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アルプス中央信用金庫——伊那谷で、あるしんは何に貸すか

預貸率43.2%、預金3,413億円、自己資本比率9.56%、不良債権比率5.14%。長野県伊那市に本店を置くアルプス中央信用金庫。中央・南アルプスを仰ぐ伊那谷に根ざす「あるしん」が、何に貸すのか。同じ長野の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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長野県の伊那市に本店を置くアルプス中央信用金庫は、預金3,413億円を持つ信用金庫だ。地元で「あるしん」と呼ばれ、上伊那地区(一部下伊那を含む)を地盤とする。中央アルプスと南アルプスを仰ぐ伊那谷に根ざす信金だ。

本拠の伊那市は、長野県の南部、伊那谷の中心都市のひとつだ。東に南アルプス、西に中央アルプスがそびえ、その間を天竜川が南北に貫く。県下有数の肥沃な大地が広がり、農業が盛んなほか、精密機械や電子部品などの製造業も根づく。高遠城址の桜、信州そばの里としても知られる。「あるしん」という愛称と「アルプス中央」という名は、この二つのアルプス連峰と、その中央を流れる天竜川の雄大な自然から採られた。アルプス中央信用金庫は、こうした二つのアルプスに抱かれた伊那谷に根ざし、地域の中小事業者と暮らしに貸してきた。

この信金の数字を見ると、預貸率43.2%という低めの水準が目を引く。預金の4割強しか貸出に回さない。長野県の信金に共通する傾向だが、自己資本比率9.56%は、同じ長野の信金のなかではむしろ薄めだ。なぜ、伊那谷の信金は、こうした数字になるのか。同じ長野県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。アルプス中央信用金庫の預金は3,413億円、貸出金は1,475億円。預貸率は43.2%で、預金の4割強を貸出に回している。自己資本比率は9.56%、不良債権比率は5.14%。

同じ長野県の信金と比べてみる。同じ伊那谷・南信州の飯田信用金庫(預貸率43.7%・自己資本比率20.96%)、善光寺門前の長野信用金庫(預貸率40.9%・自己資本比率22.27%)、精密工業の諏訪信用金庫(預貸率45.9%・自己資本比率23.91%)と並べると、アルプス中央信用金庫の預貸率43.2%は長野県の信金として標準的だ。長野県の信金は、いずれも預金を集める力に対して貸出先が限られ、預貸率が4割台にとどまる傾向がある。あるしんもその傾向のなかにある。ただし自己資本比率9.56%は、飯田・長野・諏訪が20%超の厚さを持つのに対し、明らかに薄めだ。同じ伊那谷の飯田信金が20.96%の厚い資本を積むのとは対照的に、あるしんは10%を切る。これは、合併で発足してまだ歴史が浅く、資本の蓄積がこれからの段階にあることの表れだと読める。

長野県の信用金庫(令和7年3月末)
 アルプス中央信用金庫飯田信用金庫長野信用金庫諏訪信用金庫
本店伊那市飯田市長野市諏訪市
預貸率43.2%43.7%40.9%45.9%
自己資本比率9.56%20.96%22.27%23.91%
不良債権比率5.14%6.86%6.03%3.16%

いずれも長野県の信金。預貸率は4割台で横並びだが、あるしんの自己資本比率は他の3信金が20%超なのに対し明らかに薄め。

2つの信金の合併から——アルプス中央信用金庫の歩み

アルプス中央信用金庫は、比較的新しい信金だ。2003年(平成15年)7月22日、伊那信用金庫と赤穂信用金庫という、伊那谷の2つの信用金庫が合併して発足した。本店は伊那市荒井に置かれ、愛称は「あるしん」、金融機関コードは1396。「アルプス中央」という名は、中央アルプスと南アルプスの二つの連峰を仰ぎ、その中央を流れる天竜川の雄大な自然を象徴するとともに、地域経済の中核を担う向上心と求心力を託したものだという。上伊那地区(一部下伊那を含む)を事業区域とし、伊那谷の中小事業者の相互扶助の金融機関として歩んできた。近年は企業支援室を設けて経営課題の解決を支援し、「あるしん未来経営塾」や、三遠南信しんきんサミットへの加盟を通じて、リニア中央新幹線や三遠南信道路の開通を見据えた地域活性化にも取り組んでいる。

