静岡中央銀行——県東部の「中央」は、神奈川にまたがって何に貸すか
預貸率84.0%、自己資本比率13.29%、店舗43。沼津市に本店を置く静岡中央銀行。伊豆無尽を源流とし、静岡県東部から神奈川県へまたがって店舗を構える第二地方銀行。厚い自己資本でよく貸す、その数字と歴史を読む。
静岡県東部、伊豆半島の付け根に位置する沼津市。富士山を望み、駿河湾の海の幸に恵まれたこの町に、静岡中央銀行の本店はある。静岡県を地盤とする第二地方銀行だ。県の名を冠しながら、本店を県庁所在地の静岡市ではなく、県東部の沼津に置く——その立地に、この銀行の性格が表れている。
静岡県は、東西に長い。県庁所在地の静岡市、楽器とオートバイのものづくり都市・浜松市という二つの大きな都市を抱え、その間に焼津、磐田、富士、そして沼津といった、個性ある中規模都市が点在する。県域の広さもあって、かつては多くの銀行や金融機関がひしめいていた。その多くが県のトップバンク・静岡銀行に集約されていったなか、県東部の沼津には、いまも二つの地方銀行が残っている。一つは独自路線で知られるスルガ銀行。そしてもう一つが、この静岡中央銀行である。
この銀行を読むうえで鍵になるのが、その名の「中央」だ。県東部に本店を置きながら「中央」を名乗るのには、理由がある。それは、この銀行が静岡県だけの銀行ではないことを示している。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。静岡中央銀行の預金は7,438億円、貸出金は6,249億円。預貸率は84.0%で、預金の8割を超える額を貸出に回している。自己資本比率は13.29%と厚く、不良債権比率は1.78%。店舗数は43、中小企業等への貸出残高は5,630億円にのぼる。
この数字で目を引くのは、預貸率84.0%という高さと、自己資本比率13.29%という厚さの両立だ。よく貸しながら、資本も厚く積んでいる。第二地方銀行のなかでも、攻めと守りのバランスのよい数字だと読める。規模こそ大きくないが、堅実な経営を保ってきたことがうかがえる。
| 静岡中央銀行 | スルガ銀行 | |
|---|---|---|
| 種別 | 第二地方銀行 | 第二地方銀行 |
| 預金 | 7,438億円 | — |
| 貸出金 | 6,249億円 | — |
| 預貸率 | 84.0% | 69.2% |
| 自己資本比率 | 13.29% | — |
同じ沼津市に本店を置く二行だが、規模も性格も異なる。独自路線で知られるスルガ銀行に対し、静岡中央銀行は小ぶりながら厚い自己資本でよく貸す堅実な第二地銀。同じ町に、二つの異なる銀行が並び立つ。
「伊豆無尽」から始まった——「中央」に込めた二つの県
静岡中央銀行の創業は、1926年(大正15年)、伊豆無尽株式会社が設立されたことに始まる。無尽とは、人々が金を出し合い、くじや入札で順番に融通し合う、庶民の相互金融のしくみだ。伊豆という土地の名を冠したこの無尽が、この銀行の出発点だった。多くの第二地方銀行と同じく、庶民の相互金融からの出発である。
その後の歩みは、無尽から相互銀行への転換と、合併の歴史だ。1948年(昭和23年)に太洋無尽へ商号を変え、1951年の相互銀行法の施行で太洋相互銀行に転換。1957年(昭和32年)には静神相互銀行と合併し、静岡相互銀行となった。そして1989年(平成元年)、普通銀行へ転換して、いまの静岡中央銀行となった。庶民の無尽から、相互銀行を経て、普通銀行へ——これは全国の第二地方銀行に共通する道筋でもある。
注目すべきは、その行名だ。県東部の沼津に本店を置きながら、なぜ「中央」を名乗るのか。これは、静岡県と神奈川県という二つの県を営業エリアとし、その中間に本店を構えて事業を展開する、という意味だと読める。実際、静岡中央銀行は、静岡県内だけでなく、神奈川県内にも多くの店舗を構えている。県東部から、箱根を越えて神奈川へ。県境をまたいで広がるその姿が、「中央」という名に込められている。
