足利銀行——再生を経た栃木の雄は、いま何に貸すか
預貸率78.7%、預金7.2兆円、不良債権比率1.62%。宇都宮市に本店を置く足利銀行。一時国有化という試練を越え、めぶきフィナンシャルグループの一翼を担う栃木の雄が、いま貸す姿を読みます。
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栃木県宇都宮市に本店を置く足利銀行は、地元で「あしぎん」と呼ばれる地方銀行です。預金7兆1,505億円、貸出金5兆6,262億円、店舗134。栃木県を代表する地方銀行であり、栃木県および県内多くの自治体の指定金融機関——公金を扱う銀行——でもあります。茨城県を地盤とする常陽銀行とともに、めぶきフィナンシャルグループを構成しています。
本拠地の栃木県は、北関東の内陸県です。自動車・電気機械などの製造業が内陸の工業団地に集積する一方、いちごをはじめとする農業、日光・那須といった観光まで、産業の幅が広い土地です。県都・宇都宮は新幹線が停まる北関東の交通の要衝でもあります。この産業の幅広い内陸県という地盤と、足利銀行がたどった再生の歩みが、数字を読む鍵になります。
足利銀行の名は、銀行の歴史を語るうえで欠かせません。2003年、多額の不良債権により債務超過と認定され、一時国有化されたのです。その後、経営再建を進め、地域とともに再生の道を歩みました。2008年に持株会社のもとで新たな体制となり、現在は常陽銀行とともにめぶきフィナンシャルグループの一翼を担うまでに立ち直っています。数字の面で目を引くのは、預貸率78.7%という高さと、再生を経たいまの不良債権比率1.62%という落ち着いた水準です。
まず、数字を並べる
足利銀行の預金は7兆1,505億円、貸出金は5兆6,262億円、預貸率78.7%。自己資本比率は11.69%、不良債権比率は1.62%。中小企業等向けの貸出残高は4兆1,822億円にのぼります。
| 預金 | 7兆1,505億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 5兆6,262億円 |
| 預貸率 | 78.7% |
| 自己資本比率 | 11.69% |
| 不良債権比率 | 1.62% |
| 中小企業等向け貸出先 | 247,169件 |
| 店舗 | 134店 |
預貸78.7%・不良債権1.62%。再生を経た栃木の雄の、いまの数字。
78.7%と1.62%を、再生の歩みから読む
預貸率78.7%は、地方銀行のなかでも高い水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。そして不良債権比率は1.62%と落ち着いた水準にある。かつて不良債権で経営が傾いた銀行が、いまはよく貸しながら焦げ付きを抑えている——この数字は、再生の歩みの到達点として読めます。
足利銀行が貸す相手は、栃木県を中心とする北関東の事業者と個人です。内陸の工業団地に集まる製造業、その下請けを担う中小企業、農業関連、地域の商業、そして住宅ローンが、その融資先に含まれます。中小企業等向けの貸出残高4兆1,822億円という規模は、栃木経済の事業者の資金需要を厚く引き受けてきたことを示しています。産業の幅が広く、層の厚い内陸県の経済を背景に、貸し先に事欠かないことが、預貸率78.7%という高さを支えていると読めます。
不良債権比率1.62%という落ち着いた水準は、一時国有化という痛烈な経験を経て、与信管理を立て直してきたことの表れと読めます。多様な業種に貸し先が分散していること、グループの一員として経営基盤を固めてきたこともあるでしょう。自己資本比率11.69%という相応の厚みとあわせて、再生を経て安定した経営に至っていることがうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、産業の幅広い内陸県という地盤と、再生の歩みを抜きに、この数字は読めません。
2003年の一時国有化——何が起きたのか
足利銀行の歩みを語るうえで避けて通れないのが、2003年(平成15年)の一時国有化である。ここでは、公的な記録にもとづいて、その経緯を事実として整理しておきたい。
足利銀行は、バブル期に栃木県内や東京で、リゾート開発やゴルフ場、不動産などへの融資を拡大したが、バブル崩壊によってこれらが不良債権化し、多額の不良債権を抱えていた。2003年9月から11月にかけて、金融庁は同行の平成15年3月期末決算を対象とする金融検査を実施した。会計検査院の決算検査報告によれば、この検査の結果、追加的に必要となる償却・引当額が950億円にのぼることなどが判明し、検査結果にもとづく同行の資本の部は△233億円となって、債務超過の状態にあると見込まれた。
同行はこの検査結果を踏まえて平成15年9月中間決算を作成したが、繰延税金資産の取崩しを含む法人税等調整額1,387億余円などを計上した結果、中間純損失が1,862億余円、1,023億余円の債務超過となった。繰延税金資産は、将来の課税所得が見込めることを前提に資産計上されるものだが、その計上が過大であったことが、債務超過認定の決定的な要因となった。
