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備北信用金庫——備中高梁・山田方谷の地で、信金は何に貸すか

預貸率37.9%、自己資本比率19.4%、不良債権比率2.71%。高梁市に本店を置く備北信用金庫。高梁信用組合を源流とし、備中松山城と山田方谷ゆかりの中山間地に根ざす信金の数字を、厚い守りという視点から読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 岡山県

岡山県高梁市に本店を置く備北信用金庫は、預金1,252億円、貸出金475億円、店舗10。高梁市を中心に、新見市など備中北部(備北)の中山間地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある高梁市は、岡山県の中西部、高梁川の上流に開けた中山間のまちです。雲海に浮かぶ姿で知られ、現存天守を持つ備中松山城を擁する城下町であり、ベンガラ(弁柄)の赤い町並みが残る吹屋のふるさと村でも知られます。そしてこの地は、幕末に備中松山藩の財政を立て直した儒者・山田方谷ゆかりの土地でもあります。藩の財政が窮していた時代に、倹約と殖産興業によって藩財政を再建した方谷の事績は、いまも地域に語り継がれています。人口減少と高齢化が進む中山間地という土地柄が、備北信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の成り立ちは、1931年に設立された「有限責任高梁信用組合」にさかのぼります。戦後の制度のもとで1952年に「備北信用金庫」となり、1995年には新見信用金庫と合併して、現在の備北信用金庫となりました。備中北部の信用金庫が寄り合って育った歩みです。数字の面で目を引くのは、自己資本比率19.4%という、信用金庫としては厚い守りと、不良債権比率2.71%という低さの組み合わせです。

まず、数字を並べる

備北信用金庫の預金は1,252億円、貸出金は475億円、預貸率37.9%。自己資本比率は19.4%、不良債権比率は2.71%。中小企業等向けの貸出先は3,571件です。

備北信用金庫(令和7年3月末)
預金1,252億円
貸出金475億円
預貸率37.9%
自己資本比率19.4%
不良債権比率2.71%
中小企業等向け貸出先3,571件
店舗10店

預貸率37.9%・自己資本19.4%。中山間のまちに根ざす信金の、厚い守りを読む。

37.9%と19.4%を、中山間のまちから読む

預貸率37.9%という控えめな水準と、自己資本比率19.4%という厚み。信用金庫の自己資本比率はおおむね10〜20%台で、19.4%は厚い方に入ります。不良債権比率2.71%という低さとあわせて読むと、ひとつの輪郭が浮かびます。急いで貸し増すよりも、まず足元を固め、確実な先に貸して傷を抑える——そうした守りを固める信金の姿です。

備北信用金庫が貸す相手は、高梁市を中心とする地元の中小事業者です。中山間地の農林業、城下町・観光に連なる商業やサービス業、まちの建設業や小売業が、その融資先に含まれると考えられます。人口減少と高齢化が進む中山間地では、製造業の大きな集積も乏しく、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率37.9%という低めの水準は、そうした土地の事情を映しています。借り手が構造的に細っていくなかで無理に貸し増せば、限られた地域に資産を集中させるリスクを抱えることになります。厚い自己資本と低い不良債権は、その環境で確実さを優先してきた経営の輪郭と読めます。

奇しくも、この地は藩財政を倹約と殖産で立て直した山田方谷の故郷です。派手な拡大ではなく、堅実に足元を固めるという経営の構えは、その土地の記憶にどこか通じるものがあります。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、人口減の進む中山間地という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。

備北信用金庫が示すのは、中山間のまちの足元を支える小さな信金の、厚い守りと堅実さです。人口減の進む土地で、急いで貸し増すより確実な先に貸す。控えめな預貸率と厚い自己資本、低い不良債権は、伸びを急がず土地に根を張る信金の姿の表れと読めます。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

備北信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。備北信用金庫にとって、その「地元」とは、城下町と中山間地を抱え、人口減少が進む備中北部の地域経済です。借り手となる地元の中小が構造的に細っていくなかで、それでも無理に地区内へ融資を積み増せば、限られた地域に資産を集中させるリスクを抱えることになります。控えめな預貸率と厚い自己資本は、会員資格が地区内の中小に絞られるという制度の枠のなかで、堅実さを優先した一つの帰結とも読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ岡山県を代表する地銀として、中国銀行(預貸率79.7%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・中国銀行(預貸率79.7%)と、備中北部の中山間地に根ざすこの備北信用金庫(預貸率37.9%)とを並べると、同じ岡山でも、県全域を相手にする地銀と、特定の中山間地に密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、中国銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ岡山県の中山間地に根ざす信金として、吉備信用金庫があります。預貸率35.4%の吉備信用金庫と、預貸率37.9%の備北信用金庫は、ともに人口減の進む地域で控えめな預貸率にとどまる信金どうしです。中山間地という共通の土地の事情が、近い数字の形を生んでいます。岡山の中山間地に根ざすもう一つの信金の姿は、吉備信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、中山間地で農林業や商業を担う高梁の小さな事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。ただし、預貸率が控えめで自己資本が厚いことは、必ずしも「借りやすい」ことを意味しません。守りを固める姿勢は、確実な先を選ぶ姿勢の裏返しでもあるからです。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率37.9%という控えめな水準と、自己資本比率19.4%という厚みは、高梁川の上流、城下町と中山間地に根を張り、地元の足元を堅実に支えてきた信金の姿を映しています。急いで貸し増す信金もあれば、伸びを急がず守りを固める信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。備北信用金庫の数字は、山田方谷ゆかりの地に根ざす信金の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岡山県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岡山県の地域金融機関のページもどうぞ。

備北信用金庫と融資・保証のはなし

備北信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
備北信用金庫の沿革(1931年に有限責任高梁信用組合として設立、1952年に備北信用金庫へ、1995年に新見信用金庫と合併)、高梁市・新見市など備北地域を事業区域とすること、本店所在地に関する記述=備北信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
備中松山城、吹屋(ベンガラ)、山田方谷、高梁川、中山間地の人口減少に関する記述=各種公開情報。
中国銀行・吉備信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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