大分県信用組合——県全域を地盤とする大型信組は、何に貸すか
預貸率62.0%、預金5,121億円、店舗38。大分市に本店を置く大分県信用組合。大分県全域を地盤とし、よく貸す大型の信用組合。県都の信金とは異なる貸し方を、その数字と歴史から読む。
大分県大分市に本店を置く大分県信用組合は、地元で「けんしん」と呼ばれる信用組合だ。預金5,121億円、店舗38。信用組合のなかでは全国でも有数の規模を持ち、大分県のほぼ全域を地盤として、地元の中小事業者と暮らしを支えてきた。
信用組合は、信用金庫よりもさらに組合員の枠が限られた、相互扶助の金融機関だ。多くは地域や業種を限って、狭く深く貸す。だが大分県信用組合は、その名のとおり大分県という県全体を営業区域とし、県都・大分市から、別府・中津・日田・佐伯といった県内各地まで、広く店舗を展開している。県域を地盤とする信用組合という、信組のなかでは比較的大きな枠を持つ組織である。
この信組の数字には、ある特徴がある。預貸率62.0%——信用組合としては、よく貸している部類に入る。県全域から集めた預金の6割超を、地元の貸出に回している。同じ大分市にある信用金庫とも比べながら、その貸し方を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。大分県信用組合の預金は5,121億円、貸出金は3,174億円。預貸率は62.0%で、預金の6割超を貸出に回している。自己資本比率は9.43%、不良債権比率は1.76%と低い。店舗数は38、中小企業等への貸出残高は2,666億円にのぼる。
目を引くのは、預貸率62.0%という高さと、不良債権比率1.76%という低さだ。よく貸しながら、焦げ付きは少ない。同じ大分市に本店を置く大分信用金庫(預貸率44.5%・自己資本比率20.29%)と比べると、両者の貸し方の違いがはっきりする。大分信用金庫が、預金の半分弱を貸し、厚い自己資本で守りを固めるのに対し、大分県信用組合は、預金の6割超を貸出に向け、より積極的に貸す。同じ県都を拠点としながら、信金と信組が異なる経営の姿を見せている。
| 大分県信用組合 | 大分信用金庫 | |
|---|---|---|
| 種別 | 信用組合 | 信用金庫 |
| 預金 | 5,121億円 | 2,458億円 |
| 預貸率 | 62.0% | 44.5% |
| 自己資本比率 | 9.43% | 20.29% |
| 不良債権比率 | 1.76% | 4.92% |
同じ大分市を拠点とする信組と信金。県全域を地盤とする大分県信用組合は、よく貸し焦げ付きも低い。一方、大分信用金庫は貸出を抑え、厚い自己資本で守りを固める。同じ県都で、貸し方が対照的だ。
県全域を地盤に——大分県信用組合の歩み
大分県信用組合は、大分県内の信用組合が合併を重ねて、県域を地盤とする一つの大きな信組へと育ってきた。県都・大分市を中心に、別府の観光業、中津・日田の商工業、佐伯の水産業と、県内各地の多様な産業に資金を供給している。県全体を営業区域とすることで、特定の地域や産業の浮き沈みに左右されにくく、幅広い事業者に貸せる強みを持つ。
大分県は、温泉観光の別府・湯布院で知られるが、近年は臨海部に半導体や自動車関連の企業が立地し、ものづくりの側面も持つ。県都・大分市は九州東部の経済の中心であり、商業・サービス業も厚い。こうした県内の多様な事業者に、県全域を地盤として貸すことが、大分県信用組合の役割になっている。信用組合でありながら県域という広い枠を持つことが、よく貸しながら焦げ付きを抑えることを可能にしていると読める。
62.0%を、県域の信組から読む
大分県信用組合の預貸率62.0%は、信用組合としてよく貸す部類に入る。この背景には、県全域という広い地盤がある。県都・大分市の商工業、別府の観光業、佐伯の水産業——県内のさまざまな産業に貸す相手がいることで、貸出を伸ばす余地が広がる。狭い地域に限られた信組に比べ、県域を地盤とすることが、高めの預貸率を支えている。
不良債権比率1.76%という低さは、よく貸しながらも、相手をよく見て堅実に貸してきたことを示している。県全域に分散して貸すことで、特定の産業の不振に左右されにくく、リスクを抑えながら積極的に貸せる——それが、この信組の数字の核心にある。同じ県都の大分信用金庫が、貸出を抑え厚い自己資本で守るのとは対照的に、大分県信用組合は、広い地盤を生かしてよく貸す。地域金融には、こうした異なる経営の姿があり、それぞれの形で地元に資金を届けている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
大分の経済とともに
大分県信用組合の数字は、温泉観光とものづくりが共存する大分県という土地と、県全域を地盤としてよく貸す大型信組の歩みの、両方を映している。県内の信組が合併を重ねて県域の枠を持ち、別府の観光業から佐伯の水産業まで、多様な事業者に分散して貸してきた。広い地盤を生かして積極的に貸す姿が、62.0%という高めの預貸率と、1.76%という低い焦げ付きの両立に表れている。
銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。大分県信用組合を見れば、温泉とものづくりの大分の経済と、県全域に広く貸す大型信組の姿が浮かぶ。同じ大分市の、守りを固める信金は、大分信用金庫の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。大分県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、大分県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合・信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。大分信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(大分市に本店を置き、大分県全域を地盤とする信用組合であること、県内の信用組合が合併を重ねて県域の大型信組となったこと、別府・中津・日田・佐伯など県内各地に店舗を展開すること)に関する記述=大分県信用組合および各種公開情報にもとづく。
大分県の地理・産業(県都・大分市、別府・湯布院の温泉観光、佐伯の水産業、臨海部の半導体・自動車関連産業)に関する記述=各種公開情報。