2003年11月29日、足利銀行は金融庁に対し、債務超過となり預金等の払戻しを停止するおそれがあるとして破綻を申し出た。これを受けて内閣総理大臣は、同日、金融危機対応会議の議を経て、預金保険法102条1項3号にもとづく措置(3号措置)を講ずる必要がある旨を認定した。同行が栃木県を中心とする地域に多数の預金者と中小企業の取引先を抱え、県内での融資比率が極めて高く、地域における金融機能の維持が必要不可欠と判断されたためである。12月1日付の官報で認定と決定が公告され、預金保険機構が同行の全株式を対価なしで取得した。これが、いわゆる一時国有化である。株式は無価値となり、持株会社のあしぎんフィナンシャルグループは会社更生手続に至った。
国有化後、足利銀行は2004年2月に金融庁の命令を受けて「経営に関する計画」を提出し、地域金融の円滑化、ガバナンスの強化と透明性の確保、業務運営の適切性、抜本的な経営合理化という方針を掲げた。特別危機管理銀行については、新たな経営陣が旧経営陣の民事・刑事上の責任を追及することが法律で定められており、当時の金融担当大臣も会見でこの枠組みに言及している。損失の先送りを招いた経営のあり方は、こうして検証の対象となった。
その後、足利銀行は経営再建を進め、2008年に3号措置を終えて新たな体制へ移行し、現在は常陽銀行とともにめぶきフィナンシャルグループの一翼を担っている。本記事の冒頭で示した不良債権比率1.62%という落ち着いた水準は、この再生の歩みを経て与信管理を立て直してきた到達点として読める。なお、ここで述べた経緯は公的な記録にもとづく事実の整理であり、個別の関係者の評価を下すものではない。進行中・係属した手続きの詳細についても、ここで予断を示すものではない。
同じ栃木で、信金と並べてみる
本紀行には、同じ栃木県の足利小山信用金庫も登場しています。足利小山信金は、足利銘仙で知られた両毛の織物産地の構造変化を映す信金でした。県全域を相手にする足利銀行(預貸率78.7%)と、両毛のまちに根ざす足利小山信金とを並べると、「足利」の名を分かち持つ二つの金融機関が、同じ栃木で立場を違えて地域を支えていることが見えてきます。県を相手にする地銀と、織物産地に根ざす信金——両者を並べると、栃木の金融の層が見えてきます。栃木の信金の姿は、足利小山信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
再生を経て立ち直った栃木の雄は、いまでは地域の事業者にとって、もっとも有力な選択肢のひとつです。よく貸す姿勢とグループの基盤は、地域を越えた取引を目指す企業にとっても心強いものです。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、再生の歩みを映す
預貸率78.7%という高さと、不良債権比率1.62%という落ち着いた水準は、産業の幅広い内陸県に根ざし、一時国有化という試練を越えて与信を立て直してきた地銀の姿を映しています。順風のなかを歩んできた銀行もあれば、足利銀行のように試練を越えて再生した銀行もある。数字は、その金融機関がどんな歩みを重ねてきたかを語ります。足利銀行の数字は、再生を経て地域を支える栃木の雄「あしぎん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。栃木県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、栃木県の地域金融機関のページもどうぞ。
足利銀行は、地元によく貸す貸出型の第一地銀です。実際に借りることを考えるなら、申込の前に手順と制度を押さえておきたいもの。融資の進め方と保証のしくみを、用語とあわせてまとめました。
- → 創業融資の受け方
- → 事業計画書のつくり方
- → 信用保証協会のしくみ
- → セーフティネット保証とは
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
足利銀行の沿革(栃木県を代表する地方銀行、2003年に債務超過と認定され一時国有化されたこと、その後経営再建を進め2008年に持株会社体制へ移行、現在は常陽銀行とともにめぶきフィナンシャルグループを構成すること、栃木県等の指定金融機関であること)に関する記述=足利銀行・めぶきフィナンシャルグループおよび各種公開情報にもとづく。
2003年の一時国有化の経緯(金融庁の金融検査による追加償却・引当額950億円・資本の部△233億円・債務超過の見込み、平成15年9月中間決算での繰延税金資産の取崩しを含む法人税等調整額1,387億余円・中間純損失1,862億余円・1,023億余円の債務超過、2003年11月29日の破綻申し出と同日の預金保険法102条1項3号措置の認定、12月1日官報公告・預金保険機構による全株式の無償取得、2004年2月の「経営に関する計画」提出)=会計検査院「平成15年度決算検査報告」(足利銀行に対する3号措置の実施)および金融庁公表資料にもとづく。特別危機管理銀行における旧経営陣の民事・刑事上の責任追及の枠組み=金融担当大臣記者会見要旨(平成15年11月29日)にもとづく。
栃木県の地理と産業(北関東の内陸県、内陸工業団地の製造業、いちご等の農業、日光・那須の観光、宇都宮の交通の要衝)に関する記述=各種公開情報。
足利小山信用金庫・常陽銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
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