警視庁職員信用組合——警察職員のための信組は、なぜ焦げ付きが0.17%なのか
不良債権比率0.17%、預貸率70.0%、預金5,201億円。千代田区に本店を置く警視庁職員信用組合。警察職員のための職域信組が、なぜこれほど焦げ付きが少ないのか。その数字と仕組みを読む。
東京都千代田区に本店を置く警視庁職員信用組合は、その名のとおり、警視庁の職員のための信用組合だ。地域の住民や事業者ではなく、特定の職域に属する人々を組合員とする「職域信用組合」である。預金5,201億円。職域信組としては大きな規模を持つ。
信用組合には、地域に根ざす「地域信組」のほかに、特定の業種や職場の人々が組合員となる「業域信組」「職域信組」がある。警視庁職員信用組合は後者の代表例で、組合員は警視庁の職員とその家族などに限られる。預金を預けるのも、お金を借りるのも、基本的には警察関係者だ。一般の地域金融機関とは、成り立ちも、貸し方も大きく異なる。
この信組の数字で目を引くのは、不良債権比率0.17%という、際立った低さだ。1%を大きく下回り、ほとんど焦げ付きがない。同時に、預貸率は70.0%と高い。よく貸しながら、ほとんど焦げ付かない。なぜ、こんなことが可能なのか。同じ東京の職域信組とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。警視庁職員信用組合の預金は5,201億円、貸出金は3,640億円。預貸率は70.0%で、預金の7割を貸出に回している。自己資本比率は16.08%と厚く、不良債権比率は0.17%と極めて低い。店舗数は7。
際立つのは、不良債権比率0.17%という低さと、預貸率70.0%という高さの両立だ。同じ東京の職域信組である東京都職員信用組合(預貸率69.7%・不良債権比率0.28%)と並べると、両者はよく似ている。預貸率はともに7割近く、不良債権比率はともに1%を大きく下回る。職域信組は、よく貸しながら、ほとんど焦げ付かない。これは偶然ではなく、職域信組ならではの仕組みによるものだと読める。
| 警視庁職員信用組合 | 東京都職員信用組合 | |
|---|---|---|
| 組合員 | 警視庁の職員等 | 東京都の職員等 |
| 預金 | 5,201億円 | 612億円 |
| 預貸率 | 70.0% | 69.7% |
| 自己資本比率 | 16.08% | 21.37% |
| 不良債権比率 | 0.17% | 0.28% |
ともに公務員を組合員とする東京の職域信組。預貸率は7割近く、不良債権比率は1%を大きく下回る。よく貸しながらほとんど焦げ付かない、職域信組ならではの姿が共通して表れている。東京都職員信用組合とあわせて読みたい。
職域の信組という仕組み——なぜ焦げ付かないのか
警視庁職員信用組合の貸出は、その多くが組合員である警察職員への、住宅ローンや自動車ローン、生活資金といった個人向けのものだ。ここに、焦げ付きの極端な少なさの理由がある。組合員は安定した職に就いた公務員であり、収入が安定している。給与天引きでの返済が可能なことも多く、返済が滞るリスクは、一般の事業者向け貸出に比べて格段に低い。貸し倒れがほとんど起きないため、不良債権比率は0.17%という極端な低さになる。
預貸率70.0%という高さも、同じ理由で説明できる。安定した組合員に安心して貸せるため、集めた預金を積極的に貸出に回せる。地域の事業者への貸出のように、相手の経営状況を細かく見極める必要は少ない。組合員という閉じた、信頼できる集団のなかで、預金を集め、貸し出す——この職域信組の仕組みが、よく貸しながら焦げ付かないという、一般の地域金融機関では難しい数字を生んでいると読める。
0.17%を、職域信組から読む
警視庁職員信用組合の不良債権比率0.17%という際立った低さは、組合員が安定した収入を持つ警察職員に限られるという、職域信組の性格そのものの表れだと読める。これは、この信組の経営が特別に優れているという話というより、組合員の性質によって構造的にもたらされる数字だ。地域経済の浮き沈みや、事業者の倒産リスクとは、ほとんど無縁の世界で貸し借りが行われている。
自己資本比率16.08%という厚さも、安定した経営の表れだ。閉じた職域のなかで、安定した組合員に着実に貸し、ほとんど焦げ付かせず、健全性を保つ——それが、警視庁職員信用組合の数字に表れた姿だ。地域に根ざす信用金庫や信用組合とは異なる、職域金融機関ならではの数字の読み方が、ここにある。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
職域金融という世界
警視庁職員信用組合の数字は、地域ではなく職域に根ざすという、信用組合のもう一つのかたちを映している。警察職員という安定した組合員のなかで、預金を集め、よく貸し、ほとんど焦げ付かせない。その数字は、地域経済を映す地域金融機関の数字とは、まったく別の論理で動いている。協同組織金融機関には、地域に根ざすものだけでなく、こうした職域に根ざすものもあることを、この信組は教えてくれる。
銀行や信用金庫・信用組合の数字は、その成り立ちと、貸し借りの相手を映す鏡だ。警視庁職員信用組合を見れば、職域金融という独自の世界が浮かぶ。東京の他の業域・職域信組は、都職員のための東京都職員信用組合、証券業界の東京証券信用組合もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京都の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用組合の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。東京都職員信用組合の数値も同出典。
性格・仕組み(千代田区に本店を置き、警視庁の職員等を組合員とする職域信用組合であること、貸出が組合員向けの住宅ローン・自動車ローン・生活資金など個人向け中心であること、職域信組・業域信組・地域信組という信用組合の区分)に関する記述=警視庁職員信用組合および各種公開情報にもとづく。