成協信用組合——コミュニティから生まれた信組は、なぜ預金の8割を貸せるのか
預貸率83.6%、預金4,816億円、店舗15。東大阪市に本店を置く成協信用組合。在日コリアンのコミュニティを源流の一つとし、大阪の中小事業者に深く貸す信用組合。預金の8割超を貸出に回すその数字と歴史を、中立に読む。
大阪府東大阪市に本店を置く成協信用組合は、地元で「せいきょう」と呼ばれる信用組合だ。預金4,816億円、店舗15。信用組合のなかでは規模の大きい部類に入り、東大阪を中心に大阪府内の中小事業者に資金を供給してきた。
信用組合は、信用金庫よりもさらに組合員の枠が限られた、相互扶助の金融機関だ。多くは特定の地域や業種、あるいは特定のコミュニティに属する人々が、自分たちで資金を出し合い、自分たちのために融通し合う仕組みとして生まれた。成協信用組合も、そうしたコミュニティの相互金融を源流の一つに持つ。具体的には、戦後の大阪に根を下ろした在日コリアンの人々のコミュニティが、自分たちの事業や暮らしのために作った金融の組織が、その源流に連なっている。
この信組の数字には、ある際立った特徴がある。預貸率83.6%——集めた預金の8割を超える額を、貸出に回しているのだ。預貸率が3〜5割にとどまる信金・信組が多いなかで、これは際立って高い。なぜ、これほどよく貸せるのか。その背景にある歴史とともに、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。成協信用組合の預金は4,816億円、貸出金は4,024億円。預貸率は83.6%で、預金の8割を超える額を貸出に回している。自己資本比率は7.45%、不良債権比率は0.73%と低い。店舗数は15、中小企業等への貸出残高は4,024億円——貸出金のほぼ全額が、中小事業者向けである。
目を引くのは、預貸率83.6%という高さと、不良債権比率0.73%という低さの両立だ。よく貸しながら、焦げ付きは極めて少ない。同じ大阪で、市が生んだ信用金庫・大阪シティ信用金庫の預貸率が54.9%であることと比べると、その差は大きい。限られたコミュニティと地域のなかで、相手をよく知って貸す——その密着が、高い預貸率と低い焦げ付きの両立を支えていると読める。
| 成協信用組合 | 大阪シティ信用金庫 | |
|---|---|---|
| 種別 | 信用組合 | 信用金庫 |
| 預金 | 4,816億円 | 25,720億円 |
| 貸出金 | 4,024億円 | 14,125億円 |
| 預貸率 | 83.6% | 54.9% |
| 不良債権比率 | 0.73% | 6.25% |
同じ大阪の地域金融機関でも、成り立ちと貸し方は異なる。市が市民全体のために生んだ大阪シティ信用金庫に対し、成協信用組合は、より狭いコミュニティと地域に密着して貸す。預貸率は高く、焦げ付きは低い。
コミュニティの相互金融から——成協信用組合の歩み
成協信用組合の源流には、戦後の大阪に暮らした在日コリアンの人々が作った、相互金融の組織がある。戦後しばらくの時期、新しく事業を始めようとする人々のなかには、既存の銀行から十分な融資を受けにくい立場の人も少なくなかった。そうした人々が、自分たちで資金を出し合い、自分たちのコミュニティの事業のために融通し合う——その営みが、信用組合という形に育っていった。これは、特定のコミュニティが自前の金融を作るという、世界各地で見られる相互金融の歴史の、日本における一例でもある。
東大阪をはじめとする大阪の街には、町工場や商店、飲食店など、無数の中小・零細事業者がひしめいてきた。成協信用組合は、そうした事業者に深く関わり、合併を重ねながら規模を広げて、いまでは特定のコミュニティの枠を越えて、広く大阪の中小事業者に貸す信用組合へと育ってきた。出自はコミュニティの相互金融だが、いまは地域の中小金融の担い手の一つとして、その役割を果たしている。
83.6%を、密着する信組から読む
成協信用組合の預貸率83.6%は、信用組合のなかでもよく貸す部類に入る。この高さの背景には、相手をよく知って貸す、密着の金融がある。もともと、顔の見えるコミュニティのなかで資金を融通し合う相互金融から始まった組織だ。貸す相手の事業も人柄も、深く知ったうえで貸す——その関係の濃さが、集めた預金を積極的に貸出へ向けることを可能にしている。
そして、不良債権比率0.73%という低さが、その貸出が無理のないものであることを示している。よく相手を知って貸すからこそ、焦げ付きは少なく抑えられる。密着ゆえによく貸し、密着ゆえに焦げ付きが低い——その両立が、この信組の数字の核心にある。市民全体のために生まれた大阪シティ信用金庫が、幅広い層に貸すぶん預貸率が中位にとどまるのと対照的に、成協信用組合は、より狭い関係のなかで深く貸す。地域金融には、こうした濃淡の異なる担い手がいて、それぞれの相手に資金を届けている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
大阪の経済とともに
成協信用組合の数字は、町工場と商店がひしめく大阪・東大阪という土地と、コミュニティの相互金融から地域の中小金融へと育った信組の歩みの、両方を映している。自分たちのために資金を融通し合うところから始まり、合併を重ねて規模を広げ、いまは広く大阪の中小事業者に深く貸している。密着して貸すという信用組合の本来の姿が、83.6%という高い預貸率と、0.73%という低い焦げ付きの両立に表れている。
銀行や信用組合の数字は、その土地の経済と、その金融機関の成り立ちを映す鏡だ。成協信用組合を見れば、大阪の中小事業者の厚みと、コミュニティから育った密着型の信組の姿が浮かぶ。同じ大阪の、市が生んだ信金は、大阪シティ信用金庫の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。大阪府の他の金融機関と並べて眺めたい方は、大阪府の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。大阪シティ信用金庫の数値も同出典。
沿革(戦後の大阪で在日コリアンのコミュニティが作った相互金融の組織を源流の一つとし、合併を重ねながら大阪の中小事業者に広く貸す信用組合へと育ってきたこと、本店を東大阪市に置くこと)に関する記述=成協信用組合および各種公開情報にもとづく。歴史的経緯のうち確認の難しい事項については、確実な範囲にとどめて中立に記述した。
大阪・東大阪の経済(町工場・商店・飲食店など中小零細事業者の集積)に関する記述=各種公開情報。