山口銀行——アジアに開いた地銀は、本州西端で何に貸すか
預貸率79.3%、預金5.9兆円、自己資本13.77%。下関市に本店を置く山口銀行。第百十国立銀行を源流とし、もみじ銀行・北九州銀行とYMFGを構成する地銀が、海峡の地で何に貸すかを読みます。
山口県下関市に本店を置く山口銀行は、地元で「やまぎん」と呼ばれる地方銀行です。預金5兆8,768億円、貸出金4兆6,613億円、店舗126。山口県のトップバンクであり、もみじ銀行(広島)・北九州銀行(福岡)とともに山口フィナンシャルグループ(YMFG)を構成する中核銀行です。本州の西端・関門海峡に臨む下関に本店を置き、対岸の北九州ともつながる立地が特徴です。
本拠地の山口県は、本州最西端に位置し、瀬戸内海沿岸に石油化学・セメントなどの工業地帯を抱える県です。周南・宇部・岩国などのコンビナートが連なり、製造業が経済を支えます。さらに、関門海峡を挟んで九州・北九州と一体の経済圏を形づくり、古くから大陸との交易の窓口でもありました。本州と九州の結節点であり、アジアに開かれた土地——この海峡の地という土地柄が、山口銀行の数字を読む鍵になります。
山口銀行の歩みは古く、源流は1878年に創業した第百十国立銀行にさかのぼります。1944年3月、百十・宇部・船城・華浦・大島の5行が合併して、現在の山口銀行が設立されました。その後、2006年には持株会社YMFGを設立し、もみじ銀行を傘下に収め、2011年には北九州銀行を新設しました。山口銀行は、人民元建融資の取扱認可を地方銀行として初めて受けるなど、アジアとの取引に強みを持つことでも知られます。数字の面で目を引くのは、預貸率79.3%という水準と、自己資本比率13.77%という際立った厚みです。
まず、数字を並べる
山口銀行の預金は5兆8,768億円、貸出金は4兆6,613億円、預貸率79.3%。自己資本比率は13.77%、不良債権比率は1.29%。中小企業等向けの貸出残高は2兆5,874億円にのぼります。
| 預金 | 5兆8,768億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 4兆6,613億円 |
| 預貸率 | 79.3% |
| 自己資本比率 | 13.77% |
| 不良債権比率 | 1.29% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 25,874億円 |
| 店舗 | 126店 |
預金5.9兆円・預貸79.3%・自己資本13.77%。海峡の地のトップバンクが、よく貸しつつ資本を厚く積む数字。
79.3%と13.77%を、海峡の地から読む
預貸率79.3%は、地方銀行のなかでしっかりと貸している水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。県のトップバンクとして、瀬戸内のコンビナートをはじめとする製造業、関門の物流・商工業、住宅ローンに広く貸してきた姿が見えます。中小企業等向けの貸出残高2兆5,874億円という規模は、県内の事業者の資金需要を広く引き受けてきた証です。
とくに目を引くのが、自己資本比率13.77%という、地銀のなかでも際立った厚みです。よく貸しながら、これだけ分厚い資本を積んでいる。この厚みは、YMFGという広域グループの中核として、もみじ銀行・北九州銀行を束ねる立場や、人民元建融資をはじめとするアジア取引といった、地方の枠を越えた事業を支える備えと読めます。本州と九州の結節点という立地を生かし、国内の地域金融にとどまらず、海峡の向こうのアジアにも開かれた銀行であろうとする——その姿勢が、手厚い資本に表れていると読めます。不良債権比率1.29%という低さも、よく貸しながら焦げ付きを抑える堅実さを示しています。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、海峡の地に立つYMFG中核行という立場を抜きに、この数字は読めません。
同じグループの銀行と並べてみる
本紀行には、山口銀行と同じYMFGを構成する銀行も登場しています。福岡県の北九州銀行です。北九州銀行は2011年に山口銀行から分かれる形で生まれた若い銀行で、預貸率111.2%と預金を超えて貸していました。関門海峡を挟んで、本州側の山口銀行と九州側の北九州銀行が、同じグループとして一体の経済圏を支えている。資本を厚く積む老舗の山口銀行(自己資本13.77%)と、預金を超えて貸す若い北九州銀行という対比は、グループ内での役割分担を映していると読めます。海峡の対岸の銀行の姿は、北九州銀行の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
県のトップバンクであり広域グループの中核でもある銀行は、山口の事業者にとって、もっとも身近で頼れる選択肢のひとつです。県内シェアの高さに加え、YMFGのネットワークやアジア取引の知見は、海外と取引する企業にとっても心強いものです。預貸率は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、海峡の立地を映す
預貸率79.3%という水準と、自己資本13.77%という厚みは、第百十国立銀行を源流とし、本州西端の海峡の地でよく貸しながら、広域グループの中核としてアジアにも開かれてきた山口銀行の姿を映しています。一つの県に根ざす地銀もあれば、山口銀行のように海峡を越えて広域に立つ地銀もある。数字は、その金融機関がどんな立地で、どんな役割を担ってきたかを語ります。山口銀行の数字は、本州と九州の結節点に立つ地銀の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と歴史の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。山口県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、山口県の地域金融機関のページもどうぞ。
執筆・監修:燧徹史(¥Today 編集責任者)
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
山口銀行の沿革(源流は1878年創業の第百十国立銀行、1944年3月に百十・宇部・船城・華浦・大島の5行が合併して設立、2006年に持株会社YMFGを設立しもみじ銀行を傘下に、2011年に北九州銀行を新設、人民元建融資の取扱認可を地方銀行として初めて受けた)、本店所在地(下関市)、山口県のトップバンクでYMFGの中核であることに関する記述=山口銀行・山口フィナンシャルグループおよび各種公開情報にもとづく。
山口県の経済(瀬戸内のコンビナート、関門海峡を挟む北九州との一体性、アジアとの交易)に関する記述=各種公開情報。
北九州銀行の位置づけ=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末および本紀行既出記事。