東山口信用金庫——防府の信金は、瀬戸内の工業地帯で何に貸すか
預貸率50.9%、預金2,053億円、不良債権比率2.63%。防府市に本店を置く東山口信用金庫。瀬戸内の工業のまち・防府に根ざす「ひがしん」が、何に貸すか。その数字と歴史を読む。
山口県の防府市に本店を置く東山口信用金庫は、地元で「ひがしん」と呼ばれる信用金庫だ。預金2,053億円、店舗27。防府市を中心に、周南・山口など山口県中東部の瀬戸内沿岸を地盤としている。名のとおり、山口県の東部を地盤とする信金だ。
本拠の防府は、瀬戸内海に面した山口県中部の工業都市だ。古くは周防国の国府が置かれた歴史を持ち、防府天満宮の門前町として栄えた。近代以降は、自動車工場をはじめとする製造業が集まる工業のまちとなり、いまも瀬戸内工業地域の一角を担う。周辺の周南には石油化学コンビナートが広がり、山口県中東部は瀬戸内の重化学工業と、ものづくりの集積する地域だ。東山口信用金庫は、こうした工業のまちに根ざしてきた信金である。
この信金の数字を見ると、預貸率50.9%という、信用金庫として標準的な水準が目を引く。預金の半分強を貸出に回している。瀬戸内の工業地帯で、東山口信用金庫は何に貸しているのか。同じ山口県の信金とも比べながら、数字を読みにいく。
数字を並べてみる
まず、絶対値から。東山口信用金庫の預金は2,053億円、貸出金は1,045億円。預貸率は50.9%で、預金の半分強を貸出に回している。自己資本比率は11.64%、不良債権比率は2.63%。店舗数は27、中小企業等への貸出残高は842億円。
山口県には複数の信用金庫がある。同じ瀬戸内沿岸で、下関市を地盤とする西中国信用金庫(預貸率54.3%・不良債権比率6.29%)と比べると、規模では西中国信用金庫が上回る。東山口信用金庫の不良債権比率2.63%は、西中国信用金庫(6.29%)を大きく下回り、焦げ付きが低い。預貸率は両者とも5割台で近い。同じ山口県の瀬戸内の信金でも、東山口信用金庫は、標準的な預貸率で貸しながら、焦げ付きを低く抑えている。工業のまちで貸しながらも、貸出先を堅実に見極めていることが、低い不良債権比率に表れていると読める。
| 東山口信用金庫 | 西中国信用金庫 | |
|---|---|---|
| 本店 | 防府市 | 下関市 |
| 預金 | 2,053億円 | 5,110億円 |
| 預貸率 | 50.9% | 54.3% |
| 自己資本比率 | 11.64% | 9.56% |
| 不良債権比率 | 2.63% | 6.29% |
ともに山口県の瀬戸内沿岸を地盤とする二つの信金。規模では西中国信用金庫が上回るが、東山口信用金庫は焦げ付きがより低い。標準的な預貸率で貸しながら堅実に見極める姿が数字に表れている。
防府とともに——東山口信用金庫の歩み
東山口信用金庫は、瀬戸内の工業のまち・防府の商人や事業者の相互扶助の金融機関として育ってきた。製造業を支える中小の事業者、商店、そして地域の住民——こうした人々が預金を預け、必要なときに資金を借りる。東山口信用金庫は、地域の暮らしと商いに寄り添いながら、山口県中東部に店舗を広げてきた。
山口県中東部という土地は、信用金庫にとって、ものづくりに支えられた地盤だ。防府の自動車関連、周南の石油化学など、瀬戸内工業地域の製造業が集まる。一方で、大企業や体力のある製造業も多く、信用金庫が貸す中小向けの需要には限りもある。工業のまちで預金は集まるが、貸出先となる中小の資金需要は、標準的な水準にとどまる——この構図が、50.9%という預貸率の背景にあると読める。そのなかで、貸出先を堅実に見極めることで、焦げ付きを2.63%と低めに抑えている。
50.9%を、工業のまちの信金から読む
東山口信用金庫の預貸率50.9%という標準的な水準は、瀬戸内の工業のまちで、中小の資金需要に過不足なく応えていることの表れだと読める。製造業の集積する土地では、関連する中小事業者の運転資金や設備資金の需要があり、信用金庫はそれに応えて預金の半分強を貸出に回せる。大企業も多い土地ゆえ、貸出が爆発的に伸びるわけではないが、地域に根ざした貸出の機会は絶えない。
不良債権比率2.63%という低さは、工業のまちで貸しながらも、貸出先を堅実に見極めていることを示す。焦げ付きの高い西中国信用金庫とは対照的に、東山口信用金庫は低い焦げ付きを保つ。自己資本比率11.64%という水準も、信用金庫として手堅い。瀬戸内の工業のまちで標準的に貸し、焦げ付きを低く抑えながら、地域に根を張る——それが、東山口信用金庫の数字に表れた生き方だと読める。預貸率という数字をどう読むかについては、預貸率の読み方もあわせてどうぞ。
防府の経済とともに
東山口信用金庫の数字は、瀬戸内の工業のまち・防府と、山口県中東部という土地、そして標準的に貸しながら焦げ付きを低く抑える信金の歩みの、両方を映している。預金の半分強を地元に貸しながら、貸出先を堅実に見極め、焦げ付きを低く保ってきた。瀬戸内工業地域の経済が、50.9%という標準的な預貸率に表れている。
銀行や信用金庫の数字は、その土地の経済と、その金融機関の生き方を映す鏡だ。東山口信用金庫を見れば、瀬戸内の工業のまち・防府の経済と、そこで堅実に貸す信金の姿が浮かぶ。山口県の他の金融機関は、県トップの地銀山口銀行、第二地銀の西京銀行、山口県信用組合もあわせてどうぞ。預貸率という数字の読み方については、預貸率の読み方へ。山口県の他の金融機関と並べて眺めたい方は、山口県の地域金融機関のページへ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高・店舗数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(信用金庫の計数は百万円単位を億円に換算。預貸率は貸出金÷預金で算出)。西中国信用金庫の数値も同出典。
沿革・地域(防府市に本店を置き、周南・山口など山口県中東部の瀬戸内沿岸を地盤とする信用金庫であること、防府が周防国の国府が置かれた歴史を持ち、防府天満宮の門前町・瀬戸内の工業都市であること、周南に石油化学コンビナートが広がること)に関する記述=東山口信用金庫および各種公開情報にもとづく。
防府・山口の地理・産業(瀬戸内海、周防国、防府天満宮、自動車工場、瀬戸内工業地域、石油化学)に関する記述=各種公開情報。