吉備信用金庫——古代吉備国の総社で、きびしんはなぜ預金の3割台しか貸さないか
預貸率35.4%、預金1,827億円、自己資本比率14.38%、不良債権比率4.61%。岡山県総社市に本店を置く吉備信用金庫。古代吉備国の中心・総社に根ざし、預金の3割台しか貸さない信金が、なぜそうなるのか。同じ岡山の信金と比べながら、その数字と歴史を読む。
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岡山県の総社市(そうじゃし)に本店を置く吉備信用金庫は、預金1,827億円を持つ信用金庫だ。店舗12。「きびしん」の呼び名で知られ、総社市を中心に、隣接する倉敷市・岡山市にも店舗を構える。古代吉備国の中心・総社に根ざす信金だ。
本拠の総社は、その名が「総(すべ)ての社(やしろ)」に由来する、古代吉備国の中心地だ。かつて吉備は、大和・出雲と並ぶ大きな勢力を誇った地で、いまも造山古墳をはじめとする巨大古墳や、鬼ノ城(きのじょう)、備中国分寺の五重塔など、古代の面影を色濃く残す。総社は岡山市・倉敷市に近い地方都市であり、田園と史跡、そして住宅地が広がる。吉備信用金庫は、こうした歴史と田園の総社に、その名「吉備」を冠して根ざしてきた。
この信金の数字で最も目を引くのは、預貸率35.4%という低さだ。預金1,827億円に対し、貸出金は646億円。預かったお金の3割台しか貸していない。一方で自己資本比率は14.38%と厚い。なぜ、吉備の信金は、これほど貸さないのか。同じ岡山の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。吉備信用金庫の預金は1,827億円、貸出金は646億円。預貸率は35.4%で、預金の3割台しか貸出に回していない。自己資本比率は14.38%、不良債権比率は4.61%。店舗数は12。
同じ岡山県の信金と比べてみる。県都・岡山のおかやま信用金庫(預貸率41.2%・預金5,915億円)、備前の備前日生信用金庫(預貸率32.6%)、津山の津山信用金庫(預貸率44.3%)と並べると、吉備信用金庫の預貸率35.4%は、岡山の信金のなかでも低めの水準にある。岡山県の信金はおしなべて預貸率が低い傾向にあるが、吉備もその一つだ。一方で自己資本比率14.38%は、おかやま(11.81%)や津山(10.68%)より厚い。貸出を絞り、資本を厚く保つ守りの経営がうかがえる。これは、総社という地方都市で大型の資金需要が乏しいことと、堅実な経営姿勢の、両方を映していると読める。
| 吉備信用金庫 | おかやま信用金庫 | 津山信用金庫 | |
|---|---|---|---|
| 本店 | 総社市 | 岡山市 | 津山市 |
| 預貸率 | 35.4% | 41.2% | 44.3% |
| 自己資本比率 | 14.38% | 11.81% | 10.68% |
| 不良債権比率 | 4.61% | 5.55% | 2.61% |
いずれも岡山県の信金。吉備は預貸率が低めだが、自己資本比率は厚い。守りの経営を映す。
吉備信用組合から——吉備信用金庫の歩み
吉備信用金庫は、1950年(昭和25年)10月1日、「吉備信用組合」として設立された。1952年(昭和27年)4月、信用金庫法に基づき吉備信用金庫となった。本店は総社市中央に置かれ、「心のふれあい、大切に…」を理念に掲げて、総社に根ざし、総社とともに歩んできた。2017年(平成29年)からは、総社市の指定金融機関を受託している。地方都市の信金として、総社・倉敷・岡山のエリアで地域の暮らしと商いを支えてきた。
歴史と田園の総社という土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。岡山市・倉敷市に近い地方都市ではあるが、大きな工業集積や旺盛な企業の資金需要があるわけではない。古墳や史跡に彩られた田園地帯では、預金は地域から集まっても、それを吸収するだけの大型の貸出先は多くない。だから貸出は預金ほどには伸びず、預貸率は3割台にとどまる。これは、貸す力がないというより、地域の身の丈に合った貸出に徹し、無理に貸さずに資本を厚く保つ守りの経営の表れだと読める。自己資本比率14.38%という厚さは、その堅実な姿勢を裏づけている。総社市の指定金融機関として地域の公金を扱いながら、地元の暮らしと商いを慎重に支える——それが、古代吉備国の中心に根ざす「きびしん」の生き方だと読める。
35.4%を、総社から読む
吉備信用金庫の預貸率35.4%という低さは、大型の資金需要が乏しい歴史と田園の総社で、地域の身の丈に合った貸出に徹してきたことの表れだと読める。古墳と史跡に彩られた地方都市で、信金として貸せる相手に貸してきた。預金は集まっても、貸出は預金ほどには伸びない。
そのうえで、自己資本比率14.38%という厚さを保っていることが、この信金の性格を物語る。貸出を絞り、資本を厚く保ち、慎重に運用する。無理に貸さず、地域とともに健全であろうとする守りの経営——その姿勢が、35.4%という低い預貸率に表れていると読める。預貸率が低いこと自体は、その信金が悪いことを意味しない。土地の経済が大型の資金需要を生まないとき、貸出を絞って資本を守ることは、ひとつの堅実な選択だ。古代吉備国の中心・総社で、「きびしん」は地域とともに慎重に歩んでいる。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
岡山の経済とともに
吉備信用金庫の数字は、歴史と田園の総社という土地と、そこで貸出を絞りながら資本を守ってきた信金の生き方の、両方を映している。地域の身の丈に合った貸出に徹し、資本を厚く保ちながら、総社の暮らしと商いを支えてきた。大型の資金需要が乏しい土地柄が、35.4%という低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。吉備信用金庫を見れば、総社の経済と、そこで守りの経営に徹する信金の姿が浮かぶ。岡山県の他の金融機関は、県都のおかやま信用金庫、備前の備前日生信用金庫、津山の津山信用金庫、県内最大の地銀中国銀行、第二地銀のトマト銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。岡山県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、岡山県の地域金融機関のページへ。
吉備信用金庫は、古代吉備国の中心・総社に根ざした信用金庫です。地元の事業者に貸す信金とどう付き合うか、口座づくりから与信の考え方まで、知っておきたい銀行取引の基礎をまとめました。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。おかやま信用金庫・津山信用金庫の数値も同出典。
沿革(1950年10月に「吉備信用組合」として設立されたこと、1952年4月に信用金庫法に基づき吉備信用金庫となったこと、本店が総社市中央にあること、2017年から総社市の指定金融機関を受託していること、総社・倉敷・岡山のエリアに店舗を持つこと、「心のふれあい、大切に…」を理念に掲げること)=吉備信用金庫および各種公開情報にもとづく。
総社・吉備の地理・歴史(総社市、古代吉備国、造山古墳、鬼ノ城、備中国分寺、岡山市・倉敷市との近接)に関する記述=各種公開情報・歴史的事実。
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