二つのアルプスに抱かれた伊那谷という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先の限られた地盤だ。肥沃な大地での農業、精密機械や電子部品の製造業はあるものの、山に囲まれた地形と人口減少もあって、大規模な資金需要は多くない。だから預貸率は4割強にとどまる。これは飯田・長野・諏訪と共通する。だが、あるしんが他の3信金と異なるのは、自己資本比率9.56%という薄めの資本だ。飯田信金が同じ伊那谷で20.96%の厚い資本を積むのに対し、あるしんは10%を切る。これは、2003年の合併で発足してまだ20年あまりと歴史が浅く、利益の蓄積による資本形成がこれからの段階にあることの表れだと読める。「経営体質の強化に努める」という金庫の言葉も、この資本の蓄積を意識したものだろう。不良債権比率5.14%は標準的で、伊那谷の中小に着実に貸してきたことをうかがわせる。

43.2%を、伊那谷から読む

アルプス中央信用金庫の預貸率43.2%という低めの水準は、二つのアルプスに抱かれた伊那谷で、預金は集まるが大規模な貸出先は限られるなか、地域の中小に着実に貸してきたことの表れだと読める。これは長野県の信金に共通する姿だ。預金は伊那谷全域から集まり、その4割強を地域に貸す。

そのうえで、自己資本比率9.56%という、他の長野県信金より明らかに薄い資本が、この信金の現在地を物語る。同じ伊那谷の飯田信金が長い歴史のなかで20%超の資本を積んできたのに対し、2003年合併のあるしんは、まだ資本の蓄積の途上にある。二つの信金が一つになり、伊那谷の経済の中核を目指して資本を固めていく——その途上の姿が、43.2%という預貸率と、9.56%という薄めの自己資本に表れていると読める。伊那谷で、あるしんは上伊那の経済とともに歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

長野の経済とともに

アルプス中央信用金庫の数字は、二つのアルプスに抱かれた伊那谷という土地と、2つの信金が合併して発足し資本を固めつつある歴史の、両方を映している。預金は集まるが大規模な貸出先は限られるなか、地域の中小に着実に貸しながら、経営体質の強化を進めてきた。伊那谷という土地柄と、合併から日の浅い発展途上の姿が、43.2%という預貸率と、9.56%という薄めの自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。アルプス中央信用金庫を見れば、伊那谷の経済と、そこで資本を固めながら歩む信金の姿が浮かぶ。長野県の他の金融機関は、同じ南信州の飯田信用金庫、善光寺門前の長野信用金庫、精密工業の諏訪信用金庫、県内最大の地銀八十二銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。長野県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、長野県の地域金融機関のページへ。

アルプス中央信用金庫と融資のはなし

アルプス中央信用金庫は、二つのアルプスに抱かれた伊那谷に根ざし、合併から資本を固めつつ地域の中小に貸す信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。

自己資本比率とは 自己資本比率とは、総資産に対する自己資本の割合で、金融機関の財務の健全性を示す。信用金庫の国内基準は4%。これを上回るほど健全とされる。同じ地域・同じ預貸率の信金でも、自己資本比率には差が出る。歴史の長い信金は利益の蓄積で資本が厚くなりやすく、合併で発足して日の浅い信金は資本の蓄積が途上にあることが多い。預貸率とあわせて見ることで、その信金の現在地が見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。飯田信用金庫・長野信用金庫・諏訪信用金庫の数値も同出典。
沿革(2003年7月22日に伊那信用金庫と赤穂信用金庫が合併して発足したこと、本店が伊那市荒井にあること、愛称が「あるしん」であること、金融機関コードが1396であること、上伊那地区〔一部下伊那を含む〕を事業区域とすること、「アルプス中央」の名が中央アルプス・南アルプスと天竜川にちなむこと、企業支援室や「あるしん未来経営塾」を設け三遠南信しんきんサミットに加盟していること)=アルプス中央信用金庫および各種公開情報にもとづく。
伊那・伊那谷の地理・歴史(伊那市、伊那谷、上伊那、中央アルプス、南アルプス、天竜川、高遠城址、信州そば、精密機械、電子部品、リニア中央新幹線、三遠南信道路)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。

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