島田掛川信用金庫——茶どころの大型信金は、なぜ預金の3割台しか貸さないのか
預貸率35.4%、預金1兆145億円、不良債権比率6.13%。掛川市に本店を置く島田掛川信用金庫。茶どころ・遠州に根ざす信金が、なぜ預金の3割台しか貸さないのか。その数字と歴史を読む。
静岡県の掛川市に本店を置く島田掛川信用金庫は、預金1兆145億円を持つ信用金庫だ。店舗48。島田市・掛川市を中心に、静岡県の中西部・遠州地域を地盤としている。島田信用金庫と掛川信用金庫が合併して生まれた、預金1兆円を超える大型の信金だ。
本拠の掛川・島田は、大井川の流域に広がる遠州地域の街だ。掛川は東海道の宿場町・掛川宿を起こりとし、いまも交通の要として知られる。周辺の牧之原台地は、日本有数の茶の産地で、深蒸し茶の一大生産地として全国に知られる。茶業に加え、農業・製造業も地域を支える。一方、人口減少や茶業の構造変化など、地域経済は緩やかな変化のなかにある。島田掛川信用金庫は、こうした茶どころ・遠州に根ざしてきた信金だ。
この信金の数字で目を引くのは、預貸率35.4%という際立った低さだ。1兆円を超える預金を集めながら、貸出はその3割台にとどまる。信用金庫としても、これはかなり低い水準だ。なぜ、茶どころの大型信金は、これほど貸さないのか。同じ静岡県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。島田掛川信用金庫の預金は1兆145億円、貸出金は3,588億円。預貸率は35.4%で、預金の3割台を貸出に回している。自己資本比率は9.18%、不良債権比率は6.13%。店舗数は48、中小企業等への貸出残高は3,343億円。
同じ静岡県で、静岡市を地盤とするしずおか焼津信用金庫(預貸率50.1%・不良債権比率3.14%)と比べると、島田掛川信用金庫の預貸率35.4%は、しずおか焼津信用金庫(50.1%)を大きく下回る。同じ静岡県の信金でも、島田掛川信用金庫は際立って貸出を抑えめにしている。不良債権比率は島田掛川信用金庫(6.13%)がしずおか焼津信用金庫(3.14%)を上回り、やや高い。これは、茶どころ・遠州という地盤が、貸出先の限られた土地であることと、茶業の構造変化などの事情を映していると読める。
| 島田掛川信用金庫 | しずおか焼津信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 掛川市 | 静岡市 |
| 預金 | 1兆145億円 | 1兆8,490億円 |
| 預貸率 | 35.4% | 50.1% |
| 自己資本比率 | 9.18% | 13.94% |
| 不良債権比率 | 6.13% | 3.14% |
ともに静岡県を地盤とする二つの信金。島田掛川信用金庫は預貸率が際立って低い。茶どころ・遠州という貸出先の限られた地盤の性格が数字に表れている。
茶どころ・遠州とともに——島田掛川信用金庫の歩み
島田掛川信用金庫は、茶どころ・遠州の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。宿場町以来の商店、牧之原台地の茶農家や茶商、地域の中小事業者、そして住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。島田掛川信用金庫は、島田信用金庫と掛川信用金庫の合併を経て、預金1兆円を超える大型信金へと成長してきた。
遠州という土地は、信用金庫にとって、預金は集まるが貸出先には限りのある地盤だ。日本有数の茶の産地として、また農業・製造業の地として、地域に預金は蓄えられてきた。しかし、茶業は構造変化のなかにあり、新たに大きく借り入れて投資する事業者は限られる。預金は集まるが、それを貸し切るだけの旺盛な資金需要は乏しい——この構図が、35.4%という際立って低い預貸率の背景にあると読める。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、運用などに向かう。
35.4%を、茶どころから読む
島田掛川信用金庫の預貸率35.4%という際立った低さは、茶どころ・遠州という、貸出先の限られた地盤を映していると読める。茶業を中心とする地域経済は、安定して預金をもたらす一方、大きく借り入れて投資する資金需要は限られる。1兆円という豊富な預金を集めながら、貸出が3割台にとどまるのは、地盤の性格が個別の信金の経営方針を超えて数字に表れていることを示す。
不良債権比率6.13%というやや高めの数字は、茶業の構造変化など、地域の事業者が置かれた環境を映していると読める。自己資本比率9.18%という水準は、信用金庫として手堅いが、焦げ付きの吸収余地はより厚い信金ほどではない。茶どころで豊富な預金を集め、限られた貸出先に貸し、残りを運用に向ける——それが、島田掛川信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。茶業とともにある地域の経済が、35.4%という低い預貸率に色濃く映っている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
静岡の経済とともに
島田掛川信用金庫の数字は、茶どころ・遠州という土地と、そこで豊富な預金を集めながら貸出を抑えめにする大型信金の歩みの、両方を映している。預金の3割台を地元に貸しながら、運用で利益を積み、堅実に営んできた。茶業とともにある遠州の経済が、35.4%という際立って低い預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。島田掛川信用金庫を見れば、茶どころ・遠州の経済と、そこで貸出を抑えめにする大型信金の姿が浮かぶ。静岡県の他の金融機関は、県都のしずおか焼津信用金庫、沼津の三島信用金庫、県トップの地銀静岡銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。しずおか焼津信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(掛川市に本店を置き、静岡県中西部・遠州地域を地盤とする信用金庫であること、島田信用金庫と掛川信用金庫の合併を経て預金1兆円を超える大型信金になったこと、掛川が東海道掛川宿を起こりとすること、牧之原台地が深蒸し茶の一大産地であること、茶業が地域経済を支えること)に関する記述=島田掛川信用金庫および各種公開情報にもとづく。
掛川・遠州の地理・産業(大井川、牧之原台地、深蒸し茶、茶業、東海道、掛川宿、遠州)に関する記述=各種公開情報。