滋賀中央信用金庫——近江商人の地で、湖国の信金は何に貸すか
預貸率57.6%、預金4,757億円、不良債権比率3.51%。近江八幡市に本店を置く滋賀中央信用金庫。近江商人の地に根ざす「ちゅうしん」が、何に貸すか。その数字と歴史を読む。
滋賀県の近江八幡市に本店を置く滋賀中央信用金庫は、地元で「ちゅうしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金4,757億円、店舗31。近江八幡を中心に、滋賀県の中部から南部にかけてを地盤としている。湖国・近江に根ざす信金だ。
本拠の近江八幡は、琵琶湖の東岸に位置する、近江商人発祥の地の一つだ。豊臣秀次が築いた城下町を起こりとし、「近江商人」と呼ばれる商人たちが、ここから天秤棒を担いで全国へ商いに出ていった。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の精神で知られる近江商人の伝統は、いまもこの土地に息づく。周辺の滋賀県中南部は、琵琶湖の水と京阪神への近さを生かした製造業が広がり、商いの伝統と現代の産業が重なる地域だ。滋賀中央信用金庫は、こうした近江商人の地に根ざしてきた信金である。
この信金の数字を見ると、預貸率57.6%という、信用金庫としてやや高めの水準が目を引く。預金の6割近くを貸出に回している。近江商人の地で、滋賀中央信用金庫は何に貸しているのか。同じ滋賀県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。滋賀中央信用金庫の預金は4,757億円、貸出金は2,738億円。預貸率は57.6%で、預金の6割近くを貸出に回している。自己資本比率は10.2%、不良債権比率は3.51%。店舗数は31、中小企業等への貸出残高は2,313億円。
同じ滋賀県で、東近江市を地盤とする湖東信用金庫(預貸率44.1%・不良債権比率5.05%)と比べると、滋賀中央信用金庫の預貸率57.6%は、湖東信用金庫(44.1%)を上回り、よりよく貸している。不良債権比率は滋賀中央信用金庫(3.51%)が湖東信用金庫(5.05%)を下回り、焦げ付きも低い。同じ湖国の信金でも、滋賀中央信用金庫は、よりよく貸しながら、焦げ付きを低く保っている。これは、近江商人の地の商業・製造業の資金需要に応えながらも、貸出先を堅実に見極めていることの表れだと読める。
| 滋賀中央信用金庫 | 湖東信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 近江八幡市 | 東近江市 |
| 預金 | 4,757億円 | 2,146億円 |
| 預貸率 | 57.6% | 44.1% |
| 自己資本比率 | 10.2% | 13.57% |
| 不良債権比率 | 3.51% | 5.05% |
ともに滋賀県中南部を地盤とする二つの信金。規模では滋賀中央信用金庫が上回り、預貸率も高い。よりよく貸しながら焦げ付きを低く保つ姿が数字に表れている。
近江商人の地とともに——滋賀中央信用金庫の歩み
滋賀中央信用金庫は、近江商人の地・近江八幡の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。商いの伝統を受け継ぐ商店や、滋賀県中南部の中小事業者、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。滋賀中央信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、合併を経て県内有数の規模へと成長してきた。
滋賀県中南部という土地は、信用金庫にとって、商いと産業に支えられた地盤だ。近江商人以来の商業の伝統に加え、琵琶湖の水と京阪神への近さを生かした製造業が広がる。京都・大阪の経済圏に近く、人口も増えてきた地域だ。商業・製造業の資金需要があり、貸出の機会は相応にある——この構図が、57.6%というやや高めの預貸率の背景にあると読める。そのなかで、貸出先を堅実に見極めることで、焦げ付きを3.51%に抑えている。
57.6%を、湖国の信金から読む
滋賀中央信用金庫の預貸率57.6%という水準は、近江商人の地の商業・製造業の資金需要に、応えていることの表れだと読める。近江八幡を中心とする滋賀県中南部は、商いの伝統と現代の製造業が重なり、京阪神への近さもあって、中小事業者の資金需要がある。信用金庫は、そうした需要に応えることで、預金の6割近くを貸出に回せる。
不良債権比率3.51%という水準は、よく貸しながらも、貸出先を堅実に見極めていることを示す。焦げ付きのより高い湖東信用金庫と比べても、低めに保たれている。自己資本比率10.2%という水準も、信用金庫として手堅い。近江商人の地で、商いと産業の資金需要によく応えながら、焦げ付きを低く保つ——それが、滋賀中央信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。「三方よし」の精神が息づく土地で、堅実に貸すこの信金の姿は、地域の商いの伝統と無縁ではないと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
滋賀の経済とともに
滋賀中央信用金庫の数字は、近江商人発祥の地・近江八幡と、商いと産業が重なる滋賀県中南部という土地、そしてよく貸しながら焦げ付きを低く保つ信金の歩みの、両方を映している。預金の6割近くを地元に貸しながら、貸出先を堅実に見極め、焦げ付きを低く保ってきた。商いの伝統と現代の産業が重なる湖国の経済が、57.6%という預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。滋賀中央信用金庫を見れば、近江商人の地・近江八幡の経済と、そこでよく貸す信金の姿が浮かぶ。滋賀県の他の金融機関は、商人の町の長浜信用金庫、県トップの地銀滋賀銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。滋賀県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、滋賀県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。湖東信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(近江八幡市に本店を置き、滋賀県中南部を地盤とする信用金庫であること、合併を経て県内有数の規模になったこと、近江八幡が近江商人発祥の地の一つで豊臣秀次の城下町を起こりとすること、「三方よし」の精神で知られること)に関する記述=滋賀中央信用金庫および各種公開情報にもとづく。
近江・滋賀の地理・経済(琵琶湖、近江商人、近江八幡、三方よし、京阪神、製造業)に関する記述=各種公開情報。