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西武信用金庫——中央線文化圏の信金は、多摩でよく貸して何を支えるか

預貸率68.1%、預金2.2兆円、店舗76。中野区に本店を置く西武信用金庫。中央線沿線から多摩へ広がり、事業承継・創業支援に積極的なことで知られる都市型の大型信用金庫。その数字と歴史を読む。

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東京都中野区に本店を置く西武信用金庫は、地元で「せいぶしんきん」と呼ばれる信用金庫だ。中野・杉並といった23区西部から、武蔵野・三鷹・国分寺など中央線沿線、そして多摩地区へと、東京の西半分に広く店舗網を張る、信用金庫のなかでも屈指の規模を持つ大型信金である。

その地盤は、いわゆる「中央線文化圏」と重なる。新宿から西へ延びる中央線の沿線は、古書店やライブハウス、個人商店や小さな工房、そして数えきれない中小企業と個人事業主が集まる土地だ。大企業の本社が並ぶ都心とも、住宅団地の広がる郊外とも違う、雑多で活気のある事業者の街——その性格が、この信金の数字に表れている。

同じ東京の西側には、多摩地区を地盤とする巨大信金・多摩信用金庫がある。だが、二つの信金は、数字の上で対照的な顔を持つ。とりわけ違うのが、預貸率だ。集めた預金のうち、どれだけを貸出に回しているか——その一点に、西武信用金庫の性格がはっきり出る。数字とともに読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。西武信用金庫の預金は2兆1,953億円、貸出金は1兆4,954億円。預貸率は68.1%で、預金の7割近くを貸出に回している。自己資本比率は13.87%と厚く、不良債権比率は1.87%と低い。店舗数は76、中小企業等への貸出残高は1兆4,396億円にのぼる。

目を引くのは、預貸率68.1%という高さだ。信用金庫は、預金を集めても貸出が伸びず、預貸率が3〜5割にとどまる先が多い。そのなかで7割近いこの数字は、都市型の大型信金としてよく貸している部類に入る。同じ東京西部の多摩信用金庫(36.6%)と比べると、その差は際立つ。集めた預金を、運用に回すより、地元の事業者に貸すことに向けている——その姿勢が数字に出ている。しかも自己資本は厚く、焦げ付きは低い。よく貸しながら健全さも保っている。

東京西部の二つの大型信金(令和7年3月末)
 西武信用金庫多摩信用金庫
本店中野区立川市
預金21,953億円32,742億円
貸出金14,954億円11,967億円
預貸率68.1%36.6%
自己資本比率13.87%8.65%

同じ東京西部の大型信金でも、性格は大きく異なる。預金量では多摩信用金庫が上回るが、貸出金では西武信用金庫のほうが多い。預貸率の差は、貸すことに向かう度合いの違いを映している。

中央線沿線から、多摩へ——合併を重ねた都市型信金

西武信用金庫の歴史は、東京西部の複数の信用金庫が合併を重ねてきた歩みだ。中野・杉並を地盤とする信金を母体に、中央線沿線や多摩地区の信金と一つになりながら、東京の西半分を覆う規模へと育ってきた。「西武」の名は、西武鉄道とは関係なく、「東京の西部」を意味する。私鉄沿線の特定エリアではなく、23区西部から多摩までという広い「西の東京」を地盤とする信金、という名乗りである。

この信金が全国的に知られるのは、事業承継や創業の支援に早くから力を入れてきたことだ。中央線沿線には、長く続いてきた個人商店や小さな町工場が数多くあり、その多くが後継者の問題を抱えている。一方で、新しく事業を始めようとする人も、この街には絶えず集まってくる。代を継ぐ事業者と、新たに起こす事業者——その両方に資金と知恵を出すことが、雑多な事業者の街を地盤とする信金の役割になってきた。

68.1%を、事業者の街から読む

西武信用金庫の預貸率68.1%は、信用金庫としてよく貸す部類に入る。この高さの背景には、中央線文化圏という、事業者の数が多く資金需要も厚い土地がある。古書店や飲食店、IT系の小さな会社、町工場、デザイン事務所——大企業の本社こそ少ないが、無数の中小事業者と個人事業主がひしめく。貸す相手が豊富にいることが、高い預貸率を支えている。

そして、自己資本比率13.87%という厚さと、不良債権比率1.87%という低さが、その貸出が無理のないものであることを示している。よく貸しながら、焦げ付きは低く抑え、資本も厚く積む。事業承継や創業の支援を通じて、貸す相手の事業そのものに深く関わることで、リスクを見極めながら貸す——その積み重ねが、よく貸すことと健全さの両立につながっていると読める。多摩信用金庫が、住宅都市という地盤ゆえに集めた預金を運用に回すのと対照的に、西武信用金庫は、事業者の街という地盤ゆえに、その預金を貸出へと向けている。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

西の東京とともに

西武信用金庫の数字は、中野から多摩へと広がる「西の東京」という土地と、事業者に深く関わって貸す都市型信金の歩みの、両方を映している。合併を重ねて東京西部を覆う規模に育ち、事業承継と創業の支援を通じて、雑多で活気のある事業者の街に貸し続けている。預金を運用に逃がすのではなく、地元の事業に向ける——その姿が、68.1%という高い預貸率と、厚い自己資本の両立に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。西武信用金庫を見れば、中央線沿線の事業者の街と、そこに深く貸す都市型信金の姿が浮かぶ。同じ東京西部の対照的な信金は、多摩信用金庫の記事もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京都の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が高い金融機関は、相対的に地元の資金需要を多く取り込んでいる一つの目安になる。ただし、自己資本の厚さや焦げ付きの低さとあわせて見ないと、健全さまではわからない。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。多摩信用金庫の数値も同出典。
沿革(東京西部の複数の信用金庫が合併を重ねて現在の規模となったこと、中野・杉並など23区西部から中央線沿線・多摩地区へ広がる地盤を持つこと、行名「西武」が東京の西部を意味すること、事業承継・創業支援に力を入れてきたこと)に関する記述=西武信用金庫および各種公開情報にもとづく。
東京西部の地理・経済(中央線沿線のいわゆる文化圏、中小事業者・個人事業主の集積)に関する記述=各種公開情報。

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