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きらやか銀行——公的資金を背負う銀行は、何のために貸すのか

預貸率87.9%、不良債権比率5.82%。じもとホールディングス傘下で公的資金を背負う山形のきらやか銀行。預金の大半を貸し込む姿を、宮城・山形の中小企業支援という使命から読む。

ニホン銀行紀行 ・ 山形県

山形県山形市に本店を置くきらやか銀行は、山形県を地盤とする第二地方銀行だ。預金1兆946億円、店舗117。本紀行で以前に取り上げた仙台銀行と同じ、じもとホールディングスの傘下にある。いわば、宮城の仙台銀行と山形のきらやか銀行が、一つのグループで東北を支える形だ。

山形は、米やさくらんぼ、果樹を中心とする農業県として知られる。雪深い気候のもと、地域の経済は農業と、それを支える中小事業者によって営まれてきた。東北の中堅都市・山形市を中心に、製造業や商業も広がる。この東北の地で、地域の中小企業に資金を流し続けることが、きらやか銀行に課された役割だ。そしてその役割には、重い背景がある。この事情が、きらやか銀行の数字を読む鍵になる。

この銀行の数字で目を引くのは、預貸率87.9%という高さと、不良債権比率5.82%という、地銀としては高めの水準だ。集めた預金の9割近くを貸出に回している。なぜここまで深く貸し込むのか。その背景には、公的資金という重荷と、それと一体になった使命がある。

まず、数字を並べる

きらやか銀行の預金は1兆946億円、貸出金は9,620億円、預貸率87.9%。自己資本比率は8.49%、不良債権比率は5.82%。中小企業等向けの貸出先は3万件を超える。

きらやか銀行(2025年3月期)
預金10,946億円
貸出金9,620億円
預貸率87.9%
自己資本比率8.49%
不良債権比率5.82%
中小企業等向け貸出先33,293件
店舗117店

預金の9割近くを貸す。その背景にある公的資金と使命を読む。

87.9%を、公的資金という背景から読む

預貸率87.9%は、地方銀行のなかでもかなり高い。集めた預金の大半を貸出に回しているということだ。この積極的な貸出の背景には、きらやか銀行が背負ってきた公的資金がある。

きらやか銀行は、東日本大震災後の対応や、その後のコロナ禍における中小企業支援のため、金融機能強化法にもとづいて国から公的資金を受け入れてきた。親会社のじもとホールディングスを通じて、累計で数百億円規模の優先株を国に発行する形である。国の資本参加を受けた金融機関は、その資金を活かして、地元の中小企業に積極的かつ円滑に資金を供給することが基本方針として求められる。つまり、預貸率87.9%という高さは、「公的資金を背景に、宮城・山形の中小企業へ貸し込む」という使命と一体になった数字だと読める。グループの経営方針も、「宮城と山形をつなぎ、中小企業支援を通じて地域に貢献する」ことを掲げている。

同時に、不良債権比率5.82%という、地銀としては高めの数字も、この使命と無関係ではない。厳しい経営環境にある地元の中小企業を支えるために積極的に貸せば、その分、焦げ付きのリスクも引き受けることになる。自己資本比率が8.49%と、地銀として高くない水準であることも、楽な経営ではないことをうかがわせる。もちろん、不良債権比率には個別の事情も絡むため断定はできないが、公的資金を背負い、リスクを取ってでも地元に貸すという姿勢を抜きに、この数字は読めない。

公的資金返済という、もう一つの課題

公的資金は、いずれ返済しなければならない。報道によれば、きらやか銀行と仙台銀行をあわせたグループの公的資金の返済は、利益を積み上げて行う計画とされるが、その道のりは平坦ではないと伝えられている。地元の中小企業を支えながら、同時に自らの収益基盤を固め、公的資金を返していく——この二つを両立させることが、きらやか銀行とじもとホールディングスに課された課題だ。預貸率87.9%という攻めの数字の裏には、こうした重い背景がある。

借り手にとっての意味

積極的に貸し出す銀行は、資金を必要とする地元の中小企業にとって、頼れる存在になりうる。とりわけ、公的資金を背景に中小企業支援を使命とする銀行は、厳しい局面の事業者を支える役割を担う。ただし、預貸率の高さや支援の姿勢が、個別の融資の可否を保証するものではない。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。

数字は、背負ったものを映す

預貸率87.9%という高さと、不良債権比率5.82%という水準は、震災とコロナを経て公的資金を背負い、それでも——いや、だからこそ——宮城・山形の中小企業へ深く貸し込んできた銀行の姿を映している。同じ「預金を超えるほどに貸す」銀行でも、グループの資金力で攻める北九州銀行とは違い、ここには公的資金と地域支援という固有の使命がある。数字は、その金融機関が何を背負い、何のために貸してきたかを語る。

各地の金融機関には、それぞれの土地や立場の事情が刻まれた、それぞれの姿がある。同じじもとホールディングス傘下で宮城を支える仙台銀行とあわせて読むと、グループが東北で担うものが見えてくる。また、同じ山形県でも、広い店舗網で県全体を覆うこの第二地銀とは対照的に、置賜の狭い商圏に人の縁で深く根ざす山形第一信用組合を並べると、一つの県の金融の重層性が見えてくる。そして、公的資金を背負ってリスクを取りながら中小企業を支えるこの銀行とは別に、県の経済を代表し手堅く歩む県トップバンクの山形銀行もある。同じ県の二つの銀行を並べると、立場と使命の違いが数字に表れている。山形県の他の金融機関は、山形県の地域金融機関のページからどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
きらやか銀行・じもとホールディングスの公的資金(金融機能強化法にもとづく資本参加、震災特例・コロナ特例)および中小企業支援を基本方針とする経営、公的資金返済の計画に関する記述=じもとホールディングスおよび金融庁の開示資料・各種報道(日本経済新聞等)にもとづく。
山形県の農業(米・さくらんぼ・果樹)に関する記述=各種公開情報。

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