金庫 | 川崎信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 横浜市 | 川崎市 |
| 預金 | 20,704億円 | 23,796億円 |
| 預貸率 | 57.6% | 61.2% |
| 自己資本比率 | 11.09% | 13.49% |
| 不良債権比率 | 6.03% | 4.73% |
神奈川県東部を地盤とする二つの大型信金。規模では川崎の川崎信用金庫がやや上回り、預貸率も高い。横浜信用金庫は焦げ付きがやや高めで、巨大都市の多様な事業者に幅広く貸す姿がうかがえる。
港町とともに——横浜信用金庫の歩み
横浜信用金庫は、港町・横浜の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。開港以来、貿易と商業で栄えた横浜には、商店や問屋、中小の事業者が数多く集まる。そうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。横浜信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、県内有数の規模へと成長してきた。
横浜という土地は、信用金庫にとって大きな地盤だ。人口370万の大都市として、商業・サービス業に厚みがあり、貸出の機会も多い。一方で、巨大都市には、好不況の波を受けやすい商業・サービス業や、競争の激しい事業者も多く集まる。幅広く貸せる土地であることと、それなりの焦げ付きを抱えることは、表裏一体でもある。横浜信用金庫の数字には、大都市の信金ならではの、こうした特徴が映っていると読める。
6.03%を、港町の信金から読む
横浜信用金庫の不良債権比率6.03%というやや高めの数字は、巨大都市・横浜の多様な事業者に幅広く貸してきたことの表れだと読める。商業・サービス業を含む多くの事業者に貸せば、なかには経営が苦しくなる先も出てくる。預貸率57.6%という標準的な水準で、6割近くを貸し出しているからこそ、焦げ付きも一定の規模になる。自己資本比率11.09%という水準は、その焦げ付きを吸収するうえで一つの支えになる。
これは、横浜信用金庫が過度にリスクを取っているということではなく、大都市で幅広く地域に貸すという役割を担うがゆえの数字だと読める。預金を集める力と、それを地元の多様な事業者に回す力。その両方を持ちながら、都市経済の浮き沈みもあわせて引き受ける——それが、港町の大型信金の生き方だ。同じ神奈川県の川崎信用金庫と比べると、両者の違いは、地盤とする都市の産業構成の違いも映していると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
横浜の経済とともに
横浜信用金庫の数字は、日本を代表する港町・横浜という巨大都市の経済と、そこで幅広く地域に貸す大型信金の歩みの、両方を映している。2兆円もの預金を集め、その6割近くを多様な事業者に貸しながら、都市経済の浮き沈みもあわせて引き受けてきた。大都市で幅広く貸す役割が、6.03%というやや高めの焦げ付きにも表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。横浜信用金庫を見れば、港町・横浜の都市経済と、そこで幅広く地域に貸す信金の姿が浮かぶ。同じ神奈川県の、京浜工業地帯の信金は、川崎信用金庫の記事、薄い自己資本で貸す湘南信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。神奈川県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。川崎信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(横浜市に本店を置き、神奈川県東部を地盤とする信用金庫であること、横浜が幕末の開港以来の港町で政令指定都市であること、みなとみらいの再開発と古くからの商店街が共存すること)に関する記述=横浜信用金庫および各種公開情報にもとづく。
横浜の地理・経済(港町、政令指定都市、人口約370万、商業・サービス業、みなとみらい)に関する記述=各種公開情報。