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徳島大正銀行——令和最初の合併で生まれた銀行は、なぜ大阪に貸すのか

預貸率85.2%、不良債権比率1.62%。徳島銀行と大正銀行が2020年に合併して生まれた徳島大正銀行。トモニホールディングス傘下の第二地銀が、本拠の徳島を越えて大阪に深く貸す姿を、合併の経緯と二つの地盤から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 徳島県

徳島県徳島市に本店を置く徳島大正銀行は、地元で「とくぎん」と呼ばれる第二地方銀行です。預金2兆3,864億円、貸出金2兆326億円、店舗98。香川県高松市に本社を置くトモニホールディングスの完全子会社で、同じグループの香川銀行とともに、四国と関西をまたいで展開しています。

この銀行には、少し変わった生い立ちがあります。2020年1月、徳島銀行が大正銀行を吸収合併して誕生した——これは、令和という時代に入って最初の銀行合併でした。徳島銀行は1918年に富岡無尽として徳島で創業し、事業性融資や中小企業取引を強みとしてきた銀行。一方の大正銀行は1922年に大阪で生まれ、住宅・不動産分野と大阪の地盤を持つ銀行でした。徳島の中小企業取引のノウハウと、大阪の不動産・営業基盤。この二つが一つになったことが、徳島大正銀行の数字を読む鍵になります。

この銀行の数字で目を引くのは、預貸率85.2%という高さです。集めた預金の8割以上を貸出に回しています。徳島県は人口減少が進み、地元の資金需要だけでこれほど貸すのは簡単ではありません。なぜ、これだけ貸せるのか。その答えは、本拠地を越えた先にあります。

まず、数字を並べる

徳島大正銀行の預金は2兆3,864億円、貸出金は2兆326億円、預貸率85.2%。自己資本比率は8.62%、不良債権比率は1.62%。中小企業等向けの貸出残高は1兆7,761億円にのぼります。

徳島大正銀行(令和7年3月末)
預金2兆3,864億円
貸出金2兆326億円
預貸率85.2%
自己資本比率8.62%
不良債権比率1.62%
中小企業等向け貸出残高17,761億円
店舗98店

預金の8割超を貸出に回す。その貸す相手は、徳島だけにとどまりません。

85.2%を、二つの地盤から読む

預貸率85.2%という高さは、徳島大正銀行が徳島県内だけでなく、関西という大きな市場を貸出先として取り込んできたことの表れです。

もともと徳島県と大阪府は、人やモノ、お金の往来が深い土地です。徳島銀行と香川銀行は経営統合の前から関西地区を重視し、トモニホールディングスは2016年、大阪を地盤とする大正銀行を傘下に加えました。その狙いははっきりしていました。徳島・香川の両行は地元の資金需要が鈍る一方で規模は比較的大きく、運用先を探していた。対する大正銀行は不動産を中心に大阪で資金需要を抱えていた。余る資金と、貸す相手。この二つを一つのグループのなかで結びつけたのが、一連の再編でした。2020年の徳島銀行と大正銀行の合併は、その仕上げにあたります。預貸率85.2%という数字は、人口の減る徳島の資金を、需要のある大阪・関西で働かせるという、この戦略の結果と読めます。

実際、グループは大阪地区での貸出を大きく伸ばしてきました。徳島・大阪の支店網が一つになったことで、徳島の企業が関西に進出する際の橋渡しや、両地域をまたぐビジネスのマッチングも進んだとされます。本拠地の限界を、隣接する大都市圏との結びつきで補う——和歌山の紀陽銀行が大阪に貸し込むのと、よく似た構図がここにもあります。

徳島大正銀行が示すのは、合併が生んだ二つの地盤の組み合わせです。徳島で培った中小企業取引のノウハウと、大正銀行から受け継いだ大阪の基盤。人口の減る地元の資金を、需要のある大都市で働かせる――預貸率85.2%は、その設計を映した数字です。

1.62%という不良債権比率

不良債権比率1.62%は、第二地方銀行としては低めの水準です。これだけ積極的に貸しながら焦げ付きを抑えているのは、徳島銀行が培ってきた事業性融資の審査力と、大正銀行由来の不動産分野のノウハウが、合併によって共有されてきたことが一因と読めます。徳島の中小企業取引と大阪の不動産取引という、性格の違う二つの貸出を抱えることは、リスクの分散という面でも働きます。もっとも、不良債権比率には個別の事情や引当方針も絡むため、低さがそのまま盤石を意味するわけではありません。自己資本比率は8.62%と、けっして厚いとはいえず、収益基盤の強化が課題として残ることも、決算からはうかがえます。

なぜ、こうなったのか——再編という選択

徳島大正銀行の姿は、地方銀行が人口減少という現実にどう向き合うかの、一つの答えでもあります。地元の市場が縮むなかで、単独で生き残るのは難しい。そこで、同じ課題を抱える銀行どうしが一つのグループにまとまり、足りない地盤を補い合う。徳島・香川という四国の二行に、大阪の大正銀行が加わったトモニホールディングスは、まさにその形です。合併や経営統合は、規模を追うためだけのものではなく、貸す相手のいる市場へ届くための手段でもある——徳島大正銀行は、そう教えてくれます。

借り手にとっての意味

徳島と大阪・関西の双方に地盤を持つ銀行は、両地域の事業者にとって、選択肢のひとつになりえます。とりわけ、徳島から関西へ、あるいはその逆へと事業を広げたい企業にとって、両地域をまたいで支店を持つ銀行の存在は心強いものです。ただし、預貸率の高さが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、選んだ道を映す

預貸率85.2%という高さは、徳島という本拠地の限界を、大阪・関西への展開と合併で乗り越えてきた銀行の歩みを映しています。同じ「よく貸す第二地銀」でも、グループの資金力を背景に貸す銀行もあれば、合併で得た二つの地盤を生かして貸す銀行もある。数字は、その金融機関がどんな選択を重ねてきたかを語ります。徳島大正銀行の数字は、令和最初の合併が描いた、一つの生き残りの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地や歩みの事情が刻まれた、それぞれの姿があります。徳島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、徳島県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
徳島銀行と大正銀行の2020年1月の合併(令和初の銀行合併)、徳島銀行・大正銀行・香川銀行の沿革と強み、トモニホールディングスによる大正銀行の傘下化(2016年)と大阪地区での展開に関する記述=徳島大正銀行・トモニホールディングスの公開情報および各種報道(日本経済新聞等)にもとづく。
徳島県と大阪府の経済的な結びつきに関する記述=各種公開情報。

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