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飯能信用金庫——奥武蔵の山あいから、首都圏へ広がる信金は何に貸すか

預貸率48.6%、預金1兆4,171億円、自己資本比率15.02%。飯能市に本店を置く飯能信用金庫。奥武蔵の山あいから首都圏へ広がる「はんしん」が、なぜ厚い自己資本を持つのか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 埼玉県

埼玉県の飯能市に本店を置く飯能信用金庫は、地元で「はんしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金1兆4,171億円、店舗48。1兆円を大きく超える大型信金である。飯能市を中心に、所沢・川越など埼玉県西部から、東京都の多摩・池袋方面まで店舗を広げている。

本拠の飯能は、奥武蔵の玄関口に位置する街だ。かつては西川材(にしかわざい)と呼ばれる木材の集散地として栄え、いまも山あいの自然と、首都圏のベッドタウンとしての顔をあわせ持つ。飯能信用金庫が地盤とする埼玉県西部から東京都西部の一帯は、山あいの落ち着いた土地から、人口の集まる首都圏近郊までが連なる地域だ。飯能信用金庫は、こうした山と都市が連なる土地に根ざし、東京方面へも店舗を広げてきた信金である。

この信金の数字で目を引くのは、1兆4,171億円という大きな規模と、自己資本比率15.02%という厚さだ。預貸率は48.6%とやや低めだが、自己資本は厚い。なぜ、奥武蔵の信金は、これほど資本を厚く積むのか。同じ埼玉県の大型信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。飯能信用金庫の預金は1兆4,171億円、貸出金は6,890億円。預貸率は48.6%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は15.02%と厚く、不良債権比率は3.25%。店舗数は48、中小企業等への貸出残高は6,155億円。

同じ埼玉県で、熊谷市を地盤とする埼玉縣信用金庫(預貸率59.4%・自己資本比率9.07%)と比べると、対照的だ。飯能信用金庫の預貸率48.6%は、埼玉縣信用金庫(59.4%)より低い一方、自己資本比率は飯能信用金庫(15.02%)が埼玉縣信用金庫(9.07%)を大きく上回る。同じ埼玉県の大型信金でも、埼玉縣信用金庫はよく貸し、飯能信用金庫は貸出を抑えめにして厚い資本を積む。これは、両者の地盤の違いを映していると読める。飯能信用金庫が地盤とする埼玉県西部から東京都西部は、山あいの落ち着いた地域を含み、貸出を大きく伸ばす機会は埼玉北部の経済圏ほどではない。その分、運用などで積み上げた利益が、厚い資本となってきたと読める。

埼玉県の二つの大型信用金庫(令和7年3月末)
 飯能信用金庫埼玉縣信用金庫
本店飯能市熊谷市
預金14,171億円32,262億円
預貸率48.6%59.4%
自己資本比率15.02%9.07%
不良債権比率3.25%1.57%

ともに埼玉県の大型信金。規模では埼玉縣信用金庫が上回り、預貸率も高い。飯能信用金庫は貸出を抑えめにして厚い自己資本を積む。地盤とする土地の違いが数字に表れている。

奥武蔵とともに——飯能信用金庫の歩み

飯能信用金庫は、奥武蔵の玄関口・飯能の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。西川材の林業に携わる人々、地域の商店、そして首都圏近郊で暮らし働く住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。飯能信用金庫は、山あいの土地から首都圏へと店舗を広げ、1兆円を超える規模へと成長してきた。

飯能信用金庫が地盤とする土地は、信用金庫にとって独特の地盤だ。奥武蔵の山あいの落ち着いた地域と、所沢や東京西部といった人口の集まる首都圏近郊が連なる。預金は首都圏近郊の人口に支えられて豊かに集まるが、山あいを含む地域では、貸出を大きく伸ばす機会に限りもある。預金は集まるが、それを貸し切るだけの需要には地域差がある——この構図が、48.6%というやや低めの預貸率と、厚い自己資本の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は運用などに向かい、そこで積み上がった利益が、厚い資本となってきたと読める。

15.02%の資本を、奥武蔵から読む

飯能信用金庫の自己資本比率15.02%という厚さは、首都圏近郊で潤沢な預金を集めながら、貸出を堅実にとどめ、運用などで利益を積んできたことの表れだと読める。貸出を無理に伸ばさず、リスクを抑えた運用で利益を蓄え、それを資本として厚く積んできた。地域経済が落ち込んでも揺るがず在り続けるための、分厚い備えがここにある。

預貸率48.6%というやや低めの水準は、その裏返しだ。山あいを含む地盤では、貸出先となる事業者の資金需要に地域差がある。不良債権比率3.25%という数字は、貸出先を堅実に見極めていることを示す。首都圏近郊で潤沢な預金を集め、堅実に貸し、運用で利益を積み、厚い資本で守りを固める——それが、飯能信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。よく貸す埼玉縣信用金庫とは対照的なこの姿は、同じ埼玉県でも地盤によって信金の生き方が分かれることを示している。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

飯能の経済とともに

飯能信用金庫の数字は、奥武蔵の山あいから首都圏近郊へと連なる土地と、そこで潤沢な預金を集めながら厚い自己資本を積む大型信金の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元に貸しながら、運用で利益を積み、厚い自己資本で守りを固めてきた。山と都市が連なる土地の経済が、48.6%という預貸率と、15.02%という厚い自己資本に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。飯能信用金庫を見れば、奥武蔵から首都圏へ連なる埼玉県西部の経済と、そこで厚い資本を積む大型信金の姿が浮かぶ。埼玉の他の協同組織金融機関は、よく貸す県北部の埼玉縣信用金庫、県北部の埼玉信用組合もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。埼玉県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、埼玉県の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が中位の金融機関は、地元の資金需要に応えつつ、運用とのバランスを取っている一つの目安になる。首都圏近郊で預金を集める力が強い一方、山あいを含む地盤では貸出に地域差があり、貸出に回りきらない預金が運用に向かって厚い自己資本となることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。埼玉縣信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(飯能市に本店を置き、埼玉県西部から東京都西部を地盤とする信用金庫であること、飯能が奥武蔵の玄関口で西川材の集散地として栄えたこと、首都圏のベッドタウンの性格を併せ持つこと)に関する記述=飯能信用金庫および各種公開情報にもとづく。
飯能・奥武蔵の地理・経済(奥武蔵、西川材、林業、首都圏近郊、ベッドタウン)に関する記述=各種公開情報。

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