山形銀行——紅花商人の系譜をひく県トップバンクは、何に貸すか
預貸率71.6%、不良債権比率0.98%。山形市に本店を置く山形銀行。両羽銀行を源流とし、紅花商人らの同族経営で県の内陸部に根を張ってきた県トップバンク・指定金融機関の数字を、低い焦げ付きから読みます。
山形県山形市に本店を置く山形銀行は、地元で「やまぎん」と呼ばれる、山形県のトップバンクです。預金2兆8,498億円、貸出金2兆407億円、店舗84。山形市・米沢市など県の内陸部を主要な地盤とし、山形県や山形市などの指定金融機関——公金を扱う銀行——を受託しています。
本拠地の山形県は、米・さくらんぼ・果樹を中心とする豊かな農業県です。とりわけ内陸部は、山形盆地・米沢盆地に商業と農業が集まり、古くから栄えてきました。山形銀行の歩みは、この土地の商いの歴史と深く結びついています。その源流は、1896年に設立された両羽(うば)銀行。第八十一国立銀行の業務を継承し、1965年に「山形銀行」へと改称しました。注目すべきは、その経営の担い手です。創業に参画した山形の大地主・三浦家と、紅花商人として財をなした長谷川家による同族経営が連綿と続き、頭取人事は両家による輪番制とされてきたといわれます。紅花で栄えた土地の商人の系譜が、県トップバンクの背骨にある——この成り立ちが、山形銀行の数字を読む鍵になります。
この銀行の数字で目を引くのは、不良債権比率0.98%という、1%を切る低さです。預貸率は71.6%で、集めた預金の7割を超える額を貸出に回しています。よく貸しながら、焦げ付きはきわめて低い。この組み合わせを、県トップバンクの地盤から読みます。
まず、数字を並べる
山形銀行の預金は2兆8,498億円、貸出金は2兆407億円、預貸率71.6%。自己資本比率は9.8%、不良債権比率は0.98%と低い水準です。中小企業等向けの貸出残高は1兆1,634億円にのぼります。
| 預金 | 2兆8,498億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 2兆407億円 |
| 預貸率 | 71.6% |
| 自己資本比率 | 9.8% |
| 不良債権比率 | 0.98% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 11,634億円 |
| 店舗 | 84店 |
不良債権比率0.98%という低さ。県トップバンクの手堅さを数字から読む。
71.6%と0.98%を、県トップバンクの地盤から読む
預貸率71.6%という水準と、不良債権比率0.98%という低さ。この組み合わせは、県の経済を代表する地銀の、手堅い経営を示しています。
山形銀行が貸す相手は、山形市・米沢市を中心とする県内の事業者です。県の指定金融機関として公金を扱い、県内のあらゆる業種・規模の企業と取引してきました。米・果樹を中心とする農業、その加工・流通を担う食品産業、内陸の製造業、そして県都・山形市の商業——県の経済そのものに、満遍なく貸している。預貸率71.6%は、集めた預金の7割を超える額を県内に回す、地方銀行として手堅い水準です。多様な業種・地域に貸し先が分散しているため、特定の産業の浮き沈みに左右されにくく、長年にわたって県内の取引先を深く知る目利きも効く。不良債権比率0.98%という1%を切る低さは、県トップバンクとしての地力と、堅実な貸出の積み重ねの表れと読めます。
もっとも、不良債権比率には景気や引当方針も絡むため、低さがそのまま盤石を意味するわけではありません。自己資本比率9.8%は、大手地銀のなかでは特別に厚いわけではなく、堅実だが派手さのない経営という印象です。三浦家・長谷川家の同族経営が続いてきたという歴史は、長期的な視点での安定経営につながってきた一面があると考えられますが、その評価は分かれるところでもあります。ただ、紅花商人の系譜をひき、県の経済と一体に歩んできた銀行であることを抜きに、この低い焦げ付きは読めません。
同じ県の、もうひとつの銀行と並べてみる
同じ山形県には、第二地方銀行のきらやか銀行があります。きらやか銀行は、公的資金を背負い、宮城・山形の中小企業支援を使命として、預貸率87.9%・不良債権比率5.82%という、攻めの数字を持っていました。県トップバンクの山形銀行(71.6%・0.98%)とは、対照的な数字です。県の経済を代表し、手堅く貸して焦げ付きを低く抑える地銀と、公的資金を背負ってリスクを取りながら中小企業を支える第二地銀。これは優劣ではなく、規模も立場も使命も違う二行の役割の差です。同じ山形県でも、銀行の立ち位置が違えば、数字はこれだけ異なります。山形のもうひとつの銀行の姿は、きらやか銀行の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
県トップバンクは、山形県の事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。県の指定金融機関として公金を扱い、県内のあらゆる業種と取引してきた地銀は、相応の資金力と、県内を知り抜いた目を併せ持っています。低い不良債権比率は経営の安定を示しますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、県の地力を映す
預貸率71.6%という手堅さと、不良債権比率0.98%という低さは、紅花商人の系譜をひき、県の経済全体に根を張ってきた県トップバンクの姿を映しています。公的資金を背負ってリスクを取る銀行もあれば、山形銀行のように県と一体に手堅く歩む銀行もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな歴史を重ねてきたかを語ります。山形銀行の数字は、紅花で栄えた土地のトップバンクの、いまの記録です。
同じ山形県には、日本海側の庄内地方を地盤とする荘内銀行(預貸率74.2%)もあります。内陸の県都に本店を置き単独で歩む山形銀行と、庄内に根ざし秋田の北都銀行との合併を控える荘内銀行とは、同じ山形県を内陸と日本海側とで分け合いながら、単独と再編という対照的な道を歩んでいます。庄内の地銀の姿は、荘内銀行の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。山形県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、山形県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
山形銀行の沿革(1896年に両羽銀行として設立、第八十一国立銀行の業務を継承、1965年に山形銀行へ改称)、三浦家・長谷川家(紅花商人)による同族経営と頭取の輪番制、山形県・山形市の指定金融機関であること、内陸部を主要地盤とすることに関する記述=山形銀行および各種公開情報にもとづく。
山形県の産業(米・さくらんぼ・果樹を中心とする農業等)に関する記述=各種公開情報。
きらやか銀行の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。