仙台銀行——震災を越えた東北の銀行は、何を背負っているのか
預貸率92.9%。東北の地に深く貸し込む仙台銀行。その高い預貸率と、やや高めの不良債権比率の裏には、東日本大震災と公的資金という、この銀行ならではの重荷が横たわっています。
宮城県仙台市に本店を置く仙台銀行は、東北を地盤とする第二地方銀行です。預金1兆376億円、貸出金9,636億円。山形のきらやか銀行とともに、じもとホールディングスという持株会社の傘下にあります。
仙台は、東北最大の都市・宮城県の県都です。東北の経済・商業の中心であり、周辺には水産業や農業、製造業が広がります。そして、この地域は東日本大震災という大きな災害を経験し、長い復興の歩みを重ねてきた土地でもあります。この土地柄が、仙台銀行の数字を読む鍵になります。
この銀行の預貸率は92.9%。集めた預金の9割以上を貸出に回している計算で、これはかなり高い水準です。預金をため込んで運用に回すのではなく、東北の地に深く貸し込んでいます。だが、その高い預貸率を読むには、この銀行が背負ってきたものを知る必要があります。
まず、数字を並べる
仙台銀行の預金は1兆376億円、貸出金は9,636億円、預貸率92.9%。自己資本比率は7.81%、不良債権比率は3.38%。中小企業等向けの貸出先は5万件を超えます。
| 預金 | 10,376億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 9,636億円 |
| 預貸率 | 92.9% |
| 自己資本比率 | 7.81% |
| 不良債権比率 | 3.38% |
| 中小企業等向け貸出先 | 50,767件 |
| 店舗 | 72店 |
預金の9割超を貸し出し、5万を超える中小事業者に向き合う。深く貸し込む銀行です。
高い預貸率が語る、深い貸し込み
預貸率92.9%は、運用に逃げず、地元に貸し込んでいることを示す数字です。預金1兆円規模に対し、貸出も9,600億円超。中小企業等向けの貸出先は5万件を超え、東北の数多くの中小事業者に資金を流しています。第二地方銀行らしく、地域の小さな事業者を細かく支える姿が、この数字に表れています。
一方で、自己資本比率は7.81%と、けっして厚くはありません。深く貸し込むぶん、資本に余裕があるとは言いにくい。攻めの貸出と、薄めの資本。そのあいだの緊張が、この銀行の経営の姿です。
3.38%を、震災と東北経済から読む
もう一歩、不良債権比率3.38%という、やや高めの数字を、東北という土地の側から読んでみたいと思います。仙台銀行を語るうえで避けて通れないのが、東日本大震災です。2011年の震災は、宮城県をはじめとする東北の沿岸地域に甚大な被害をもたらしました。仙台銀行が貸す相手である地元の中小事業者の多くも、その被害と、長い復興の過程を経験してきました。
震災は、地域の事業者の経営に深い傷を残しました。被災した事業者への融資、復興のための資金、そしてコロナ禍がそこに重なり、地元に深く貸し込む銀行ほど、その影響を債権の質という形で受け止めることになります。不良債権比率3.38%という数字には、東北の地に深く貸し込み、震災とその後の苦境を共に背負ってきたことが影響していると思われます。貸さなければ焦げ付きは生まれません。だが、地域の事業者を見捨てずに貸し続ければ、そのぶん債権の質には負荷がかかります。もちろん、不良債権比率には個別の事情も絡むため、震災だけが原因とは断じられません。だが、被災地に根ざした銀行であることは、この数字の背景として無視できません。
公的資金という、もうひとつの重荷
仙台銀行には、もうひとつ背負っているものがあります。公的資金です。仙台銀行を傘下に持つじもとホールディングスは、震災やコロナ禍に対応するため、国の公的資金を受け入れてきました。これは、地域金融機関が地元を支える役割を果たし続けられるよう、国が資本を注入する仕組みです。仙台銀行は、その公的資金の返済を進めながら、利益剰余金を積み上げ、経営の健全化を図っている途上にあります。
2025年3月期は、店舗の減損損失などを計上し、利益は圧縮されました。だが、こうした処理は、将来に向けて経営基盤を整えるための一歩でもあります。震災・コロナ・公的資金という重荷を背負いながら、それでも東北の地に貸し続ける——仙台銀行の数字は、その役割の重さを映しています。預貸率92.9%という攻めの姿勢も、3.38%という不良債権比率も、薄めの自己資本も、この「東北を支える銀行」という立場と切り離して読むことはできません。
借り手にとっての意味
地元に深く貸し込む銀行は、地域の事業者にとって身近な相談相手になりうります。仙台銀行のように中小事業者を数多く抱える銀行は、小さな事業の資金需要に向き合ってきた経験を持ちます。ただし、銀行の経営状況と、個々の借り手への融資条件は別の話であり、預貸率の高さがそのまま借りやすさを意味するわけではありません。預貸率の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、土地の歴史を背負う
預貸率92.9%、不良債権比率3.38%、薄めの自己資本、そして公的資金。仙台銀行の数字を一つずつ読むと、そこには東日本大震災という土地の歴史と、東北を支え続けるという役割の重さが、いくつも重なって映っています。数字は、その銀行がどんな土地で、何を背負ってきたかを語ります。
本紀行には、同じ宮城県の古川信用組合も登場しています。古川信組は、大崎耕土の米どころ・大崎市(旧古川市)に本店を置く、店舗9・預金645億円という小規模な信用組合でした。県全域を相手に預金の9割近くを貸すこの仙台銀行(預貸率92.9%)と、県北の限られた範囲で小さな借り手に貸す古川信用組合(預金645億円・店舗9)とを並べると、同じ宮城県でも、県を相手にする第二地銀と、米どころの零細に密着する小さな信組とで、規模も役割も大きく異なることが見えてきます。米どころの小さな信組の姿は、古川信用組合の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地の歴史と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。同じグループ、じもとホールディングスの一員として山形を支えるきらやか銀行とあわせて読むと、グループが東北で担うものが見えてきます。宮城県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、宮城県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
じもとホールディングスの構成・公的資金の受け入れと返済・利益剰余金・2025年3月期の店舗減損等に関する記述=じもとホールディングスおよび仙台銀行の決算開示・金融庁公表の経営強化計画関連資料等。
東日本大震災による東北地域の被害および復興の過程に関する記述=各種公的資料・公開情報。