長岡信用金庫——米百俵と花火のまち・長岡で、信金は何に貸すか
預貸率40.4%、自己資本比率15.86%。長岡市に本店を置く長岡信用金庫。複数の信用組合を源流とし、米百俵と長岡花火のまちに根ざす信金の数字を、地域に向き合う中間型という視点から読みます。
- 2026.06.19【保証協会】26年度補正予算成立、セーフティネット保証5号の事前相談を開始。指定業種で、直近月の売上高が前年同月比で5%以上減少等の要件(経産省PDF)を満たす中小事業者が対象。
新潟県長岡市に本店を置く長岡信用金庫は、預金2,202億円、貸出金890億円、店舗16。長岡市を中心に、信濃川流域の中越地域を地盤とする信用金庫です。
本店のある長岡市は、新潟県のほぼ中央、信濃川の流域に開けた中越地方の中心都市です。米どころ越後を象徴する穀倉地帯であると同時に、機械・金属加工をはじめとする製造業も根づく、産業の厚みを持つまちでもあります。語り継がれる物語にも事欠きません。戊辰戦争で焦土となった長岡藩が、見舞いに届いた米百俵を売り、その金を学校の設立にあてた「米百俵」の故事——目先の困窮よりも未来への投資を選んだその精神は、いまも長岡の気風として語られます。慰霊と復興の祈りを込めて信濃川の夜空を彩る長岡花火、そして連合艦隊司令長官・山本五十六を生んだ土地——この、米と工業、そして未来へ託す気風が重なる土地柄が、長岡信用金庫の数字を読む鍵になります。
この信用金庫の成り立ちは、明治末から大正期にかけて長岡の地に生まれた複数の信用組合にさかのぼります。1945年に長岡・千手町・同志・草生津・長岡市合同の各信用組合が合併して長岡市信用組合となり、戦後の信用金庫制度のもとで信用金庫へと改組しました。地域の小さな組合が寄り合って育った歩みです。数字の面で目を引くのは、預貸率40.4%という控えめな水準と、自己資本比率15.86%という相応の厚みの組み合わせです。
まず、数字を並べる
長岡信用金庫の預金は2,202億円、貸出金は890億円、預貸率40.4%。自己資本比率は15.86%、不良債権比率は4.58%。中小企業等向けの貸出先は6,304件です。
| 預金 | 2,202億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 890億円 |
| 預貸率 | 40.4% |
| 自己資本比率 | 15.86% |
| 不良債権比率 | 4.58% |
| 中小企業等向け貸出先 | 6,304件 |
| 店舗 | 16店 |
預貸率40.4%・自己資本15.86%。米と花火のまちに根ざす信金の数字を読む。
40.4%と15.86%を、米百俵のまちから読む
預貸率40.4%という控えめな水準と、自己資本比率15.86%という相応の厚み。この組み合わせは、急いで貸し増すよりも足元を固めることを選んだ、堅実な信金の姿を示しています。一方で不良債権比率は4.58%と、地方の信金として中庸からやや高めの水準にあり、地域経済の事情も映していると読めます。
長岡信用金庫が貸す相手は、長岡市を中心とする地元の中小事業者です。米作を中心とする農業、信濃川流域に集積する機械・金属加工などの製造業、まちの建設業や商業が、その融資先に含まれると考えられます。製造業の厚みがある一方で、人口減少が進む地方都市では、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率40.4%という控えめな水準は、そうした土地の事情を映していると読めます。6,304件という中小企業等向けの貸出先は、地域の小さな事業者に資金を届けてきたこの信金の地盤の広がりを示しています。
「米百俵」の故事が語るのは、目先より未来に資金を振り向ける選択でした。急いで貸し増して傷むより、足元を固めて地域と長く付き合う——長岡信用金庫の控えめな預貸率と相応の自己資本は、その気風に通じるものとも読めます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、米と工業、未来へ託す気風が重なる土地を抜きに、この信金の数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
長岡信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。長岡信用金庫にとって、その「地元」とは、米と製造業を柱とし、人口減少が進む中越地域の経済です。複数の信用組合が寄り合って育ったこの信金にとって、地元の小さな事業者に資金を回すことは、制度の枠であると同時に、成り立ちそのものでもあります。控えめな預貸率と相応の自己資本は、借り手が構造的に細っていく土地で堅実さを優先した、一つの帰結とも読めます。
同じ県の、金融機関と並べてみる
同じ新潟県を代表する地銀として、第四北越銀行(預貸率65.7%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・第四北越銀行(預貸率65.7%)と、中越の長岡に根ざすこの長岡信用金庫(預貸率40.4%)とを並べると、同じ新潟でも、県全域を相手にする地銀と、特定の地域に密着する信金とで、貸す範囲も性格も異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、第四北越銀行の記事もあわせてどうぞ。
長岡の北、信濃川をくだった金属加工のまちには、三条信用金庫があります。預貸率46.5%の三条信用金庫は、金物産地・燕三条のものづくりに根ざす信金でした。米と製造業の長岡信用金庫(預貸率40.4%)とは、同じ中越でも地盤の性格が異なります。金物産地に根ざす信金と、米と花火のまちに根ざす信金。近接するまちの対比は、三条信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、米作や製造業を担う長岡の事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。控えめな預貸率は、堅実に足元を固める姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、根を張る土地を映す
預貸率40.4%という控えめな水準と、自己資本比率15.86%という相応の厚みは、信濃川の流域、米と工業のまち長岡に根を張り、地元の事業者に向き合ってきた信金の姿を映しています。急いで貸し増す信金もあれば、未来へ託す気風のもと足元を固める信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。長岡信用金庫の数字は、米百俵と花火のまちに根ざす信金の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。新潟県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、新潟県の地域金融機関のページもどうぞ。
長岡信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。
- → 口座を育てる
- → 積立で信用をつくる
- → 与信枠の考え方
- → 創業支援保証とは
- → セーフティネット保証とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
長岡信用金庫の沿革(明治末〜大正期の複数の信用組合を源流とし、1945年に各信用組合が合併して長岡市信用組合となり、戦後に信用金庫へ改組)、長岡市を中心に中越地域を事業区域とすること、本店所在地に関する記述=長岡信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
長岡市の米作・製造業、米百俵の故事、長岡花火、山本五十六に関する記述=各種公開情報。
第四北越銀行・三条信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。
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