破綻した銀行を引き受ける——受け皿としての歩み
静岡中央銀行の歴史には、他行の破綻を引き受けた一幕もある。2003年(平成15年)、静岡市に本店を置いていた中部銀行が破綻した際、静岡中央銀行はその店舗の一部、11店舗の営業を譲り受けた。このとき、受け皿となったのは静岡中央銀行のほか、清水銀行や東京スター銀行などだったと伝えられる。破綻した地元の銀行の事業を引き受け、その顧客と従業員を受け止める——地域金融機関が担ってきた、もう一つの役割がここにある。
近年は、連携の動きも見せている。2021年には、神奈川県を地盤とする神奈川銀行との包括的な業務提携を開始したと伝えられる。静岡県東部と神奈川県という、もともと重なり合う営業エリアを持つ二行が手を組む。県境をまたいで貸してきたこの銀行ならではの連携だと読める。また、中堅・中小企業の事業承継を支援する事業にも取り組んでいる。
84.0%を、二つの県にまたがる立地から読む
静岡中央銀行の預貸率84.0%は、第二地方銀行のなかでもよく貸す部類に入る。規模は小さいが、集めた預金の8割以上を貸出に回している。この数字の背景には、この銀行の二つの県にまたがる立地があると読める。
静岡県東部は、県のトップバンク・静岡銀行の本拠である県中部・西部からはやや離れている。一方、同じ沼津のスルガ銀行は独自路線を歩んできた。そのなかで静岡中央銀行は、県東部の中小事業者と、箱根を越えた神奈川県西部の事業者を、地道に支えてきた。大手の手が必ずしも厚くは届かない、県境のエリア。そこに根を張り、よく貸してきたことが、84.0%という数字に表れている。そして、それを13.29%という厚い自己資本が支えている。よく貸しても無理をしない——その堅実が、小さな第二地銀を長く存続させてきたのだろう。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
二つの県のあいだで
静岡中央銀行の数字は、静岡県東部から神奈川県へまたがるという独特の立地と、無尽以来の堅実な経営の、両方を映している。伊豆無尽から始まり、合併を重ね、破綻した銀行を引き受け、いまも県境のエリアで地道に貸し続ける。「中央」という名は、二つの県の中間に立つという、この銀行の生き方そのものだ。
銀行の数字は、その土地の経済と、その銀行の立ち位置を映す鏡だ。静岡中央銀行を見れば、県東部から神奈川へとまたがる、県境のエリアの姿が浮かぶ。同じ沼津に本店を置くもう一つの銀行の姿は、スルガ銀行の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。静岡県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。スルガ銀行の預貸率も同出典。
沿革(1926年の伊豆無尽株式会社設立、1948年の太洋無尽への商号変更、1951年の相互銀行転換で太洋相互銀行、1957年の静神相互銀行との合併で静岡相互銀行、1989年の普通銀行転換で静岡中央銀行)に関する記述=静岡中央銀行および各種公開情報にもとづく。
行名「中央」の由来(静岡県と神奈川県を営業エリアとし、その中間に本店を置くという趣旨)、神奈川県内に多くの店舗を構えていることに関する記述=各種公開情報にもとづく。
2003年の中部銀行破綻時に11店舗の営業を譲り受けたこと(清水銀行・東京スター銀行なども受け皿になったとされること)、2021年の神奈川銀行との包括業務提携、事業承継支援への取り組みに関する記述=各種公開情報および報道にもとづく。
静岡県の地理・産業(東西に長い県土、静岡市・浜松市の二大都市、沼津など県東部の都市、多くの金融機関が静岡銀行に集約されてきたこと、沼津にスルガ銀行と静岡中央銀行の二行が存立すること)に関する記述=各種公開情報。