¥Today ニホン銀行紀行

巣鴨信用金庫——「楽しいお付き合い」を掲げる信金は、都心で何に貸すか

預貸率47.2%、預金2兆88億円、店舗41。豊島区に本店を置く巣鴨信用金庫。「おばあちゃんの原宿」巣鴨に根ざし、ホスピタリティ経営で知られる都市型の大型信用金庫。その数字と歴史を読む。

ニホン銀行紀行 ・ 東京都

東京都豊島区に本店を置く巣鴨信用金庫は、地元で「すがもしんきん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2兆88億円、店舗41。全国の信用金庫でも屈指の規模を持つ大型信金である。本拠の巣鴨を中心に、東京北部から埼玉県南部にかけて店舗を広げている。

本拠の巣鴨は、「おばあちゃんの原宿」として知られる町だ。とげぬき地蔵で有名な高岩寺の門前に広がる巣鴨地蔵通り商店街は、高齢者に親しまれる商店街として全国に名を知られる。下町の人情が残り、商店や個人事業者が集まる土地だ。巣鴨信用金庫は、こうした下町の商いとともに育ってきた信金で、「ホスピタリティ」を経営の柱に掲げることで知られる。来店した客に楽しんでもらう独自のサービスや、地域の催しへの取り組みなど、数字には表れない「お付き合い」を大切にする経営姿勢が、この信金の個性になっている。

この信金の数字を見ると、預貸率47.2%という、信用金庫として標準よりやや低めの水準が目を引く。2兆円もの預金を集めながら、貸出はその半分弱。なぜこれほどの預金が集まり、貸出は抑えめなのか。同じ都市部の大型信金とも比べながら、数字を読みにいく。

数字を並べてみる

まず、絶対値から。巣鴨信用金庫の預金は2兆88億円、貸出金は9,487億円。預貸率は47.2%で、預金の半分弱を貸出に回している。自己資本比率は10.95%、不良債権比率は3.35%。店舗数は41、中小企業等への貸出残高は9,452億円にのぼる。

2兆円もの預金は、信用金庫として全国でも屈指の規模だ。同じ東京北部を地盤とする最大手・城北信用金庫(預金2兆6,571億円・預貸率49.3%)と並ぶ、都内有数の大型信金である。両者の預貸率はともに5割弱で近い。都市部の大型信金は、預金を集める力が非常に強い一方、その全てを地元の貸出だけでは回しきれない。集まった豊富な預金の一部は、貸出に加えて有価証券の運用などにも向かう。その結果、預貸率は5割前後にとどまる。これは、人口と資産が集まる大都市・東京の信金に共通して見られる構図だと読める。

東京北部の大型信用金庫(令和7年3月末)
 巣鴨信用金庫城北信用金庫
本店豊島区荒川区
預金20,088億円26,571億円
預貸率47.2%49.3%
自己資本比率10.95%8.13%
不良債権比率3.35%3.13%

東京北部を地盤とする二つの大型信金。ともに2兆円を超える預金を集めながら、預貸率は5割弱で近い。大都市・東京で預金を集める力の強さと、貸出とのバランスがうかがえる。

下町の人情とともに——巣鴨信用金庫の歩み

巣鴨信用金庫は、巣鴨の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。下町・巣鴨に集まる商店や個人事業者、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。長い年月をかけて、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、都内有数の規模へと成長してきた。

この信金を語るうえで欠かせないのが、「ホスピタリティ」を前面に掲げる独自の経営だ。店舗を訪れる客をもてなす姿勢や、地域とのつながりを大切にする催し、ユニークな商品やサービスなど、金融機関の枠を超えた「お付き合い」を重んじる。金利や利便性だけでなく、人と人とのつながりで選ばれることを目指す姿勢が、豊富な預金を集める力の背景にあるとも読める。下町の人情が残る巣鴨という土地柄と、この経営姿勢は深く結びついている。

47.2%を、都心の信金から読む

巣鴨信用金庫の預貸率47.2%という水準は、大都市・東京で預金を集める力が非常に強いことの裏返しだと読める。2兆円もの預金が集まる一方で、地元の中小事業者や個人への貸出には、おのずと適正な規模がある。無理に貸し込めば焦げ付きのリスクが増す。集めた預金のうち貸出に回りきらない分は、有価証券の運用などに向かい、預貸率は5割弱にとどまる。

自己資本比率10.95%、不良債権比率3.35%という数字は、都市型の大型信金として標準的な水準だ。派手に貸して規模を追うのでなく、豊富な預金を背景に、堅実に地元へ貸しながら、人とのつながりで選ばれる経営——それが、巣鴨信用金庫の数字と個性に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。

東京の経済とともに

巣鴨信用金庫の数字は、「おばあちゃんの原宿」巣鴨という下町の人情の土地と、そこで人とのつながりを大切にしながら堅実に貸す大型信金の歩みの、両方を映している。2兆円もの預金を集める力を持ちながら、預金の半分弱を地元に貸し、ホスピタリティを掲げて地域に寄り添ってきた。大都市・東京で預金を集める力の強さが、47.2%という預貸率に表れている。

銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。巣鴨信用金庫を見れば、下町・巣鴨の人情の経済と、そこで人とのつながりを大切にする信金の姿が浮かぶ。東京の他の信用金庫は、都心の中小企業に貸す芝信用金庫、人を見て貸す城南信用金庫、多摩の多摩信用金庫もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。東京都の他の金融機関と並べて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページへ。

預貸率とは 預貸率(よたいりつ)とは、金融機関の貸出金残高を預金残高で割った比率。預かった資金のうち、どれだけを貸出に回しているかを示す。預貸率が中位の金融機関は、地元の資金需要に応えつつ、運用とのバランスを取っている一つの目安になる。ただし、預金を集める力が非常に強い大都市の金融機関は、貸出が追いつかず預貸率が低めにとどまることがある。 → くわしくは「預貸率の読み方

執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。城北信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(豊島区に本店を置き、東京北部から埼玉県南部を地盤とする信用金庫であること、巣鴨が「おばあちゃんの原宿」と呼ばれ巣鴨地蔵通り商店街・とげぬき地蔵〔高岩寺〕で知られること、ホスピタリティを経営の柱に掲げること)に関する記述=巣鴨信用金庫および各種公開情報にもとづく。
巣鴨の地理・文化(豊島区、巣鴨地蔵通り商店街、とげぬき地蔵、下町の商い)に関する記述=各種公開情報。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