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飯田信用金庫——南信州の水引のまちで、信金はなぜ厚い自己資本を持つのか

預貸率43.7%、預金6,129億円、自己資本比率20.96%、不良債権比率6.86%。飯田市に本店を置く飯田信用金庫。水引のまち・南信州に根ざし、際立って厚い自己資本を積む信金が、何に貸すのか。同じ長野の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。

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長野県の飯田市に本店を置く飯田信用金庫は、預金6,129億円を持つ信用金庫だ。店舗23。飯田市を中心に、下伊那・上伊那など南信州を地盤としている。

本拠の飯田市は、長野県の最南端に近い、南信州の中心都市だ。中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷に位置し、天竜川が南北に貫く。飯田は古くから水引(みずひき)の産地として知られ、祝儀袋などに使われる水引製品で全国一のシェアを誇る。元結(もとゆい)づくりから発展した伝統の地場産業だ。ほかに精密機械や食品加工も根づき、果樹をはじめとする農業も盛んだ。山に囲まれ、伝統産業と農業が息づく——飯田信用金庫は、こうした水引のまち・南信州に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字でまず目を引くのは、自己資本比率20.96%という厚さだ。信用金庫の国内基準は4%。それを大きく超える20%台は、際立って手厚い。一方で預貸率は43.7%と、預金の半分に満たない。なぜ、南信州の信金は、これほど厚い自己資本を積み、貸出を抑えめにするのか。同じ長野を地盤とする信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。飯田信用金庫の預金は6,129億円、貸出金は2,676億円。預貸率は43.7%で、預金の半分に満たない。自己資本比率は20.96%、不良債権比率は6.86%。店舗数は23、中小企業等への貸出残高は2,232億円。

同じ長野県で、善光寺門前の長野信用金庫(預貸率40.9%・自己資本比率22.27%)や、精密工業の諏訪信用金庫(預貸率45.9%・自己資本比率23.91%)と比べると、飯田信用金庫も同じく、低めの預貸率と厚い自己資本を併せ持つ。長野県の信金は、いずれも預金を集める力に対して貸出先が限られ、貸出を抑えめにして厚い資本を積む傾向がある。飯田信用金庫の自己資本比率20.96%・預貸率43.7%は、その典型の一つだ。山に囲まれ、伝統産業と農業が息づく南信州で、貸出を抑え、厚い資本を積む——それが、この信金の数字の姿だ。

長野県の信用金庫・自己資本比率の比較(令和7年3月末)
 飯田信用金庫長野信用金庫諏訪信用金庫
本店飯田市長野市諏訪市
預金6,129億円8,859億円4,212億円
預貸率43.7%40.9%45.9%
自己資本比率20.96%22.27%23.91%
不良債権比率6.86%6.03%3.16%

長野県の信金は、いずれも低めの預貸率と厚い自己資本を併せ持つ。飯田信用金庫もその傾向にある。山に囲まれた土地で、貸出を抑え、厚い資本を積む。

水引のまちとともに——飯田信用金庫の歩み

飯田信用金庫は、南信州の中小・零細事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。水引の製造業者、精密機械や食品加工の中小、果樹農家、地元の商店、そして伊那谷に住む人々——こうした人々が会員となり、預金を預け、必要なときに資金を借りる。合併を経て、南信州に広く根ざす信金へと歩んできた。

南信州という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先の限られた地盤だ。水引や精密機械、食品加工といった地場産業はあるものの、規模は大きくなく、山に囲まれた地形と人口減少もあって、大規模な資金需要は多くない。会員から集めた預金を、地元の中小に貸し、残りは有価証券などの運用に向ける——その結果、預貸率は43.7%と低めになり、運用の成果や利益の蓄積が自己資本比率20.96%という厚みになって表れる。不良債権比率6.86%はやや高めだが、これは地場産業や農業の浮き沈みを引き受けてきた跡だと読める。厚い自己資本は、その焦げ付きを十分に吸収できる備えでもある。

20.96%を、南信州から読む

飯田信用金庫の自己資本比率20.96%という厚さは、水引のまち・南信州で、貸出を抑えめにし、運用と利益の蓄積で資本を厚く積んできたことの表れだと読める。山に囲まれ、伝統産業と農業が息づく伊那谷は、預金は集まるが、大規模な貸出先の多くはない土地だ。飯田信用金庫は、地元の中小に着実に貸しつつ、残りを運用に向け、厚い自己資本を築いてきた。

預貸率43.7%という抑えめの貸出と、不良債権比率6.86%というやや高めの焦げ付き、そしてそれを十分に吸収できる20.96%という厚い資本——この組み合わせは、南信州という土地で、無理に貸さず、守りを固めてきた信金の姿を映している。攻めるより守る。それが、飯田信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

長野の経済とともに

飯田信用金庫の数字は、水引のまち・南信州という土地と、そこで貸出を抑えめにして厚い資本を積む信金の歩みの、両方を映している。預金の半分に満たない貸出にとどめ、運用と利益の蓄積で資本を厚くしながら、飯田を中心とする南信州の中小・零細事業者を支えてきた。山に囲まれ、伝統産業と農業が息づく経済が、20.96%という厚い自己資本と43.7%という低めの預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。飯田信用金庫を見れば、南信州の経済と、そこで守りを固める信金の姿が浮かぶ。長野県の他の金融機関は、善光寺門前の長野信用金庫、精密工業の諏訪信用金庫、そして長野県信用組合もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。長野県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、長野県の地域金融機関のページへ。

飯田信用金庫と融資・保証のはなし

飯田信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。預金を運用にもあてる堅実な経営でも、いざ借りるとなれば日頃の取引と信用が土台になります。口座と信用を育てる、融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。山に囲まれ、伝統産業と農業が中心で大規模な貸出先の少ない土地では、預金を集める力に対して貸出が伸びにくく、預貸率が4割前後に下がることがある。残りは有価証券などの運用に向かい、その蓄積が厚い自己資本となって表れる。自己資本比率とあわせて見ることで、その信金の守りの厚さが見えてくる。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。長野信用金庫・諏訪信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(飯田市に本店を置き、下伊那・上伊那など南信州を地盤とする信用金庫であること、合併を経て南信州に広く根ざす信金になったこと、飯田市が長野県最南部に近い南信州の中心都市で中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷に位置し天竜川が貫くこと、飯田が水引の産地として知られ元結づくりから発展し祝儀袋などの水引製品で全国一のシェアを誇ること、精密機械や食品加工が根づき果樹をはじめ農業も盛んなこと)に関する記述=飯田信用金庫および各種公開情報にもとづく。
飯田・南信州の地理・経済(飯田、伊那谷、天竜川、中央アルプス、南アルプス、水引、元結、精密機械、食品加工、果樹)に関する記述=各種公開情報。

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