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栃木信用金庫——蔵のまちの信金は、薄い自己資本で何に貸すか

預貸率49.2%、預金2,776億円、自己資本比率5.87%。栃木市に本店を置く栃木信用金庫。蔵のまち・栃木に根ざす「とちしん」が、薄い自己資本で何に貸すか。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 栃木県

栃木県の栃木市に本店を置く栃木信用金庫は、地元で「とちしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2,776億円、店舗15。栃木市を中心に、小山・佐野など県南部を地盤としている。県名を冠する信金だが、本店は県庁所在地の宇都宮ではなく、県南の栃木市にある。

本拠の栃木は、巴波川(うずまがわ)の舟運で栄えた「蔵のまち」だ。江戸と日光を結ぶ例幣使街道の宿場町として、また江戸との舟運の拠点として栄え、いまも黒塗りの蔵が立ち並ぶ古い町並みが残る。明治の初めには、短い間ながら栃木県の県庁が置かれた歴史もある。周辺の県南部は、関東平野の一角で、農業と、東京圏に近い立地を生かした製造業が広がる。栃木信用金庫は、こうした蔵のまちと県南の平野に根ざしてきた信金だ。

この信金の数字で目を引くのは、自己資本比率5.87%という薄さだ。信用金庫としては、かなり低い水準にある。預貸率は49.2%と標準的だが、自己資本は薄い。なぜ、蔵のまちの信金は、これほど自己資本が薄いのか。同じ栃木県南の信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。栃木信用金庫の預金は2,776億円、貸出金は1,366億円。預貸率は49.2%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は5.87%、不良債権比率は2.34%。店舗数は15、中小企業等への貸出残高は1,238億円。

際立つのは、自己資本比率5.87%という薄さだ。信用金庫の自己資本比率は、国内基準で4%以上が求められるが、10%を超える先も多いなかで、栃木信用金庫の5.87%は低めの部類に入る。同じ県南部で、鹿沼市を地盤とする鹿沼相互信用金庫(自己資本比率9.44%・預貸率47.2%)と比べると、栃木信用金庫の自己資本比率5.87%は、鹿沼相互信用金庫(9.44%)を下回る。預貸率は両者とも5割弱で近く、不良債権比率も2%台で大きくは変わらない。同じ県南の信金でも、栃木信用金庫は自己資本が薄い。これは、過去の利益の蓄積や、抱える資産の状況を映していると読める。

栃木県南の二つの信用金庫(令和7年3月末)
 栃木信用金庫鹿沼相互信用金庫
本店栃木市鹿沼市
預金2,776億円2,260億円
預貸率49.2%47.2%
自己資本比率5.87%9.44%
不良債権比率2.34%2.34%

ともに栃木県南部を地盤とする二つの信金。預貸率も不良債権比率も近いが、自己資本比率には差がある。栃木信用金庫は自己資本が薄く、過去の利益の蓄積や資産の状況を映していると読める。

蔵のまちとともに——栃木信用金庫の歩み

栃木信用金庫は、蔵のまち・栃木の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。舟運の時代から続く商家、県南の農家や中小事業者、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。栃木信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら歩んできた。

栃木県南という土地は、信用金庫にとって、関東平野の落ち着いた地盤だ。農業と、東京圏に近い立地を生かした製造業がある。預貸率49.2%という標準的な水準は、地元の中小の資金需要に、過不足なく応えていることを示す。一方で、自己資本比率5.87%という薄さは、利益を厚く積み上げてきたとは言いにくい歩みを映していると読める。地域経済の伸びが限られるなかで、利益を厚い資本として蓄える余地は、大きくはなかったと読める。

5.87%を、蔵のまちの信金から読む

栃木信用金庫の自己資本比率5.87%という薄さは、これまでの利益の蓄積や、抱える資産の状況を映していると読める。信用金庫の自己資本は、主に長年の利益の積み重ねでできる。それが薄いということは、利益を厚く積み上げる環境に必ずしも恵まれてこなかったことの表れだと読める。不良債権比率2.34%という水準は、信用金庫として極端に高いわけではないが、薄い自己資本のもとでは、貸出先の健全性をより慎重に見極める必要がある。

預貸率49.2%という標準的な水準は、地元の中小の資金需要に応えていることを示す。薄い自己資本のもとで、無理に貸出を伸ばすのでなく、標準的な水準で堅実に貸す——それが、栃木信用金庫の数字に表れた現状だと読める。厚い自己資本を積む信金が「守り」を固めるのとは異なり、栃木信用金庫は、限られた資本のなかで地域に貸し続けるという姿が、数字に表れていると読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

栃木の経済とともに

栃木信用金庫の数字は、巴波川の舟運で栄えた蔵のまち・栃木と、県南の平野という土地、そして薄い自己資本のなかで地域に貸し続ける信金の歩みの、両方を映している。預金の半分弱を地元に貸しながら、限られた資本のなかで堅実に営んできた。県南の落ち着いた経済が、5.87%という薄い自己資本と、49.2%という標準的な預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の歩みを映す鏡だ。栃木信用金庫を見れば、蔵のまち・栃木の経済と、薄い資本で地域に貸し続ける信金の姿が浮かぶ。栃木県の他の金融機関は、両毛の足利小山信用金庫、県トップの地銀足利銀行、第二地銀の栃木銀行もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。栃木県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、栃木県の地域金融機関のページへ。

自己資本比率とは 自己資本比率とは、金融機関の総資産に対する自己資本の割合。損失が出たときに、自前の資本でどれだけ吸収できるかを示す、健全性の目安の一つだ。信用金庫には国内基準で4%以上が求められる。自己資本は主に長年の利益の積み重ねでできるため、その厚薄は、その金融機関の歩みと、地域経済の状況を映す。 → あわせて「預貸率の読み方」もどうぞ

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。鹿沼相互信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(栃木市に本店を置き、小山・佐野など栃木県南部を地盤とする信用金庫であること、栃木が巴波川の舟運と例幣使街道の宿場町で栄えた「蔵のまち」であること、明治初期に短期間県庁が置かれたこと)に関する記述=栃木信用金庫および各種公開情報にもとづく。
栃木・県南の地理・経済(巴波川、舟運、蔵のまち、例幣使街道、宿場町、関東平野)に関する記述=各種公開情報。

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