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山陰合同銀行——二つの県をまたぐ「ごうぎん」は、山陰で何に貸すか

預貸率82.3%、預金6.2兆円、当期純利益204億円。松江市に本店を置く山陰合同銀行「ごうぎん」。島根と鳥取という二つの県を一つの地盤とする山陰最大の地銀が、何に貸すかを読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 島根県

島根県松江市に本店を置く山陰合同銀行は、地元で「ごうぎん」と呼ばれる地方銀行です。預金6兆2,333億円、貸出金5兆1,322億円、店舗108。島根・鳥取の二つの県をまたいで地盤とする、山陰最大の地銀です。一つの県に収まらず、二県を一体の営業エリアとするのは、地方銀行のなかでも珍しい成り立ちです。島根・鳥取に加え、山陽地方や兵庫・大阪にも店舗を広げています。

本拠地の山陰地方は、日本海に面し、出雲大社や松江、鳥取砂丘などで知られる、農林水産業と観光の土地です。島根・鳥取はいずれも人口の少ない県で、両県を合わせても大都市圏ほどの規模はありません。だからこそ、二つの県を一つの地盤とすることに意味がある——この山陰二県という土地のまとまりが、山陰合同銀行の数字を読む鍵になります。

山陰合同銀行の成り立ちは、その「合同」という名に刻まれています。1941年、松江銀行(1889年設立、島根県東部・旧出雲国が地盤)や米子銀行(1894年設立、鳥取県中西部・旧伯耆国が地盤)など、山陰の複数の銀行が合同して誕生しました。県境を越えて銀行が一つにまとまったことが、島根と鳥取という二県をまたぐ独特の地盤を生みました。看板表記も、島根・鳥取の店舗では「ごうぎん」、山陰以外の店舗では「山陰合同銀行」と使い分けられています。数字の面で目を引くのは、預貸率82.3%という高い水準です。

まず、数字を並べる

山陰合同銀行の預金は6兆2,333億円、貸出金は5兆1,322億円、預貸率82.3%。自己資本比率は11.12%、不良債権比率は1.25%。中小企業等向けの貸出残高は3兆5,240億円にのぼります。2025年3月期の連結当期純利益は約204億円で、過去最高を更新しました。

山陰合同銀行(令和7年3月末)
預金6兆2,333億円
貸出金5兆1,322億円
預貸率82.3%
自己資本比率11.12%
不良債権比率1.25%
中小企業等向け貸出残高35,240億円
当期純利益(連結)約204億円
店舗108店

預金6.2兆円・預貸82.3%。二つの県を一つの地盤とする山陰最大の地銀の数字。

82.3%を、二県を一つにする規模から読む

預貸率82.3%は、地方銀行のなかでよく貸している高い水準です。集めた預金の8割超を貸出に回している。人口の少ない山陰の地銀がこれだけの預貸率を保てるのは、島根と鳥取という二つの県を一つの地盤とし、さらに山陽・関西にも貸し先を広げているからと読めます。

もし一つの県だけを地盤とすれば、人口の少ない山陰では貸出の伸びに限りがあったはずです。だが山陰合同銀行は、県境を越えた合同という成り立ちによって、二県分の経済を一手に引き受け、さらに山陽や大阪・兵庫といった都市圏にも踏み出すことで、貸出の規模を確保してきた。島根・鳥取の農林水産業や観光、地場の中小企業に加え、県外の取引先にも貸す。この広域の地盤が、預貸率82.3%という、人口規模だけからは説明しにくい水準を支えていると読めます。中小企業等向けの貸出残高3兆5,240億円という規模は、山陰二県を中心とする事業者の資金需要を広く引き受けてきた証です。

不良債権比率1.25%は、地銀として低めの良好な水準です。二県にまたがり、業種も農林水産・観光・製造・都市の商工業へと広く分散していることが、リスクの分散につながっていると読めます。自己資本比率11.12%という厚みと、過去最高を更新した当期純利益約204億円とあわせて、規模に見合った安定した経営がうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、二県を一つにまとめた山陰最大の地銀という立場を抜きに、この数字は読めません。

山陰合同銀行が示すのは、人口の少ない二つの県を、県境を越えて一つの地盤とすることで規模を確保する姿です。島根と鳥取を一体とし、さらに都市圏にも踏み出す。預貸率82.3%という高い水準は、その広域の地盤を映していると読めます。

同じ山陰の地銀と並べてみる

本紀行には、同じ山陰のもう一つの地銀も登場しています。鳥取県の鳥取銀行です。鳥取銀行は鳥取県を地盤とする「とりぎん」で、預貸率は86.5%でした。山陰合同銀行が二県をまたいで地盤とするのに対し、鳥取銀行は鳥取県内を地盤としてきた。同じ鳥取県内で、二県をまたぐ「ごうぎん」と県内に根ざす「とりぎん」が並び立つという、山陰ならではの構図が見えてきます。県内に根ざす地銀の姿は、鳥取銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

二県をまたぐ広域の地銀は、山陰の事業者にとって、もっとも規模の大きな選択肢のひとつです。島根・鳥取を一体とする店舗網と、山陽・関西にも広がるネットワークは、県境を越えて取引を目指す企業にとって心強いものです。預貸率は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、県境を越えた成り立ちを映す

預貸率82.3%という水準と、預金6.2兆円という規模は、人口の少ない二つの県を県境を越えて一つにまとめ、山陰最大の地銀として広く貸してきた姿を映しています。一つの県に収まる地銀もあれば、山陰合同銀行のように二県をまたぐ地銀もある。数字は、その金融機関がどんな成り立ちで、どんな土地に向き合ってきたかを語ります。山陰合同銀行の数字は、合同という選択で規模を築いた地銀の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と歴史の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。島根県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、島根県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。当期純利益=山陰合同銀行2025年3月期決算(連結・過去最高を更新)。
山陰合同銀行の沿革(1941年に松江銀行・米子銀行など山陰の銀行が合同して創設、松江銀行は1889年・米子銀行は1894年設立)、本店所在地(松江市)、島根・鳥取の二県を地盤とする山陰最大の地銀であること、山陽・兵庫・大阪にも店舗を展開すること、看板表記の使い分けに関する記述=山陰合同銀行および各種公開情報にもとづく。
山陰地方の経済(農林水産業、観光、人口規模)に関する記述=各種公開情報。
鳥取銀行の位置づけ=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末および本紀行既出記事。

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