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島根銀行——合併せず100年自走した「しまぎん」は、SBI連合のもとで何に貸すか

預貸率74.2%、預金5,273億円、店舗34。松江市に本店を置く島根銀行。1915年の松江相互貯金を源流とし、合併をせず100年以上を自走してきたが、経営難からSBIグループの「第4のメガバンク構想」第一弾の出資先となった第二地方銀行。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 島根県

水の都・松江。宍道湖のほとりに開けたこの城下町に、島根銀行の本店はある。通称「しまぎん」。島根県を地盤とする第二地方銀行だ。預金は5,273億円、貸出金は3,911億円、店舗は34と、規模は小さい。同じ松江には、山陰のトップバンクである地方銀行・山陰合同銀行があり、こちらは桁違いに大きい。松江の中心街には、山陰合同銀行と島根銀行、二つの銀行の高層ビルが並び立っている。

島根県は、人口減少と高齢化が全国でも早くから進んだ土地だ。出雲大社や石見銀山の歴史を持つが、産業の規模は大きくなく、地銀にとって貸し先を増やすのは難しい。そんな土地で、島根銀行は長く、ある特徴を保ってきた。合併をせず、自分たちの足だけで歩んできたのである。だがその自走の歴史は、近年、大きな転機を迎えた。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。島根銀行の預金は5,273億円、貸出金は3,911億円。預貸率は74.2%で、預金の7割強を貸出に回している。自己資本比率は7.56%、不良債権比率は2.17%。店舗数は34、中小企業等への貸出残高は3,111億円にのぼる。

島根銀行(令和7年3月末)
預金5,273億円
貸出金3,911億円
預貸率74.2%
自己資本比率7.56%
不良債権比率2.17%
中小企業等向け貸出残高3,111億円
店舗34店

店舗34・自己資本7.56%。人口減の県で自走してきた小さな第二地銀。

合併せず、100年を自走した

島根銀行の源流は、1915年(大正4年)に松江で創立した松江相互貯金にさかのぼる。その後、無尽業の免許を得て松江相互無尽となり、戦後の1951年、相互銀行法の施行で松江相互銀行に転換。さらに1989年(平成元年)、普通銀行へ転換した。このとき、行名を「松江」から「島根」に改めている。松江という一つの市から、島根という県の全域へ——より広く根を張りたいという意志が、その改称に表れていた。

無尽から相互銀行、そして第二地方銀行へ。ここまでは、全国の多くの第二地銀がたどった道筋と同じだ。だが島根銀行が珍しいのは、その長い歴史のなかで、他の銀行と合併をしてこなかった点である。多くの地銀が、合併や統合を繰り返して規模を大きくしてきたのに対し、島根銀行は自分たちの足だけで、100年以上を歩んできた。地方銀行としては、最も歴史のある部類に入る、自立した銀行だった。

SBIの「第4のメガバンク構想」、その第一弾に

だが、自走の歴史は、近年大きく揺らいだ。人口減少が進む島根で、本業の収益力を保つのは年々難しくなり、経営が厳しさを増していった。そこに手を差し伸べたのが、意外な相手だった。ネット金融大手のSBIホールディングスである。

2019年(令和元年)9月、SBIは島根銀行と資本業務提携を結び、グループ全体で出資して筆頭株主となった。当時、島根銀行は本業の利益が赤字に沈んでおり、SBIによる救済の色合いが濃い提携だった。そしてこの出資は、SBIが描く大きな構想の第一弾だった。SBIは、苦境にある地方銀行と次々に手を組み、ネット金融を核とした「地域銀行連合」、いわゆる「第4のメガバンク構想」を掲げていた。島根銀行は、その最初のパートナーに選ばれたのである。

ネット金融のSBIと、リアルな店舗を持つ地銀。出自はまったく違うが、互いに補い合える関係でもある。島根銀行は、SBIの持つシステムやノウハウを取り入れ、デジタル化を進めた。合併はしないという独立の伝統を、別の形で守りながら、外部の力を借りて生き残りを図る——それが、いまの島根銀行の選んだ道だ。

74.2%を、土地と規模から読む

預貸率74.2%は、地方銀行として標準的な水準だ。よく貸す部類でも、運用に偏る部類でもない。この数字の背景には、島根という土地の事情がある。

島根県は、人口減少と高齢化が早くから進み、産業の規模も大きくない。貸し先となる事業者を、県内で大きく増やすのは難しい。無理に貸出を伸ばそうとすれば、焦げ付きのリスクも上がる。不良債権比率2.17%、自己資本比率7.56%という数字は、小さな県で堅実に商売をしてきた銀行の、ぎりぎりの健全性を映している。SBIとの提携は、この厳しい環境のなかで、貸出やシステムの効率を高め、収益を立て直すための選択だった。小さな県で、無理をせず、しかし生き残る——その姿勢が、74.2%という数字に表れている。

自走の銀行が、連合のなかで生きる

島根銀行の預貸率74.2%は、人口減の進む島根という土地の厳しさと、合併せず自走してきた小さな銀行の堅実さの、両方を映している。100年以上、自分たちの足だけで歩んできた銀行が、いまはSBIという新しい連合のなかで、デジタルの力を借りて生き残りを図っている。数字は、その金融機関がどんな歴史を歩み、いまどんな選択をしているかを語る。島根銀行の数字は、自走の伝統と再編の時代のはざまに立つ、小さな地銀の記録である。

各地の金融機関には、それぞれの成り立ちと土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。島根県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、島根県の地域金融機関のページもどうぞ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沿革(1915年の松江相互貯金を源流とし、松江相互無尽・松江相互銀行を経て1989年に普通銀行化し島根銀行へ改称したこと、合併をせず自走してきたこと)に関する記述=島根銀行公開情報、各種公開情報。
SBIグループとの資本業務提携(2019年9月の提携と出資、SBIによる「地域銀行連合(第4のメガバンク構想)」の第一弾とされること、提携時に本業が赤字で救済色が濃いとされたこと、デジタル化の推進)に関する記述=各種公開情報および報道。
島根県の状況(人口減少・高齢化、産業規模、山陰合同銀行との規模差)に関する記述=各種公開情報。

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