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烏山信用金庫——和紙と山あげのまち・烏山で、からしんは何に貸すか

預貸率40.3%、自己資本比率11.86%、不良債権比率4.01%。那須烏山市に本店を置く烏山信用金庫「からしん」。烏山和紙と山あげ祭のまちに根ざす信金の数字を読みます。

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ニホン銀行紀行 ・ 栃木県

栃木県那須烏山市に本店を置く烏山信用金庫は、預金1,934億円、貸出金780億円、店舗11。「からしん」の愛称で、那須烏山市を中心に、栃木県東部の八溝山地のふもとの地域を地盤とする信用金庫です。

本店のある那須烏山市は、栃木県の東部、八溝山地のふもと、那珂川の流れる山あいのまちです。手すきの「烏山和紙」の産地として知られ、五百年以上の歴史を持つとされる伝統工芸を今に伝えています。また、巨大な野外移動式の舞台で歌舞伎を演じる「山あげ祭」は、ユネスコの無形文化遺産にも登録された、まちを代表する夏の祭礼です。米作を中心とする農業と、こうした伝統文化が息づく一方、人口減少と高齢化が進む地域でもあります。この、和紙と祭礼の伝統が息づく山あいの土地柄が、烏山信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の成り立ちは、1948年に設立された「烏山信用組合」にさかのぼります。戦後の制度改正を経て、1952年に信用金庫法に基づき「烏山信用金庫」となりました。2005年の市町村合併で、所在地は烏山町から那須烏山市へと変わりました。数字の面で目を引くのは、預貸率40.3%という控えめな水準と、自己資本比率11.86%という相応の守りの組み合わせです。

まず、数字を並べる

烏山信用金庫の預金は1,934億円、貸出金は780億円、預貸率40.3%。自己資本比率は11.86%、不良債権比率は4.01%。中小企業等向けの貸出先は5,720件です。

烏山信用金庫(令和7年3月末)
預金1,934億円
貸出金780億円
預貸率40.3%
自己資本比率11.86%
不良債権比率4.01%
中小企業等向け貸出先5,720件
店舗11店

預貸率40.3%・自己資本11.86%。和紙のまちに根ざす信金の数字を読む。

40.3%という数字を、山あいのまちから読む

預貸率40.3%という控えめな水準は、預金として集めた資金のうち、貸出に回しているのが四割ほどであることを示します。本紀行で見てきた地方の信金のなかでも、控えめな部類です。自己資本比率11.86%という相応の守りと、不良債権比率4.01%という中庸の水準とあわせて読むと、人口減少の進む山あいの地で、無理に貸し増さず堅実に経営する信金の姿が浮かびます。

烏山信用金庫が貸す相手は、那須烏山を中心とする八溝山地のふもとの中小事業者です。和紙をはじめとする地場の事業者、まちの商業や建設業、周辺の農業が、その融資先に含まれると考えられます。人口減少と高齢化が進み、大きな産業の集積が乏しい山あいの地では、旺盛に伸びる資金需要が常にあるわけではありません。預貸率40.3%という水準は、そうした土地の事情を映していると読めます。5,720件という中小企業等向けの貸出先は、山あいの小さな事業者に資金を届けてきたこの信金の地盤を示しています。

もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、和紙と祭礼の伝統が息づく烏山という土地を抜きに、この信金の数字は読めません。控えめな預貸率は、伸びを急がず、土地とともに長く歩んできたことの表れとも読めます。

烏山信用金庫が示すのは、和紙と祭礼の伝統が息づく山あいのまちの足元を支える信金の姿です。人口減の進む土地で、急いで貸し増すより堅実に向き合う。控えめな預貸率と相応の自己資本は、伝統のまちに根を張り、長く地域と歩む信金の輪郭を映しています。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

烏山信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。烏山信用金庫にとって、その「地元」とは、和紙と農業を地場とし、人口減少が進む八溝山地のふもとの地域経済です。借り手となる地元の中小が構造的に細っていくなかで、それでも無理に地区内へ融資を積み増せば、限られた地域に資産を集中させるリスクを抱えることになります。控えめな預貸率は、会員資格が地区内の中小に絞られるという制度の枠のなかで、堅実さを優先した一つの帰結とも読めます。

同じ県の、金融機関と並べてみる

同じ栃木県を代表する地銀として、足利銀行(預貸率78.7%)も本紀行に登場しています。県土全体を相手にする県地銀・足利銀行(預貸率78.7%)と、八溝のふもと・烏山に根ざすこの烏山信用金庫(預貸率40.3%)とを並べると、同じ栃木でも、県全域を相手にする地銀と、山あいのまちに密着する信金とで、貸す範囲も性格も大きく異なることが見えてきます。県全体を支える地銀の姿は、足利銀行の記事もあわせてどうぞ。

同じ栃木県の県都・宇都宮には、栃木信用金庫があります。預貸率49.2%の栃木信用金庫と、預貸率40.3%の烏山信用金庫は、同じ県内でも貸出の度合いが異なります。県都の信金と、山あいのまちの信金。それぞれの土地に根ざす信金の姿は、栃木信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、和紙や農業を担う烏山の小さな事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。控えめな預貸率は、堅実に向き合う姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、根を張る土地を映す

預貸率40.3%という控えめな水準は、八溝山地のふもと、和紙と祭礼のまち烏山に根を張り、人口減少と向き合いながら地元を支えてきた信金の姿を映しています。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。烏山信用金庫の数字は、伝統の息づく山あいのまちに根ざす「からしん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。栃木県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、栃木県の地域金融機関のページもどうぞ。

烏山信用金庫と融資・保証のはなし

烏山信用金庫は、地域に根ざした信用金庫です。借りる・備えるのどちらを考えるにしても、土台になるのは日頃の取引と信用。口座づくりから保証制度まで、どんな立場でも知っておきたい融資・銀行取引の基礎をまとめました。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が低い金融機関は、相対的に融資先を求めている可能性をうかがう一つの目安になる。ただし、有価証券運用を主体とする金融機関は、預貸率が低くても融資に積極的とは限らない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
烏山信用金庫の沿革(1948年に烏山信用組合として設立、1952年に信用金庫法に基づき烏山信用金庫へ改組、2005年の市町村合併で所在地が烏山町から那須烏山市へ)、「からしん」の愛称に関する記述=烏山信用金庫公開情報・各種公開情報にもとづく。
那須烏山市の烏山和紙、山あげ祭(ユネスコ無形文化遺産)、八溝山地・那珂川に関する記述=各種公開情報。
足利銀行・栃木信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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